オーケストラや吹奏楽など合奏の世界でよく目にする打楽器にも、ピアノや他の楽器のように「ソロ」の世界があることをご存知でしょうか?この数十年で大きく進歩し、今では世界各国で国際コンクールも開催されています。

そこで今回は、世界で活躍する有名パーカッショニスト8名をご紹介します。きっとあなたも打楽器の魅力を再発見できるでしょう。

案内人

  • 北村萌吹奏楽にて12歳より打楽器を始め、14歳からは学外でマリンバの個人レッスンを受ける。
    神戸山手女子高等学校音楽科を経て同志社女子大学学芸学部音楽学科演奏専攻管弦打楽器コースを卒業したのち スイスに渡り、
    Conservatorio della Svizzera Italiana(スイス・イタリア音楽院)にて研鑽を積む。(修士課程)

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ソロパーカッションの魅力とは?

ソロパーカッションの楽曲では、作曲家から指定される楽器はさまざまです。スネアドラム一台の曲や、ラテン系の楽器やトライアングルなど複数の楽器を組み合わせる曲など、楽曲ごとに大きく編成が異なります。そのため、毎回新鮮な気持ちで聴くことができるのです。

また、音程の定まらない楽器が多いため、音階を除いたリズムだけで構築された音楽も楽しめます。

打楽器ソロという分野自体がまだ誕生して100年も経っていないので、クラシックの世界では比較的新しい時代の楽曲が多く、より前衛的で面白いアイデアが盛り込まれた曲に巡り合いやすいのも魅力です。

日本の有名パーカッショニスト

実は国内には世界的な評価を受けるパーカッショニストが多くいらっしゃいます。今回はそのほんの一部を紹介します。

吉原すみれ

東京藝術大学、大学院を卒業。世界的権威のあるジュネーヴ国際コンクールで優勝し、その際に各部門のグランプリにあたるプリ・アメリカン賞も授与されました。さらに世界トップレベルのミュンヘン国際コンクールにおいても最高位を受賞。その実力から、国際的な音楽祭にも多く招かれ、ヨーロッパ、日本を中心にソロ活動を続けています。

現在は武蔵野音楽の教授であり、他の大学やセミナーにおいても積極的に後進の指導にあたっています。

菅原淳

7歳よりマリンバを始めた菅原氏は、東京藝術大学を卒業後、パリ国立高等音楽院に留学。ラ・ロッシェル国際打楽器コンクール第1位をはじめ、多くのコンクールで優秀な成績をおさめ、グループ「3マリンバ」アンサンブル「ヴァン・ドリアン」を結成。作曲家に曲を委嘱し数多くの日本初演を務めました。

ソリストとしてだけでなく、所属していた読売交響楽団では38年間も主席ティンパニ奏者を務めた他、国際的な権威あるコンクールの審査員も務めるなど、多方面からその実力が認められています。

現在は、東京音楽大学教授をはじめ複数の音楽大学にて教鞭をとっています。

池上秀樹

8歳からドラムを始めた池上氏。ジャズやロックなどさまざまなジャンルのバンドで演奏をしていた彼は、高校卒業時に出会ったクラシック音楽の世界に衝撃を受ける。その後、クラシックの勉強をするべく大阪教育大学へ進学。在学中、パリ国立高等音楽院に留学し、ミュンヘン国際音楽コンクール打楽器部門の最高位を受賞。その成長スピードは驚異的で、あっという間に国際的パーカッショニストの地位を築き上げました。

異色の経歴を持つ池上氏の型にはまらない試みや演奏は高い評価を得ています。

石川直

父親の転勤により13歳で渡米。15歳から打楽器の本格的なレッスンを受け始めました。マーチングやパフォーマンスをメインとした演奏活動を開始し、PASIC(アメリカのパーカッショニスト向け大規模コンベンション)で優勝。その後[Blast!]に入団し、アメリカ国内ツアーやイギリス王室のために開かれた『The Royal Variety Show』への出演を経て、翌年にはスネアドラム・ソリストの一人に選ばれました。

そんな彼のメイン奏法はルーディメンタルドラミングと呼ばれるもので、「2本のスティックでどこまで出来るか」をテーマに、目で見ても楽しめる飽きの来ないステージパフォーマンスを追求しています。

海外の有名パーカッショニスト

ここからは海外の有名パーカッショニストをご紹介します。
彼らの活躍を見れば世界的に打楽器ソロの地位が確立しつつあることを実感できるでしょう。

マルティン・グルービンガー

多彩な世界観を持ち、超絶技巧を得意とするオーストリア出身の打楽器奏者です。古典楽曲であるグレゴリオ聖歌の録音に現代音楽打楽器のサウンドを融合させた彼の画期的なアルバムはとくに高い評価を受けています。

クラシックだけに留まらず、キューバ音楽やサルサ、タンゴ、ポップスから現代音楽まで演奏する彼の幅広い音楽性も大きな魅力です。

ケイシー・カンジェロージ

世界各国の音楽祭や教育セミナーにて演奏家や指導者として参加しているパーカッショニスト。奏者としてはもちろん、作曲家としても活躍しています。

彼の作品には電子音楽を使用したものや、演出や魅せ方に重きを置いた「見る音楽」、さらにはメトロノームなどを楽器として使用した楽曲など、新しい発想に基づいたものが多くあります。

アレクセイ・ゲラシメス

パーカッションソロコンクールのTROMP国際打楽器コンクールにて1位、さらにはミュンヘン国際コンクールにて2位を受賞。クラシックだけでなく、ジャズやミニマルミュージックにも精通しているドイツの実力派パーカッショニストです。

作曲家としても活動しており、中でもスネアドラム一台の可能性を最大限に引き出した「Asventures」は高い評価を受け、日本はもちろん世界中の打楽器奏者に演奏される人気レパートリーとなっています。

​​エヴェリン・グレニー

イギリス・スコットランド出身のパーカショニスト、キーボーディストです。
8歳の時に聴覚障害となり、12歳でほぼ耳が聞こえなくなった彼女は演奏家として大きなハンディキャップを負いながらも「体全体で音を感じ」演奏を続けています。

現在も世界有数の打楽器奏者として、ソロ以外の合奏やアンサンブルでも活躍。素晴らしい技術と感性を持ち合わせた彼女のために作られた委嘱作品も多く存在し、1989年にはグラミー賞を受賞。続いて1993年には大英帝国勲章を授与されています。

下記インタビュー記事を読んでいただければ彼女の世界観がよりよくわかるでしょう。

まとめ

一風変わっているように見えて、のめり込むと抜け出せない。そんな打楽器の世界にあなたはすでに足を踏み入れてしまいましたね。

今回紹介した奏者以外にも素晴らしいパーカッショニストは数多くいらっしゃるので、ここからはあなた自身で探求する番です。きっと素晴らしい音楽との出会いが待っているでしょう。