楽器の習い事といえばピアノがメジャーですが、エレクトーンも負けていません。最近ではYouTubeに演奏動画や解説動画がたくさんアップされ、人気を集めています。

この2つを比較して、子供に習わせるならどっちがいいのか悩んでいる方も多いはず。

そこで今回は、ピアノ歴17年・エレクトーン歴15年の筆者が、ピアノとエレクトーンの違いやそれぞれの特徴、向いているタイプなどを徹底解説します。

案内人

  • 海老野みほ4歳からエレクトーンを始め、高校生の時にピアノに転向。
    音楽系専門学校に進学し、クラシック・ジャズ・POPs・作曲・アレンジなど、様々なジャンルの知識を身につけながら演奏活動を行う。
    2011年から都内の音楽スクールのピアノ講師として勤務。

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そもそもピアノとエレクトーンはまったく別の楽器

どちらも鍵盤楽器ではありますが、ピアノとエレクトーンはまったく別の楽器です。

ピアノは撥弦楽器にもかぞえられ、鍵盤と連動しているハンマーで弦を叩き音を出すというもの。一方、エレクトーンは電子楽器であり、鍵盤を弾くと録音(サンプリング)された音が鳴るという仕組みです。

電子楽器という点では、電子ピアノとエレクトーンは仲間といえます。が、電子ピアノはアコースティックピアノの代用品なのに対し、エレクトーンは電子オルガンと呼ばれる種類の楽器ですので、やはり両者は別物になります。

ピアノとエレクトーンの違い・特徴をポイントごとに比較

ピアノとエレクトーンの違いについて、さらに詳しく見ていきましょう。

鍵盤の数

ピアノの鍵盤数は、黒鍵も含めて88。電子ピアノには72や61の機種もあります。

エレクトーンの一般的なモデルでは、手で弾く鍵盤が上下2段にそれぞれ49、足で弾くペダル鍵盤が20備わっています。プロフェッショナルモデルになると、手の上下2段が61鍵盤、ペダルが25鍵盤の機種もあります。

鍵盤のタッチ

ピアノの鍵盤は重く、抵抗感のあるタッチです。また、鍵盤を押すスピードや強さを変えることで、音のニュアンスをコントロールします。

逆に、エレクトーンの鍵盤は軽く、抵抗感がありません。音のコントロールについても、鍵盤を押したり離したりする時のスピードや押し込み具合でつけるため、ピアノとは少し勝手が異なります。

音色

ピアノは基本的にピアノの音だけで演奏します。電子ピアノには他楽器の音が収録されていますが、あくまでメインはピアノです。また、鍵盤を押し続けていても音が自然に消えていく減衰音であることも特徴といえます。

一方エレクトーンの場合、弦楽器・管楽器・打楽器・鍵盤楽器・和楽器・電子楽器など、数百種類もの音源の中から好きなものを上鍵盤・下鍵盤・ペダル鍵盤へ別々に設定可能。エレクトーンの音色は、元の楽器の音の消え方や伸び方が再現されています。

演奏する主なジャンル

楽器の特性を活かしたジャンルという意味では、ピアノではクラシックのピアノ曲、エレクトーンではリズムを活かしたポップス曲が主に演奏されます。

ただ、上記はあくまで傾向であり、実際にはピアノでもエレクトーンでもさまざまなジャンルの曲を演奏できます。

楽譜

ピアノの楽譜は、五線譜が2段になった大譜表という形式で書かれており、上の段が右手、下の段が左手に対応しています。また、音符のほかに強弱記号や表現記号なども書かれています。

ペダルも鍵盤の一部という仕組み上、エレクトーンの楽譜は3段組みの五線譜になっており、上段を右手、中段を左手、下段を足で演奏するのが基本です。

エレクトーンの楽譜には特徴があり、ピアノと同じ音符・強弱記号・表現記号のほか、音色やリズムの設定番号やリズムのスタート・ストップといった指示が書かれてます。加えて、楽譜といっしょにリズムと音色が設定されたデータも購入するのが一般的です。

エレクトーンとオルガンは何が違う?

そもそも、エレクトーンはヤマハが出している製品の名前で、元は電子オルガンという楽器です。

オルガンは管の中に空気を送り込み音を出す管楽器(+鍵盤楽器)で、この仕組みをデジタル化したのが電子オルガンです。電子オルガンはカワイやローランドといったメーカーからも発売されていますが、日本ではヤマハのエレクトーンが特に人気なため、電子オルガン=エレクトーンという認識が広まっています。

比較内容

エレクトーン

ピアノ

オルガン

楽器分類

電子楽器

打弦楽器

管楽器

音の出る仕組み

電気信号により録音(サンプリング)された音が鳴る

ハンマーで弦を叩くことにより音が鳴る

空気をパイプに送ることで音が鳴る

音の強弱

持続音

減衰音

持続音

歴史

1959年にヤマハから最初のエレクトーンが発売される。(電子オルガン)

1709年にイタリアで発明される。その前身は、クラヴィコード 、チェンバロ 、ダルシマー。

紀元前300年に北アフリカ地方で水圧オルガンが発明される。その後、8世紀にヨーロッパへ伝来。

ピアノとエレクトーン、どっちが難しい?

子供の習い事として検討する際、どちらが難しいかは気になりますよね。ピアノとエレクトーンは、それぞれで難しさが異なります。

ピアノの難しい点は、和音を混ぜたり伴奏の音を多くしたりしないと華やかな演奏にならないところです。必然的に弾くべき音が多くなるわけで、初心者には難易度の高いことです。

一方エレクトーンだと、設定次第で多くの音を弾かずとも華やかに仕上げられます。が、弾く以外の機械操作も多く、この点はエレクトーンの難しさといえます。

ピアノもエレクトーンも脳の成長に良いのは同じ

ピアノもエレクトーンも、脳の成長に良い影響をもたらすのは同じと考えられます。

例えば、ひとつのことに集中して取り組む力。一曲を演奏しきることは、実際のところけっこうな難作業です。これを可能とするには試行錯誤を避けられず、ここで得た能力は楽器演奏以外のさまざまな場面でも応用できるでしょう。

また、現状の課題を見つけ出し解決する能力も養えます。一連の体験を積み重ねれば、継続的に物事へ取り組む力や自己肯定感を養うこともできるでしょう。

ピアノとエレクトーン、子供の習い事にはどっちがいい?

ここまでの話を踏まえ、ピアノに向いているケースとエレクトーンに向いているケースを、筆者の講師経験も交えて解説します。

ピアノが向いているケース

1曲を2〜3ヶ月かけて練習していくことから、ピアノはひとつのことをじっくりやりたい人におすすめです。完成度にこだわる方には特に向いています。

また、真似や模倣が得意な人は、ピアノの上達が早い傾向にあります。筆者が思うに、このような人は分析能力が高く、お手本を見て自分自身でブラッシュアップしていけるからでしょう。

エレクトーンが向いているケース

エレクトーンは操作が煩雑になりやすい分、活発な人や運動が得意な人に向いています(慣れの部分も大きいため、当てはまらなくても問題はありません)。

また、エレクトーンのレッスンでは音色や伴奏をアレンジする課題がよく出されるため、自分自身で新しいものを考えるのが好きな人にもおすすめです。

両方習うのはアリ?

弾き方の違いこそあれど、鍵盤の並びや楽譜の読み方といった根本的なことは同じなので、両方を習うのもアリです。音やリズムの表現など、音楽に関するいろいろな要素を多角的に学べますよ。

ただ、いきなり両方だと身体や脳の処理が追いつかないと思われるため、まずはどちらかに絞るのが良いでしょう。

まとめ

今回はピアノとエレクトーンの違いを解説しました。

両者それぞれ特性が異なり、楽しみ方も大きく違います。ピアノはピアノの音色だけで多彩な音楽を奏でる点。エレクトーンは音色とリズムを組み合わせてオリジナリティを出す点。どちらもその楽器でしか体験できません。

向き不向きの解説もしましたが、慣れで解決できる部分も多いため、まずは興味を持った方からチャレンジしてみてください。