多くのピアノ初心者が最初に悩むのが、練習曲選びです。初心者向けの曲は数多くあるけど、自分のレベルに合っていない曲を選んでしまうとその後のモチベーションにも影響が出てしまいます。

  • 初心者が最初に練習するべき曲は?
  • レベル分けってどうなってるの?
  • 今すぐ弾けるおすすめの練習曲は?

本記事では、現役ピアノ講師である筆者がこれらのお悩みをズバッと解決!初めての練習曲選びで失敗しないためのチェックポイントや、おすすめの練習曲、今すぐダウンロード可能な楽譜をご紹介します。

おすすめ練習曲の演奏ポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてください。

案内人

  • 古川友理名古屋芸術大学卒業。
    4歳よりピアノを始め、伊藤京子、深谷直仁、奥村真の各氏に師事。
    地元愛知県三河地方を中心に器楽、声楽、合唱伴奏者として活動する傍ら、島村楽器音楽教室等でピアノ講師として勤める。

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ピアノ初心者向けの練習曲ってどういう曲?

「初心者向けの練習曲」とされている作品には、次のような特徴があります。

  • 音数が少なくリズムがわかりやすい
  • 音域が狭く手のポジション移動が少ない
  • 黒鍵の音が少なく譜読みしやすい
  • ゆったりとしたテンポで音を追いやすい 

基本的に上記の特徴のいずれか、またはすべてを満たしている練習曲であれば、初心者の方でも挑戦しやすいと言えるでしょう。

最初の曲選びで大事なポイント

音数の少なさやリズムのシンプルさといった特徴を持つ作品は、ピアノ初心者が最初に取り組む練習曲としておすすめです。

ただし、曲の難しさや難易度は数値で表せるものではなく、感じ方も人それぞれ。易しいとされているものがうまく弾けない場合や、難しいはずなのに意外にすんなり弾けてしまう場合もあります。

そこで、最初の練習曲選びで曲のレベルとあわせて大切にしていただきたいのが、以下の3つのポイントです。

  • 好きな曲
  • 有名な曲
  • 憧れの曲

ピアノの上達において、モチベーション高く練習を継続していくことは重要な要素の一つです。ぜひ「初心者でも弾けそうだから」という観点だけでなく、楽しみながら練習できる好きな曲や憧れの曲の中から選曲してみてください。

初心者におすすめのピアノ練習曲と楽譜【クラシック5選】

ここからは、初心者におすすめのクラシックの定番練習曲を、おすすめの楽譜とあわせて紹介していきます。

掲載している楽譜のうち、国際楽譜ライブラリープロジェクト(IMSLP)サイト内のものは、著作権フリーで無料ダウンロード可能です。IMSLPに関する情報は、以下の記事をご覧ください。

メヌエット ト長調 BWV Anh.114/J.S.バッハ(C. ペツォールト)

J.S.バッハのクラヴィーア小品集『アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帖』の中の一曲。長い間、バロック時代を代表する作曲家であるバッハの作品とされてきましたが、近年、音楽学者らの研究によって同時代の作曲家C.ペツォールトの作品であることが明らかにされました。

この曲は、音域が狭くシンプルな2つのメロディから構成されており、初心者の方でもバロック時代主流であったポリフォニー(多声音楽)の演奏を無理なく体得できます

装飾音符を付け足して演奏されることも多いため、ピアニストの演奏を参考にさまざまなバリエーションで練習するのもおすすめです。

エリーゼのために/L.V.ベートーヴェン

ピアノのクラシック作品としてあまりにも有名な作品であり、発表会の定番曲としても親しまれている『エリーゼのために』。子どもだけでなく、ピアノ演奏に憧れて練習を始める大人からも人気が高く、多くの初級レベルのピアノ曲集に収録されています。

演奏時間はわずか3分ほどですが、左手パートから右手パートへなめらかにつなぐ、連符の音の粒をそろえる、濁りなく響きが充実するようペダリングを工夫する、といったピアノ演奏において重要な要素が詰まっています。

一曲の中にさまざまな変化が入っているので、表現面の勉強にも最適な作品です。

子供のためのアルバム Op.68 より 第1曲「メロディ」/R.シューマン

R.シューマンが作曲した43曲の作品からなるピアノ小品集。第1部に18曲、第2部に25曲が収められています。第1曲目の『メロディ』は、娘への贈り物のうちの一曲であり、曲集の始まりを告げる子どものかわいらしさや健気さを感じさせる作品です。

音数が少なく同じフレーズの繰り返しが多いメロディと、シンプルな和声進行の伴奏で構成されたこの作品は、まさに「初心者向けの練習曲」の条件にピッタリ当てはまる作品といえます。

常に8分音符で動き続ける左手の伴奏が、メロディをかき消してしまわないよう、左右のバランスに気を配りながら演奏しましょう。

ピアノソナタ 第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「月光」第1楽章/L.V.ベートーヴェン

ベートーヴェンが生涯で作曲した32曲のピアノソナタの中でも、特に人気の高い3つのソナタ『熱情』『悲愴』『月光』は、三大ソナタと呼ばれています。

そのうちの一つである「月光」は三楽章で構成されている作品で、曲全体の難易度は決して低くありません。ただ、切なく儚いメロディが印象的な第1楽章のみを取り出してみると、ゆったりとした三連符が繰り返されており和声の変化も緩やかなため、テクニック的には易しい曲と言えます。

何よりも、ピアノを始めるならソナタは弾いてみたい憧れの曲の一つではないでしょうか。

ぜひ挑戦してみてくださいね。

カノン/J.パッヘルベル

『パッヘルベルのカノン』として親しまれている、バロック時代の作曲家J.パッヘルベルの「カノン」。こちらも一度は弾いてみたい憧れの曲として人気が高く、耳馴染みのある名曲の一つです。

同じ和声進行の繰り返しの中で、テーマが変奏されたり重ね合わされたりしながら展開していくため、曲が進むにつれて音が複雑になっていきます。楽譜によって難易度が大きく異なるため、まずは和音が少なく左手の動きがシンプルなアレンジから挑戦してみましょう

カノンに関する知識を深めてから練習に取り組むのもおすすめです!下記記事もぜひご一読ください。

初心者におすすめのピアノ練習曲と楽譜【ポップス5選】

次にご紹介するのは、ピアノ初心者の方の練習曲におすすめのポップス作品です。

「ピアノ練習曲=クラシックやピアノ教本」というイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、ポップスでも譜読みやテクニックの練習は十分可能です。

おすすめのアレンジ楽譜もあわせて紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

少年時代/井上陽水

夏歌の定番として幅広い世代から愛されている、井上陽水さんの『少年時代』。懐かしさを感じさせる素朴なメロディと、スッキリとした飾り気のない和声の展開が魅力的な一曲です。

音域が狭く、リズム・メロディ・ハーモニーともに複雑な要素が一切ないこの曲は、まさにピアノ初心者の練習曲にピッタリ。右手が単旋律、左手がベース音のみのシンプルなアレンジを選べば、音符やリズムをゆっくり読みながら落ち着いて練習を進められるでしょう。

いつも何度でも/木村弓

映画『千と千尋の神隠し』の主題歌としておなじみの一曲。耳馴染みのある曲であり、大人から子どもまで幅広い層に人気です。

原曲の伴奏はライアーの分散和音ですが、和音が多いアレンジは譜読みに時間がかかりやすく、初心者の方にとっては難しく感じられるかもしれません。まずは、左手の伴奏がベース音のみ、または「ドーミーソードーミーソ」のようなシンプルな形のアレンジから練習を始めてみましょう

涙そうそう/夏川りみ

森山良子さん作詞、BEGIN作曲の『涙そうそう』。2001年に夏川りみさんのカバーが大ヒットして以来、幅広い世代から愛される日本の歌として今も多くのアーティストに歌い継がれています。

どこか懐かしさを覚える沖縄音階を用いた印象的なメロディは、伴奏がシンプルなアレンジでも十分にその魅力を感じさせてくれます。初心者向けの曲ではあまり使われない逆付点(16分音符+付点8分音符)が多用されているので、左右の拍頭がきちんと揃うよう意識しましょう

ありがとう/いきものがかり

2010年度上半期に放送されたNHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の主題歌として書き下ろされ、大ヒットとなった一曲。現在では、卒業式や結婚式でもおなじみの定番曲として親しまれており、多くの感動シーンを彩っています。

メロディの動きがやや細かく複雑そうに見えますが、隣の音に移っていく順次進行が多いため、弾いてみると意外に指がスムーズに動くのを感じられるはずです。ただ、タイやシンコペーションといった拍をまたぐリズムも多用されているため、メロディパートに集中できるよう、左手の伴奏がシンプルなアレンジを選ぶことをおすすめします

キセキ/GReeeeN

2008年に放送された高校野球を題材としたテレビドラマ『ROOKIES』の主題歌に起用され大ヒットとなった『キセキ』。

この曲はメロディの音域が狭いため、ピアノで弾く際に手のポジション移動が少ないのが特徴です。また、8分音符で動く部分が多く複雑なリズムが含まれていないのも、初心者の方が挑戦しやすいポイントと言えるでしょう。

原曲はかっちりとした8分音符ではなく、やや付点リズム(付点8分音符+16分音符)に近い感じでラフに歌われています。両手奏に余裕がでてきたら、よりGReeeeNの歌唱に近いリズムにアレンジしてみるのもよいでしょう。

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毎月2曲以上の練習を目標としていたり、同一曲でも難易度別に練習したいと考えている方には、ぷりんと楽譜のサブスクサービス「アプリで楽譜見放題」がおすすめです。

1ヶ月の無料お試し期間があるので、自身のピアノライフとマッチするかどうか確かめてから利用することができます。

詳しくは下記記事をご覧ください。

まとめ

初心者の練習曲選びでは、無理なく取り組めるレベルであるかに加えて、その曲を弾くことでピアノ練習に対するモチベーションが高まるかどうかも重要なポイントになります。

ピアノに向かう気持ちを後押ししてくれる練習曲とともに、練習を楽しみながら積み重ねていきましょう!