マンドリンにも世界で活躍している名手が数多くいます。今回は実力派マンドリニストの中から、筆者が厳選した4名をご紹介します。
 
それぞれイチ押し演奏動画も掲載していますので要チェックです!
 

案内人

  • 久保慎太郎
  • 久保慎太郎大阪在住のマンドリン愛好家。幼少期にピアノを始め、学生時代にマンドリンやクラシックギター、コントラバスに出会い嗜むように。社会人になる際にはマンドリンオーケストラを自分で立ち上げて指揮者を務めるなど、常に音楽と過ごす人生を送ってきました…

    詳しくはこちら

クリス・シーリ / Chris Thile

Bach Sonata No. 1 in G Minor, BWV 1001

クリスのテクニックが惜しみなく発揮されている演奏。第四楽章のPrestoは必見。

 
クリス・シーリはアメリカを代表するマンドリニストの一人。
 
1981年に生まれ5歳ころからマンドリンを始めたクリスは、12歳でウォールナット・バリー・フェスティバルの国際マンドリン選手権で優勝するなど早熟の天才でした。
 
現在はプログレッシブ・ブルーグラス・バンド “パンチブラザーズ”のメンバーとして活躍しつつ、多方面のアーティストと積極的に共作を重ねています。
 
その中でも特筆すべきなのがチェリストのヨーヨー・マ、コントラバス奏者のエドガー・メイヤー、フィドラーのスチュアート・ダンカンとの共同プロジェクト“The Goat Rodeo Sessions”でしょう。
 
世界的な奏者が集まったこのプロジェクトは多くの注目を集め、同名のアルバムは2012年第55回グラミー賞/最優秀フォークアルバムを受賞しています。
 
演奏の特徴はブルーグラスで培った高度なフィンガリング・テクニック。バッハのパルティータを始め、難曲を軽々と演奏してしまう速弾きは必聴です。
 
ギブソンのFタイプ・フラットマンドリンを愛用しており、バッハなどのバロック音楽からブルーグラス、フォークまで幅広いレパートリーを持っています。
 

The Goat Rodeo Sessions Attaboy

先ほどご紹介した“The Goat Rodeo Sessions”から一曲。演奏後のシーンも微笑ましいので、ぜひ最後まで観てみてください。

ソニーミュージックエンタテインメント

 

アヴィ・アヴィタル / Avi Avital

Bach the Keyboard Concertos BWV 1052 I:Allegro ショート・バージョン

のだめカンタービレの映画中でも取り上げられたチェンバロ協奏曲

 
1978年にイスラエルで生まれたマンドリニスト。
 
8歳のころからマンドリンを始め、地元のマンドリンオーケストラで経験を積んだのち、エルサレム音楽アカデミーやイタリアのポリーニ音楽院などで学びました。
 
2010年にマンドリニストとしては初めてグラミー賞にノミネートされたり、2015年にはドイツのエコー賞を受賞するなど輝かしい経歴を持ちます。
 
マンドリンのヴィルトゥオーソと称されるほど高い演奏技術と深い音楽知識を持ち、ヴァイオリンやピアノ曲の編曲版、バロック音楽などを得意としています。
 
ソリストとしても積極的に活動しており、ベルリン・フィルをはじめとした世界一流のオーケストラと共演したり、日本ではARTE MANDOLINISTICAとヴィヴァルディの協奏曲を披露したりと、その活躍はとどまることを知りません。
 
Aタイプのフラットマンドリンを愛用し、切れのある演奏から歌うような演奏まで非常に豊かな表現力を持つマンドリニストです。
 

Bartok Romanian Folk Dances


 

マリッサ・キャロル / Marissa Carroll

Hummel Mandolin Concerto in G major Ⅲ:Rondo

ベートーヴェンと比肩するドイツ古典派の巨匠フンメルのマンドリン曲

 
オーストラリア出身のマンドリニスト。
 
イギリスの著名なマンドリニストであるアリソン・スティーブンスに師事し、バランスのいいトレモロと粒のそろったピッキングなど高い技術を駆使して演奏します。
 
“Queensland Mandolin Ensemble”のリーダーを務めたり、ギタリストのダンカン・ガードナー氏主宰の“The Enoggera Ensemble“に参加したりと、今はオーストラリア国内を中心に活躍しているようです。
 
ソリストとして、オーケストラと共演するなど着々と実績を重ねていることも見逃せません。
 
愛器は1920年前後に生産されていたLyon&Healyモデルのヴィンテージフラットマンドリンと、クラウス・クノール製のラウンドマンドリン。
 
1992年生まれと今回紹介している他のマンドリニストの中では若いアーティストですが、これからの活躍が楽しみなマンドリニストです。
 

Duncan Gardiner Euoggera

植民地時代のクイーンズランド音楽にインスピレーションを受けたという曲

ジュリアン・マルティノー / Julien Martineau

Raffaele Calace  Preludio No.1

マンドリン界のパガニーニと称されるカラーチェが作ったプレリュード

 
フランス出身のマンドリニストで、幼少の頃よりマンドリンを嗜み、16歳のときにパリ・オペラ座で演奏するほどの天才です。
 
1998年には当時19歳でイタリア・ヴァラッツェにて行われた国際マンドリンコンクールで優勝するなど、順調にその才能を開花させていきます。
 
甘く深みのある音色と卓越した演奏技術を誇る名手といえます。アヴィ・アヴィタルとは同じ1978年生まれということもあって比較されることも多く、アヴィの“マンドリン界のプリンス”という呼称に対し、ジュリアンは“マンドリンの貴公子”と呼ばれています。
 
カナダの楽器製作者Brian N Dean氏が製作したラウンドマンドリンを愛用し、ラウンドマンドリンの弾き手にしては珍しい、立って演奏するスタイルが特徴。
 
その他、マンドリン用の新しい弦をSavarezと共同開発したり、2005年からトゥールーズのラヨンヌレジョナル音楽院の教授を務めたりと演奏面以外でも幅広く活動しています。
 

Beethoven Andante con variazioni WoO 44b (var. 5 & 3)

ベートーヴェンが残したマンドリンとチェンバロのための楽曲

まとめ

 
世界で活躍するマンドリニストは他にもたくさんいます。クラシックでもブルーグラスでも、様々なジャンルで活躍できるマンドリンだからこそ、世界中で嗜まれ、十人十色の優れた弾き手を生み出しているのだと思います。
 
皆さんも是非世界で活躍するマンドリニストを探してみてください。