ピアノと同じ鍵盤楽器のオルガン。クラシックやポップス、ジャズ、ロックなど、さまざまな楽曲で使われており、だいたいの音はイメージできるのではないでしょうか。

では、具体的にピアノと何が違うのか。音の出る仕組みや弾き方といった細部までは分からない方も多いと思われます。

そこで今回は、ピアノとオルガンの違いを比較しつつ、それぞれの魅力も解説していきます。なんとなくでも理解できれば、音楽の楽しみの幅が広がるはずですよ。

案内人

  • 海老野みほ4歳からエレクトーンを始め、高校生の時にピアノに転向。
    音楽系専門学校に進学し、クラシック・ジャズ・POPs・作曲・アレンジなど、様々なジャンルの知識を身につけながら演奏活動を行う。
    2011年から都内の音楽スクールのピアノ講師として勤務。

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ピアノとオルガンの違いを項目ごとに比較

さっそく、ピアノとオルガンの違いを項目ごとに比較していきましょう。

見た目

ピアノ


一般的なアコースティックピアノは、黒く光沢のある見た目をしています。ほかには白色や木目調のものも。大きさについては、全長3m弱からテーブルの上に置けるミニサイズまでさまざまです。

また、白黒合わせて88個の鍵盤が1段に並び、足下には3つのペダルが付いています。

オルガン

ピアノと違い、黒いオルガンはあまりなく、木目調のものが一般的です。大きさに関しては、もはや建築物といえるほど巨大なパイプオルガンもあれば、音楽室などに置かれる卓上サイズのものもあります。

手元には54〜73個の鍵盤が1段〜4段に並び、足元には30~32個の鍵盤と音量調整用のペダルが付いています。

音の出る仕組み

ピアノ

ピアノの内部には鋼鉄製の弦が張られており、低音部の弦は太く、高音の弦は細くなっています。そして、各鍵盤に対応したハンマーで弦を叩き、音を鳴らすという仕組みです。このことから、ピアノは弦楽器(打弦楽器)にもカテゴライズされます。

オルガン

オルガンは、圧縮された空気をパイプの中へ通すことで発音する管楽器です。リコーダーと同じ仕組みと言われれば、イメージしやすいのではないでしょうか。発音にパイプを用いたオルガンはパイプオルガンと呼ばれ、教会や劇場に設置された巨大なものから、移動式のコンパクトなものまであります。

また、ペダルを踏んでオルガン内の空気をかき出し、真空状態となったところへ鍵盤を押して空気を吸い込ませ、リードという薄い板を振るわせて音を出す、リードオルガンと呼ばれるものもあります。

音色・強弱・持続時間

ピアノ

ハンマーで金属弦を叩くという仕組み上、ピアノの音は鐘の音を優しくした感じになります。

音の強弱は打鍵の強さでコントロール。鍵盤を弱く押すと、ハンマーは優しく弦に触れるため小さい音が出て、逆に強く押すと、ハンマーが勢いよく弦に当たるため大きい音が出ます。

また、ピアノの音は弾いた瞬間が1番大きく、次第に小さくなっていきます(減衰音)。

オルガン

パイプやリードに空気を流すという仕組み上、オルガンは笛を吹いたような音がします。

空気の量や勢いは調整不可なため、オルガンでは音の強弱を音色の重ね方で表現します。たくさんの音を重ねるほど分厚い音になり、その分強いニュアンスも出るという具合です。

また、ピアノとは違い、オルガンの音は鍵盤を押している間ずっと鳴り続けます(持続音)。

弾き方・奏法

ピアノ

ピアノの鍵盤はハンマーと連動しているため、打鍵の強さや速さが音色に大きく影響します。

例えば、なめらかなフレーズであれば、音量が1音ごとに変わらないよう強さを一定に保って演奏しなければなりません。歯切れ良く演奏したいときには、打鍵を速くすることで鋭さを表現します。

オルガン

オルガンで重視されるのは、鍵盤を押した後、指を上げるタイミングです。

少しでも鍵盤を上げると音が途切れるため、なめらかなフレーズを弾く際には、次の音に重なるギリギリまで鍵盤を押さえておきます。逆に、指を早めに上げてわざと音を切れば、歯切れの良い演奏が可能になります。

楽譜

ピアノ

ピアノの楽譜で一般的なのは、五線譜が2段組みになった大譜表と呼ばれるもの。中〜高音を担う上段を右手、低音を担う下段を左手で演奏するのが基本です。

オルガン

オルガンの楽譜は五線譜が3段組みになっています。2段の大譜表+1段に分かれており、大譜表の上段を右手、下段を左手、1段の部分を足で演奏します。

歴史

ピアノ

ピアノは1709年にイタリアで誕生したとされています*。

鍵盤を押すと弦が弾かれる、または叩かれる仕組みの楽器自体は、チェンバロやクラビコードというものがすでに存在していました。見た目もピアノに近いのですが、これらは音の強弱を付けにくく、表現の幅に制限がありました。

そこで開発されたのが、今日のピアノにつながるハンマーアクションです。これによって、タッチで強弱を詳細に表現できるようになりました。そして、ハンマーアクションが搭載された楽器は「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(弱音も強音も出せるチェンバロ)」と名付けられ、現代ではピアノと略して呼ばれています。

*:カワイ楽器/ピアノの歴史

オルガン

オルガンの原型は、紀元前にアフリカで発明された水圧オルガンだと言われています*。

水圧オルガンは、元々は楽器としてではなく、加圧された空気を出す装置として開発されました。装置のデモンストレーションとしてパイプに空気を送り込んだところ音が出て、これを改良して楽器に作り変えたものが、現代のオルガンにつながっています。

*:ヤマハ/パイプオルガン誕生ストーリー

ピアノ・オルガンとエレクトーンは何が違う?

ピアノやオルガンとよく比べられる楽器のひとつに、エレクトーンがあります。

エレクトーンは、ヤマハから発売されている電子オルガンの商品名です。オルガンの一種ではありますが、エレクトーンには900種類以上ものさまざまな楽器の音色が搭載されており、幅広いジャンルの演奏に対応しています。

音色自体のエディットも可能なほか、鍵盤を押したとき・押している最中・鍵盤から指を離すときの力の入れ方で、音量や余韻の長さ、ピッチなどが変わるよう設定できます。

また、リズムを鳴らすよう設定もでき、オーケストラやバンドとのアンサンブルを一人で楽しめるのもエレクトーンの大きな特徴です。

ピアノとオルガン、どっちが難しい?

筆者の主観ですが、鍵盤楽器初心者の方にとってはオルガンの方が難しいのではと感じます。

ピアノの場合、打鍵のコントロールなどは難しいものの、簡単アレンジの楽譜も多く、鍵盤を正しく押していけば一通りの演奏はできます。案外、初心者でも弾きやすい楽器なのです。

それに対してオルガンには、ピアノのようなレベル別の楽譜がありません。どの曲でもある程度弾ける前提で作られており、また、両手両足をすべて使う曲がほとんどです。加えて、音色の重ね方も自分で考え操作しなくてはなりません。

以上の点から、初心者の方であればピアノ、もしくはエレクトーンから始めるのがおすすめです。

ピアノの種類と値段

ピアノとオルガンどちらを始めようか悩んでいる方にとっては、値段の比較も重要ですよね。まずはピアノの値段を種類ごとに見ていきましょう。

アコースティックピアノ

アコースティックピアノとは、グランドピアノとアップライトピアノを指します。

グランドピアノは新品で100万〜数千万円、アップライトピアノは40万〜200万円ほど。ただし、グランドピアノを置くには最低でも8畳ほどの部屋が必要となります。

安く購入したい場合、中古で購入するのもおすすめです。メンテナンスがきちんとされたものであれば、中古でも何ら問題なく使えます。

電子ピアノ

電子ピアノは、1万円台から数十万円以上まで、さまざまな機種が販売されています。

筆者としては、ヤマハやカワイ、ローランド、カシオ、コルグなどの有名メーカーから選ぶのがおすすめです。これらメーカーの相場は、ビギナー向けモデルで10万円ほど、よりアコースティックピアノに近い弾き心地のモデルで20万円以上となります。

ピアノ教室の費用

独学でも上達はできますが、教室に通った方が高効率ですし、横のつながりも作れます。

ピアノ教室の費用は、レッスンの形態(個人・グループ)や1回あたりの時間、月あたりの回数などによって異なります。目安として、45分の個人レッスンで1回3,000円〜6,000円程度が相場です。

入会金や教材費、発表会の参加費などは、だいたいの教室で必要になります。入会前に問い合わせてみましょう。

オルガンの種類と値段

次はオルガンの値段を種類別に見ていきましょう。

パイプオルガン

教会や劇場にあるパイプオルガンは数億円規模のもので、メンテナンス費用も年間1,000万以上かかります。あまりに大きすぎますし、個人で購入するのは現実的ではありません。

家庭用であれば、パイプオルガンの音をデジタル化しつつ、パイプオルガンさながらのコンソールを再現したクラシックオルガンがおすすめです。クラシックオルガンなら130万円ほどから購入できます。

リードオルガン

現在、リードオルガンは製造されておらず、中古品を購入するしかありません。10万円程度から販売されていますが、メンテナンス状態は細かくチェックしなければなりません。

また、華やかな装飾が施されたリードオルガンはアンティーク家具としても人気があり、市場では高値で取引されています。

電子オルガン

国内において、電子オルガンはヤマハとローランドから販売されています。

ヤマハの電子オルガンは、前述の通り「エレクトーン」という商品名です。多彩な音色やリズムを駆使して演奏する楽器として、一つのジャンルになっています。価格はベーシックモデルで22万円から。

一方、ローランドは「アトリエオルガン」という製品をリリースしています。パイプオルガンやリードオルガンの構造を電子化したもので、オルガン音色に特化しているのが特徴です。こちらはエントリーモデルが約27万円、ベーシックモデルが約40万円となっています。

オルガン教室の費用

ピアノ教室ほど多くはありませんが、オルガンの弾き方を教えてくれる教室も存在します。

月謝はピアノ教室とさほど変わらず、1回5,000円程。近くの教室を探すときは「オルガン 教室」もしくは「クラシックオルガン 教室」といったキーワードで検索してみましょう。

まとめ

今回はピアノとオルガンの違いを解説しました。

鍵盤楽器という共通点こそあるものの、仕組みや奏法、楽譜といった点がまったく異なるわけです。同じ曲でも、ピアノで弾くのとオルガンで弾くのとでは別ものになります。この違いを楽しむのも、音楽の面白さの一つといえるでしょう。