課題曲Ⅳは毎年マーチが多いですよね。
今年も安定のマーチですが、今回はかなり個性的…!
それではさっそく曲の演奏ポイントや特徴について詳しく解説します。
案内人
- 川島光将指揮者・作曲家・編曲家 元・中学高等学校音楽教員、吹奏楽顧問 吹奏楽指導者協会・認定指導員 音楽表現学会会員 K MUSIC GROUP代表 現在はオーケストラ、吹奏楽、合唱、声楽など音楽全般の指導にあたる。
目次
2022年吹奏楽コンクール課題曲Ⅳ【サーカスハットマーチ】
タイトル通り、サーカスのような展開の早さが面白い「おしゃれで愉快な」マーチ風課題曲です。
作曲者:奥本 伴在(おくもと ともあり)
演奏時間:約3分
作曲家、奥本伴在について
中学生の頃から吹奏楽に親しみ、今では指導者としても活躍されている作曲家のようです。
劇中音楽など作品も数多くあり、他の作曲家さんとは少しタイプが違うようですね。
なんといっても指導者なので、現場で実際に音を聴いているのが作曲には大いに役立っているのでしょう。
演奏のポイント
ズバリ演奏のポイントは“バランス”です。
強弱記号が細かく書いており、パートごとに違うのでその意図をしっかり汲み取りましょう。
おそらく楽譜通りに演奏すると、非常にパートの音量バランスが悪い響きになってしまうと思います。音量を大きく小さくという概念だけでなく、今どのパートのどの音色を聴かせたいかという視点で曲作りをすると良いでしょう。
リズムについては丁寧に練習すれば特に難しくはありません。パートによって難易度の偏りがあるので、そこは注意です。
曲のノリは非常に明確なので、練習していけば掴めるようになるでしょう。
出だし〜36小節目
オープニングの6小節間は聴き手をグッと惹きつける楽しい始まり方ですね。
音が上昇して楽器も重なっていきますが、最初から出しすぎると木管パートが重なっていく効果が薄くなるので注意しなければなりません。
6小節目の全体での決めどころも、楽譜に書いてある音価ではなく、全体の響きを考えて長さを決めた方がスッキリして聴こえます。
Aからのメロディのアーティキュレーションが面白く、3拍目の装飾音符とアクセントが効果的です。
ここは2小節間隔で呼応のような作りになっていますが、楽譜通り演奏すると3、9小節目が聴こえにくく不安定になるので気をつけてください。
13小節目にはバスクラソロという面白い部分がありますが、ここも前後の音量を考えないとほぼ聴こえなくなってしまいます。ホールで演奏すると残響もありますので気をつけましょう。とくに、Bからのように各打楽器が鳴っているところは、うるさく聴こえないように気をつけてください。
Cからは定番の中低音メロディですが、ところどころ各パートのソロが入ります。ここもバランスが悪く、聴こえにくいところです。
単純に楽譜通りではバランスが悪くなるので、各パートに何人いるのか、その楽器の音量がそもそもどのくらいなのかということまで考えて曲に臨まないといけません。
37小節目〜60小節目
37小節目から少しだけテンポが落ちます。主題が縦のノリからスラーで滑らかになっています。
Dからはリズムを提示するパートがないので、体内パルスを団体全体でしっかり共有しましょう。体内パルスとは、体の中にあるリズム感です。何かに“合わせて”演奏するのではなくて、自分自身でテンポを“感じる”ことが大切です。
このDのいわゆるTrio部分はかなり注意が必要です。
スラーで滑らかな部分ですがメロディがかなり薄いので、固い音でカチッと演奏しないと曲がぼやけてしまうでしょう。
61小節目〜最後まで
61小節目はallargandoとなっており音が上行していきますが、盛り上がりを作るのは難しくなっています。和音がなく、ドミナントモーションが作れないのが理由でしょう。ですので打楽器パートでカデンツを作るか、あっさり演奏してGへいくのが良いと思います。
Gの部分はGrandiosoで大きなスケールで演奏する部分です。ここは打楽器パートが演奏の基盤ですね。また、ベースラインもたっぷり演奏すると良いでしょう。
70小節目もrit.となっていますが、盛り上がる場面ではなさそうなのであっさりテンポを切り替えてHを演奏するのが得策です。
最後の終わりも打楽器パートがバチっと決まるとかっこいいですね。
こんなバンドにおすすめ!
大編成で演奏すると良さそうに聴こえますが、パートのバランスを考えたらむしろ小編成のほうが向いているのかもしれません。
1パート1プレイヤーでカチッと演奏するとかっこいいでしょう。
まとめ
多くの学校は実際に合奏をしてみて選ぶところが多いですよね。
参考音源だけでは分からないことがたくさんあるので、必ず楽譜を見て自分たちのカラーに合う課題曲選びをしてください。