木製特有の温かい音が特徴のマリンバ。アフリカが起源の鍵盤楽器ではありますが、世界中で演奏されるようになったのは、実はある日本人奏者のおかげということを知っていますか?

他にも、日本には世界トップクラスのマリンバ奏者がたくさんいます。そこで今回は、日本人プレイヤーを中心に、海外の有名実力派プレイヤーを一挙ご紹介します!

穏やかな音色からは想像もできない超絶技巧な演奏テクニックは必見です。

案内人

  • 北村萌吹奏楽にて12歳より打楽器を始め、14歳からは学外でマリンバの個人レッスンを受ける。
    神戸山手女子高等学校音楽科を経て同志社女子大学学芸学部音楽学科演奏専攻管弦打楽器コースを卒業したのち スイスに渡り、
    Conservatorio della Svizzera Italiana(スイス・イタリア音楽院)にて研鑽を積む。(修士課程)

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日本の有名女性マリンバ奏者

まずは女性マリンバ奏者を紹介します。
男性に負けず劣らずパワフルな演奏をされる方も多いので見応えもバッチリです。

安倍圭子

マリンバの発展を語る上でも欠かせない人物です。マリンバ作品の作曲も数多く手がけており、多くの国際コンクール課題曲にも指定されています。

マリンバが現在のように世界中で活躍しているのは、実は彼女のおかげです。4、50年前、民族楽器として知名度を確立しつつあったマリンバと出会った安倍氏が、クラシック界でも発展させたいと思い立ち、楽器会社YAMAHAと協力することに。そこで5オクターブ製のマリンバを開発するなど、マリンバの発展に大きく影響を与えました。

現在彼女は音楽大学で教授として務め、世界各国でマスタークラスを開催するなど指導面でも積極的に携わっています。

神谷百子

日本最高峰の音楽大学である東京藝術大学の器楽科が開校して以来、マリンバ受験者として初めて合格したのが神谷百子です。その後は、ジュリアード音楽院に留学し故エルデン・ベイリーに師事。在学中に名誉奨学生としてナウムバーグ賞やソウル・グッドマン賞などを受賞しています。

華麗な音色と圧巻のパフォーマンスで人々を魅了する神谷氏。現在も精力的に演奏活動をするほか、数多くの世界的な国際コンクールやセミナーに審査員や講師として招かれ、その実力は世界的に認められています。

塚越慎子

数多くの著名なコンクールにて優勝、入賞を果たしている日本トッププレイヤー。国立音楽大学を首席で卒業し武岡賞を受賞。皇居内桃華楽堂にて御前演奏を行うほどの実力の持ち主です。様々な色彩を感じる彼女の演奏には、柔らかさの中にも芯のある音を感じます。

2011年には、日本の将来を期待されるクラシック演奏家の支援を目的とする『出光音楽賞』を打楽器奏者として初めて受賞しました。クラシックにとらわれず様々なジャンルでの演奏をするほか、バラエティ番組にも出演するなど活動は多岐にわたります。

日本の有名男性マリンバ奏者

続いては日本人の男性奏者を紹介いたします。日本を出て海外を舞台に活躍する奏者も多く、その表現力は確かなものです。

布谷史人

布谷氏はアメリカ留学時代、ボストン音楽院創立以来初めてのArtist Diploma科のマリンバ奏者として、学費全額免除のほか学長からも特別賞与を授与し研鑽を積みました。2009年にはイタリアのリベルタンゴ国際音楽コンクールで優勝。これは、日本人としてもマリンバ奏者としても初めての快挙であり、彼の底知れぬ実力を物語っています。

彼の奏でる音色は、例えるなら「歌うマリンバ」です。打楽器奏者だけではなくピアノ奏者にも師事していたからこその音色と言えます。

現在はドイツ在住で定期的に帰国しては演奏されていたり、オンラインでリサイタルを行なったりしています。

名倉誠人

ニューヨークを中心に国際的に活躍している名倉氏。彼がクラシックの演奏をする際は、彼自身の編曲であることがほとんどです。通常のマリンバはもちろん、希少な楽器である直管式バスマリンバでの演奏も度々披露しています。

直管式バスマリンバは通常のマリンバのように共鳴菅が曲げられていないのでその分楽器が高くなり奏者が台に乗り演奏する必要があります。世界中を周り洗練された技術をもつ名倉氏が、この直管式バスマリンバの深く温かみのある音を通して奏でるバッハは必聴です。

小森邦彦

小森邦彦は、国内に留まらず世界中で演奏活動の展開を広げているマリンバ奏者です。彼の留学していたイーストマン音楽大学では奨学金授与に加え、同校の最高名誉である『演奏家証明書』を与えられ、コンクールでも数多くの賞を受賞しています。

さらには世界各国の音楽祭に招かれ、独奏や室内楽、協奏曲に至るまで様々な作品の委嘱と初演に携わり、マリンバ音楽の先駆者の一人として国内外から非常に高い評価を受けています。

異分野アーティストとのコラボレーションにも積極的で、これまでに能楽師や美術家とのパフォーマンスも行ってきたことから、クラシック音楽の伝統を変えるマリンバ奏者とも言えるでしょう。

海外の有名マリンバ奏者

海外のマリンバ奏者が年々増えてきたことにより、国際的なコンクールが開催されるようになりました。マリンバは、世界のクラシック業界で確実にその地位を確立しつつあります。

パイアス・チェン

香港出身、アメリカ在住の中国系カナダ人奏者です。非常に技巧的かつメロディックに演奏するマリンバ奏者で、2008年に行われた若手アーティストの登竜門ヤングコンサートアーティスツのオーディションで優勝しました。

マリンバは通常は立って演奏しますが、彼は椅子に座りながら演奏をします。まさにピアノのような演奏姿で、打楽器の演奏において難度の高い連符を流れるように美しく弾くことのできる、非常に表現力の高い奏者です。

作曲家や編曲家としても多くの作品を手掛け、コンクールや演奏会において彼の楽曲を耳にする機会は年々増えています。

ボグダン・バガヌ

ルーマニア出身のボグダンは、5歳からピアノを学び、13歳にはブカレスト・フィルハーモニー管弦楽団の打楽器奏者として活躍しました。23歳にはオーストリアのリンツにある名門アントンブルックナー私立大学マリンバ科の教授に世界最年少で就任。迫力ある音にパッション溢れる音楽を奏でる演奏が特徴です。

現在では長年に渡り世界各地のフェスティバルや、マスタークラスの講師として招待されています。上記の紹介動画の向かって右がボグダンです。

マイケル・バーリット

マリンバだけではなくその他打楽器の演奏も得意とするマイケル・バーリット。作曲家としても活躍する彼は、三つの協奏曲のほか、マリンバと打楽器のためのソロ作品や室内楽作品を多数作曲しています。

ソリストとしてのレベルもさることながら、室内楽やオーケストラでの演奏もしており、グラミー賞受賞の『サード・コースト・パーカッション』をはじめ多くのオーケストラやグループと共演しています。

ルートヴィヒ・アルベルト

ベルギーを代表するマリンバ奏者ルートヴィヒ・アルベルトは、演奏家として以外にも指導面や世界的評価の高いコンクールの主催者として活動しています。彼の演奏はとても繊細で細部まで考えられた音色が魅力です。

マリンバのために作られた楽曲は、前衛的かつ独創的な物も多く、それが魅力でもあるのですが聴き手にとっては難解であることもあります。しかし、彼の曲は演奏同様に綺麗で繊細な楽曲が多く、聴く人が心穏やかになるような作品が多いです。

また、マリンバ奏者の中でも珍しい8本マレット(片手に4本ずつ)での奏法も得意としています。

エリックサミュ

フランスに生まれたエリックサミュは、幼少よりピアノとパーカッションを学びその才能を評価されてきました。リヨン高等音楽院で学んだ後、リヨン・オペラ座のソロパーカショニストとしても活躍。また、ニューヨークで第一回全米マリンバ奏を受賞後、アメリカ、ヨーロッパ、アジアでリサイタルツアーを行いマスタークラスも開催しました。

世界各国の音楽院で教鞭をとるほか、現在はパリ管弦楽団の首席打楽器奏者としても活躍しています。幼少よりクラシックに限らず幅広いジャンルの音楽に親しんできた彼は、とても色彩豊かな音色を奏でます。

まとめ

ピアノやヴァイオリンといった楽器よりもメジャーではないマリンバですが、確実にここ数十年で奏者が増え続けています。今回は、そんなマリンバを発展させている代表的なマリンバ奏者を紹介しました。

本記事を入り口に、マリンバの世界へ踏み込んでくれる方が増えることを願っています。