あなたは好きなトロンボーン奏者はいますか?
トロンボーンは吹く人によって無数の音色があり、奏者の数だけ魅力があると言ってもいい楽器です。

そこで今回は現役プロ奏者の筆者が、一度は聴いてほしい超一流のトロンボーン奏者をご紹介します。トロンボーンを始めたばかりの方や、もっと頑張りたいと思っている方の参考にもなりますのでぜひ最後まで読んでくださいね!

案内人

  • 武崎創一郎広島交響楽団バストロンボーン奏者。
    演奏家をつとめる傍ら、メディアへの寄稿やSNS運用も手がけている。
    自身のTwitterとブログではオーケストラ奏者×子育てのセキララを発信中。

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一度は聴いてほしいプロの有名トロンボーン奏者【日本】

まずは日本人のトロンボーン奏者を紹介していきます。
今回はオーケストラや吹奏楽だけでなく、ソロでも活躍する奏者を挙げています。

日本人とはいえ、世界中を飛びまわる名プレイヤーです。海外に拠点のある方もいますが、身近で定期的に演奏を聴くチャンスもたくさんありますのでぜひチェックしてくださいね。

小田桐寛之

小田桐氏は2022年3月までの36年間、東京都交響楽団首席奏者を務めた日本を代表するオーケストラプレイヤーです。
東京トロンボーン四重奏団、バックボーンジャパンといったアンサンブルグループでも活躍しています。
これまでにたくさんのプロ奏者を育てた教育者でもあり、現在でも昭和音楽大学や洗足学園をはじめとする数多くの大学で指導にあたっています。

現在の日本トロンボーン界を作り上げた奏者の一人と言っていいでしょう。
彼の演奏は明るく艶やかな音色と情熱的なフレージングが印象的で、聴く人すべてを魅了します。

山本浩一郎


メトロポリタン歌劇場オーケストラを経て、シアトル交響楽団首席トロンボーン奏者を務める山本氏。高校卒業後から海外に渡り、アメリカの超名門ジュリアード音楽院にて研鑽を積んだ経験の持ち主です。

ソリストとしても活躍しており、日本とアメリカ以外にも世界各地でリサイタルやマスタークラスを行っています。
「ballade」「proof」「Tomasi /Trombone Concerto」といったソロアルバムもリリース。

山本氏のトロンボーンの魅力はなんと言っても太くキメの細やかな音色と、徹底的に磨き抜かれたサウンドと圧倒的なテクニックです。それらを使った情熱的な歌いこみは聴く人の心をこれでもかと揺さぶります。
日本が誇る世界最高のトロンボーン奏者の一人です。

玉木優

ミシシッピ交響楽団、東京佼成ウインドオーケストラ、南デンマークフィルハーモニー管弦楽団を経て現在はソリストになった玉木氏。日本管打楽器コンクール第1位(2009年)チェジュ国際金管楽器コンクール第2位(2010年)といった、国内外のコンクールで入賞した輝かしい経歴も持っています。

世界各地でのリサイタルや一流音楽大学でのマスタークラスを行う一方で、日本国内でも活躍。トロンボーンアンサンブル「スライドジャパン」メンバーとしてのコンサートや、プロ・アマチュア問わず吹奏楽団やオーケストラとの共演も重ねています。

教育者としての活動にも積極的で、プロ奏者向けのワークショップを開催したり、吹奏楽誌バンドジャーナルでは、若い奏者や音楽家を目指す子供たちへ向けたメッセージを発信したりしています。

中川英二郎

中川氏は世界で最も有名なジャズトロンボニストの一人と言えるでしょう。

ユニットでの活動にも積極的で、世界トップのジャズトロンボニストであるジム・ピューとの「E’nJ」や、ジョセフ・アレッシ、マーシャル・ギルクス、ブラント・アッテマとの「Slide Monsters」はまさにドリームチームです。
日本でも国内のクラシック&ジャズのトッププレイヤーが集まる「侍brass」で活躍しています。

また、JAZZやポピュラー音楽にとどまらず、全国各地のオーケストラや吹奏楽団との共演など、ジャンルを越えて活躍。NHK連続テレビ小説『瞳』のメインテーマも担当しており、トロンボーンを吹かない人にもその名を知られています。

清水真弓

慶應義塾大学を経て同大学院在学中にトロンボーン奏者への道へ飛び込んだという、異色の経歴を持つ清水氏。フライブルク音楽大学、ベルン芸術大学にて世界的トロンボーン奏者であるブラニミール・スローカーに学びました。

オーストリアで初の女性首席トロンボーン奏者として、リンツ・ブルックナー管弦楽団のトロンボーン奏者に就任し、その後は南西ドイツ放送交響楽団の首席奏者を務めています。
ソリストとしてだけではなく、トロンボーンアンサンブル「スライドジャパン」のメンバーとしても活動する、日本のトロンボーン界をリードする存在です。

しなやかな音色とスピード感が印象的で、リサイタルにおいては終始エキサイティングな演奏が聴衆を魅了します。新作の初演やタップダンスとトロンボーンの融合など、新たな試みからも目が離せません。

一度は聴いてほしいプロの有名トロンボーン奏者:②海外

続いては、アメリカやドイツ、オーストリアといった、音楽の最前線で活躍する海外の超一流トロンボーン奏者を紹介します。トロンボーン界のシンボル的存在とも言えるトッププレイヤーの演奏をぜひお聴きください。

Joseph Aless(ジョゼフ・アレッシ)i

フィラデルフィア管弦楽団、モントリオール交響楽団といったメジャーオーケストラの奏者を経て、現在はニューヨークフィル首席トロンボーン奏者のアレッシ。彼こそ世界中のトロンボーン奏者が憧れ、目標にしている世界最高のソリストです。

ソリストとしては世界中の音楽祭、プロオーケストラとの共演、トロンボーンキャンプやマスタークラスにも招かれている大スター。ソロのCDも多数リリースされていて、トロンボーンを学ぶなら必ず聞いておきたい名盤ばかりです。

また、教育者としての顔を持つ彼は、アメリカ最高峰のジュリアード音楽院で多くの一流奏者を育てた名教師でもあります。

「世界一のトロンボーン奏者は誰?」と聞けば、いちばん多く名前が挙がるのはジョゼフ・アレッシでしょう。

Ian Bousfield(イアン・バウスフィールド)

アレッシと同じく、世界最高のソリストであるイアン・バウスフィールド。
ロンドン交響楽団、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団にて首席奏者を努めたオーケストラプレイヤーでもあり、ウィーンフィル初の英国出身プレイヤーです。

教育者としても精力的に活動しており、日本においてもマスタークラスや数日にわたるセミナーを開催しました。イギリスの名門、英国王立音楽院の教授でもあるその指導力は折り紙つきです。

現在はソリストとして世界各地で活動し、ウィーンフィル、ロンドン交響楽団とも共演。リッカルド・ムーティをはじめとする一流指揮者とも共演するなど、大ベテランでありながらも今後の活躍が楽しみな超一流プレイヤーです。

James Markey(ジェームス・マーキー)

ピッツバーグ交響楽団首席、ニューヨークフィル2番奏者を経て、2007年にニューヨークフィルのバストロンボーン奏者に就任。現在はボストン交響楽団のバストロンボーン奏者です。

テナートロンボーン奏者からバストロンボーン奏者への転身は世界のトロンボーン愛好家を驚かせました。ソリストとしてもボストンポップスやピッツバーグ交響楽団はじめ多数の楽団と共演。世界各地のマスタークラスやトロンボーンキャンプに招聘され、教育者としても活躍しています。

マーキー氏の生まれ持っての才能はもちろん、日々の練習における分析と考察、そして忍耐力と継続力はまさに圧倒的。Instagramで彼が始めた「100day Practice challenge」はトロンボーン界で話題となりましたね。テナー、バスの両方でソロCDをリリースしており、超人的なテクニックを披露しています。

Stefan Schulz(ステファン・シュルツ)

ステファン・シュルツは、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団バストロンボーン奏者です。
ヨーロッパ圏で最高のプレイヤーであり、ベルリン芸術大学教授も努める教育者でもあります。

また、室内楽奏者、ソリストとしても活躍。ダニエルシュニーダーや、ジャン=ミシェル・ドフェといった作曲家の初演も務めており、レパートリーの少ないバストロンボーンで新しいソロのジャンルを切り開いてきました。

彼のトロンボーンの魅力は、なんといっても色彩豊かな音色と変幻自在のフレージングです。次々に湧き出してくる音楽のアイデアはアートと言っていいでしょう。
その一方でオーケストラワークにおいては、正確・実直・誠実という言葉が似合う洗練された技を見せます。

プロの有名トロンボーンアンサンブル

トロンボーン最大の魅力と言っても過言ではないアンサンブル。トロンボーンを愛する全ての人に聴いていただきたい四重奏と三重奏について下記記事でご紹介しているので、ぜひご覧ください。

まとめ

素晴らしいプレイヤーばかりでしたね。

今回ご紹介したトロンボーン奏者はほんのひと握りです。

トロンボーン界には、CDやYouTubeといったすぐに手が届く方法では演奏が聴けないプレイヤーも多数います。
なので、ぜひコンサートにも足を運んで、まだ見ぬ名プレイヤーやお気に入りの奏者をご自身でも見つけてみて下さいね。