映画とクラシックの親密なカンケイ ~邦画編~

2017/08/17
クラシック

クラシックと映画のお話。洋画編に引き続き、今回は邦画編です。

⇒洋画編はこちら

邦画にクラシック音楽を使うことについては、様々な意見があります。日本語訳のオペラに賛否両論があるように、西洋で生まれたクラシック音楽を日本の映画に合わせることへ違和感を持つ人もいるのでしょう。

ひとまずそのような議論は脇に置いて、皆さんの目と耳で確かめてください。

クラシック音楽にまつわる邦画については、次の三種類に分けられます。

・映画のバックミュージックとしてクラシック音楽を利用した作品
・クラシック音楽、または業界が映画の題材である作品
・クラシック畑出身の日本人作曲家による音楽が使われている作品

映画音楽におけるクラシックの利用は、映像にマッチするか否かという観点以外にも、音楽製作費や、監督の意向など、様々な理由/動機があります。もちろん観客には内部事情はわかりませんので、最終的に美しく仕上がっていれば良いのかもしれません。

それでは、上記の種類別に代表的な作品を紹介してゆきます。

 

黒澤明監督の数々の作品

映画界の巨匠として名高い黒澤明監督の作品には、クラシック音楽やクラシック音楽のアレンジ作品が多用されており、特に、後期の作品にはクラシック音楽が原曲のまま使われているものも多くみられます。作曲で関わった日本人も早坂文雄や武満徹などそうそうたる顔ぶれ。
「酔いどれ天使」などでは、暗い場面であえて明るい曲を使い、シーンの陰鬱さを強調するという技法が使われています。

「天国と地獄」シューベルト/ます
「八月の狂詩曲」ヴィヴァルディ/スターバトマーテル
「まあだだよ」ヴィヴァルディ/調和の霊感
「酔いどれ天使」ヨナーソン/カッコウワルツ

 

クラシック業界が舞台の映画ベスト2

「のだめカンタービレ」

この映画をきっかけにクラシックを聴き始めたという人も多いのではないでしょうか。
マンガが原作で、テレビドラマ、実写映画になりました。
舞台は音大、登場人物が音大生という設定が原作のこの映画には、当然クラシック音楽が豊富に盛り込まれています。
登場した音楽でプログラム構成したコンサートがひらかれたり、CDが販売されたりもしました。
俳優さんたちの演奏風景も評判も高いのです。ちなみに実際の演奏している面々は、飯森範親や三輪郁、ランラン等々。監督は武内英樹です。

実際に使われた楽曲は、

ベートーヴェン交響曲第7番
ラヴェル ボレロ
チャイコフスキー くるみ割り人形 小序曲

など

 

「神童」

天才ピアニスト少女と音大浪人生の物語。こちらも漫画が原作。監督は萩生田監督。
主人公のピアノ演奏は、当時12歳だった和久井冬麦というピアニストが担当しています。
のだめカンタービレとは違い、クラシック音楽業界のシビアな面も描かれている作品です。

使用された曲は、

ベートーヴェン ピアノソナタ23番熱情
メンデルスゾーン 無言歌作品62の6春の歌
ショパン エチュード10-4

など

 

バックミュージックのクラシックが効果的な作品

「剣岳 点の記」

浅田次郎の小説が原作の、山岳測量をテーマにした映画です。木村大作監督。
日本アカデミー賞も受賞。
飛騨山脈で撮影された壮大で美しい景色をバックにヴィヴァルディの四季が流れます。
演奏は仙台フィルハーモニー交響楽団。
ほかにも、ヘンデルのハープシコード組曲ニ短調HWV237サラバンドなどが使われています。
この映画は、映像も音楽も本当に美しくマッチしており、おすすめです。

この映画で初監督を務めた木村大作監督はその後、「春を背負って」という、これまた山をテーマにした映画も撮っています。

 

「テルマエ・ロマエ」

ヤマザキマリの漫画が原作の古代ローマと現代日本のお風呂を主題にしたコメディ映画。
監督はのだめカンタービレと同じ、武内英樹監督です。クラシック音楽と縁のある監督なのでしょうか・・・。
プッチーニのトゥーランドットより、「誰も寝てはならぬ」やヴェルディのアイーダから「凱旋行進曲」などが使われています。

 

「太陽」

最後に、あまり知られていませんが、この映画を紹介します。
劇団イキウメの演劇作品を下敷きに作られた映画、『太陽』。入江悠監督。
ウイルスにより人口が減少し、旧人類とウイルス耐性を持つ新人類との間で繰り広げられる近未来の地球をえがいた、SFドラマです。
スメタナの交響詩わが祖国より「ブルダバ(モルダウ)」が使われています。この曲は、国民楽派であるスメタナがチェコをながれるブルダバ(モルダウ)川の流れをイメージしてかいた曲。
チェコを想ってかかれた、少し憂いのあるメロディーがディストピアの世界観と絶妙にあっています。

 

映画とクラシック音楽の妙、いかがだったでしょうか。
洋画とはまた違った組み合わせの妙が感じられたことと思います。まだまだたくさんの邦画に、クラシック音楽は使われています。見つけるのも楽しいですよ。また、聞き覚えがある曲なのに題名が思い出せなくてもやもやするのも楽しみの一つ。後から、その曲をふと思い出して「これだ!」と興奮したり。映像と音楽は深い記憶のなかで密接に結びついていて、一度イメージが付くとなかなか離れません。
映画を通して、クラシックの魅力に憑りつかれる人たちが増えたらいいなと思っています。

⇒洋画編はこちら

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