「出光音楽賞」は、1990年に制定された出光興産株式会社主催の音楽賞。主にクラシックの音楽活動を対象に、育成という観点から意欲・素質・将来性などに重きを置き、新進の音楽家を顕彰してきた。
第31回「出光音楽賞」の受賞者は選考の結果、上野 通明(チェロ)、岡本 誠司(ヴァイオリン)、小林 愛実(ピアノ)の3名に決定した。受賞者にはそれぞれ賞状ならびに賞金300万円が贈られる。
なお、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、2020年は音楽家の活動機会が失われたことから、第31回の選考対象期間を2020年、2021年の2年間とした。
■上野 通明 (チェロ)
1995年11月21日、パラグアイ共和国アスンシオン生まれ。2021年ジュネーヴ国際音楽コンクールチェロ部門日本人初の優勝、併せてYoung Audience Prize、Rose Marie Huguenin Prize、Concerts de Jussy Prizeと3つの特別賞を受賞。
5歳よりチェロをはじめ、幼少期をスペイン、バルセロナで過ごす。13歳で第6回若い音楽家のためのチャイコフスキー国際音楽コンクールにて全部門を通じ日本人初の優勝、第6回ルーマニア国際音楽コンクール最年少第1位、ルーマニア大使館賞、ルーマニアラジオ文化局賞を併せて受賞。
第21回ヨハネス・ブラームス国際コンクール優勝、第11回ヴィトルト・ルトスワフスキ国際チェロコンクール第2位。これまでにソリストとしてワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団、スイス・ロマンド管弦楽団、ロシア国立交響楽団、 読売日本交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団等国内外のオーケストラと多数共演。
ジャン=ギアン・ケラス、ダニエル・ゼペック、ホセ・マリア・ガジャルド・デル・レイ、堤剛、諏訪内晶子、伊藤恵等、著名なアーティストと共演し好評を博す。NHKBS「クラシック倶楽部」、NHKFM「リサイタル・ノヴァ」、テレビ朝日「題名のない音楽会」、BSテレビ東京「エンター・ザ・ミュージック」等に出演。
日本演奏家連盟宗次エンジェル基金、ロームミュージックファンデーション、第44回江副記念リクルート財団奨学生。岩谷時子音楽文化振興財団よりFoundation for Youth、岩谷時子賞奨励賞、青山音楽賞新人賞受賞他、令和3年度文化庁長官表彰(国際芸術部門)を受彰。
桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コース全額免除特待生として毛利伯郎氏に師事。オランダの名チェリストピーター・ウィスペルウェイに招かれ19歳で渡独し、ロベルト・シューマン大学デュッセルドルフに留学。コンツェルト・エグザメン(ドイツ国家演奏家資格)取得コースを最高得点で修了し、2021年秋よりエリザベート王妃音楽院にてゲーリー・ホフマン氏にも師事。更なる研鑽を積み、主にヨーロッパと日本で積極的に演奏活動を行う。
使用楽器は1758年製P.A.Testore(宗次コレクションより貸与)、弓は匿名のコレクターよりF.Tourteを貸与されている。
■岡本 誠司(ヴァイオリン)
1994年6月21日、千葉県市川市生まれ。2014年、第19回J.S.バッハ国際コンクール(ドイツ・ライプツィヒ)のヴァイオリン部門にてアジア人で初めて優勝。
その後、ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール(ポーランド・ポズナン)第2位、エリザベート王妃国際コンクールでのファイナリスト入賞などを経て、2021年9月にはARDミュンヘン国際音楽コンクールのヴァイオリン部門にて、部門として3大会12年ぶりとなる第1位となったほか、委託新曲賞など複数の副賞を受賞するなど、受賞歴多数。
東京藝術大学を卒業後、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学の修士課程を修了。現在はクロンベルク・アカデミーに在籍し、ベルリンにて研鑽を積みながら、日本およびヨーロッパで、ソリストとしてのみならず、デュオ、室内楽、アンサンブルなど幅広い演奏活動を行っている。
これまでに、国内では読売日本交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、海外ではバイエルン放送交響楽団、MDRライプツィヒ放送交響楽団、ハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団、ベルギー国立管弦楽団、サンクトペテルブルク交響楽団、スロヴァキア国立コシツェ・フィルハーモニー管弦楽団など、多くのオーケストラと共演を重ねている。
2020年より、全5+1回のリサイタル・シリーズを定期的に開催。全体と各回それぞれにテーマ性を持たせたプログラミングで、無伴奏と同世代のピアニストとの共演でのデュオ演奏を行っている。
また、反田恭平が立ち上げたJapan National Orchestraのコアメンバー/コンサートマスターとしても精力的に活動している。
NPO法人イエロー・エンジェルよりヴァイオリンの貸与を受け、㈱日本ヴァイオリンより名器貸与特別助成を受けている。
■小林 愛実(ピアノ)
1995年9月23日、山口県宇部市生まれ。3歳からピアノを始め7歳でオーケストラと共演、9歳で国際デビューを果たす。2005年(9歳)以降、ニューヨークのカーネギーホールに4度出演、パリ、モスクワ、ポーランド、ブラジル等に招かれ、スピヴァコフ指揮モスクワ・ヴィルトゥオージ、ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラ、ジャッド指揮ブラジル交響楽団などと共演。
ポーランドには、「ショパンと彼のヨーロッパ」国際音楽祭ほか、協奏曲のソリストとして度々招かれている。国内でも多数のオーケストラと共演し、サントリーホールをはじめ各地でもリサイタルを行い、高い評価を得ている。
2010年ショパン生誕200年記念に際して、ポーランド政府より「ショパン・パスポート」を授与された。
2015年(20歳)10月、「第17回ショパン国際ピアノコンクール」に出場、ファイナリストとなった。
2017年7月には、モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団の日本ツアーでソリストとして迎えられ、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を共演している。
2018年8月には、ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ音楽祭に出演し絶賛された。
2020年3月には、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団とリストのピアノ協奏曲第1番を共演して好評を博した。
レコーディングは、2010年(14歳)「デビュー!」でCDメジャーデビューし、翌年セカンドアルバム「熱情」をリリース(EMI CLASSICS)。
2018年ワーナークラシックスとのインターナショナル契約を発表。同年4月には、7年ぶりとなるCD「ニュー・ステージ~リスト&ショパンを弾く」をリリース。
2021年8月25日、ワーナークラシックスより最新CD「ショパン:前奏曲集 他」をリリース。レコード芸術誌で「特選盤」に選ばれる。
幼少期より多くのメディアから注目を集め、フランスのLCIテレビのドキュメンタリー、日本テレビ「深夜の音楽会」、テレビ朝日「題名のない音楽会」、NHK-BS「みんなのショパン」、NHK-BSプレミアム「クラシック倶楽部」などテレビやラジオ番組にも数多く出演。2015年にはMBS「情熱大陸」にも登場して話題を呼んだ。
8歳より二宮裕子氏に師事し、2011年桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)に全額奨学金特待生として入学。2013年よりフィラデルフィアのカーティス音楽院に留学。現在、マンチェ・リュウ教授に師事し研鑽を積んでいる。今、世界的な活躍が期待できる日本の若手ピアニストとして注目を集めている。