吹奏楽といえば、トランペットやトロンボーンを真っ先に連想する方が多いのではないでしょうか。一方、パーカッションを思い浮かべる方は少数派のはず。

しかし、吹奏楽にのめり込んでいくうちにパーカッションにも興味が出てくるものなんですよね。「担当の人たちは、いったいどんなことをしているんだろう?」と。

そんなパーカッションを知る第一歩として、今回は演奏内での役割について解説します。
後半ではパーカッションがかっこいい曲も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

案内人

  • 北村萌吹奏楽にて12歳より打楽器を始め、14歳からは学外でマリンバの個人レッスンを受ける。
    神戸山手女子高等学校音楽科を経て同志社女子大学学芸学部音楽学科演奏専攻管弦打楽器コースを卒業したのち スイスに渡り、
    Conservatorio della Svizzera Italiana(スイス・イタリア音楽院)にて研鑽を積む。(修士課程)

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吹奏楽におけるパーカッションの役割とは?

さっそく、吹奏楽でのパーカッションの役割を見ていきましょう。

リズムの核となりバンド全体を先導

1つめの役割は、リズムの核となることです。

例えば、ドラムセットはリズム隊のリーダー的存在で、ポップスを中心に大活躍しますよね。行進曲ではバスドラムとスネアドラムを中心に据えて、リズムを形成します。

管楽器にもリズムを担うパートはありますが、打楽器はよりリズムに特化しているイメージです。

曲の山場「ここぞ」というときにインパクトを!

2つめの役割は、曲の展開にインパクトを与えること。

分かりやすいのがシンバルですね。最も盛り上がる瞬間に、一発だけ「ジャ~ン!」と打ち鳴らされるあの音は、聴く人に大きな衝撃と迫力を与えます。

こういうのを管楽器で表現するのは不可能でしょう。

いろんな楽器で楽曲の表情をより豊かに表現

3つめの役割は、楽曲の表情をより豊かに表現すること。

打楽器には膨大な種類が存在し、それぞれが唯一無二の音色を持っており、曲にアクセントを加えます。例えば、鍵盤打楽器は管楽器と同じ旋律を演奏して、フレーズの輪郭をくっきりさせる役割を担っているのです。

楽曲に彩を添えるスパイス的な仕事とも言えますね。

吹奏楽のパーカッションがダメダメだと演奏はどうなる?

何十人といるバンドの中で、パーカッションは一音鳴るだけで聞き取れるくらい大きな音量と特徴的な音色を持っています。その分、演奏に与える影響力は大きく、ミスすると曲全体を壊してしまう恐れがあるのです。

例えば、行進曲でスネアドラムがテンポを揺らしてしまうと、ほかの楽器が足並みをそろえることなど到底できなくなります。演奏がストップすることもあるでしょう。

また、打楽器担当が場違いな箇所で適切でない楽器を鳴らしたら、曲の雰囲気は180度変わり、まったく別の楽曲になってしまいます。

吹奏楽でよく使われるパーカッション

吹奏楽にはさまざまなカラーの楽曲が存在し、それにともなって非常に多くのパーカッションが使用されます。
今回はそのほんの一部、代表的な打楽器を紹介します。

スネアドラム

吹奏楽コンクールで毎年必ず課題曲となるマーチをはじめ、クラシックの編曲ものや、ポップスのドラムセットにも組み込まれているスネアドラム。数ある打楽器の内、もっとも基礎的な楽器の一つです。

主な仕事は、やはりリズムの核となること。「ターン」「ダッ」という抜けの良い音には、大所帯の管楽器の中でも埋もれない存在感がありますね。ほかにはロールと呼ばれる奏法で、楽曲を盛り上げる役割も担っています。

シロフォン

華やかで目立つ音色が特徴のシロフォンも打楽器の一種で、吹奏楽でよく使われます。曲中では特に重要なメロディを管楽器とともに演奏し、アンサンブルを際立たせるのが主な役割。

同じ旋律を管楽器が演奏しているため、シロフォンがいなくても曲は成立するのかもしれませんが、あるのとないのとでは全く異なる雰囲気の曲になるのは間違いありません。

小物打楽器

タンバリンやトライアングルなど、小さめの楽器をまとめて小物楽器と呼びます。何百と種類のある打楽器の大半はこの小物打楽器に分類され、曲によって指定されている楽器は千差万別です。

小さいと思って侮ることなかれ。これらを要所要所で使うことで、曲の魅力を最大限に引き出せるようになります。一瞬しか登場しないことも多々ありますが、作曲者の思い描く雰囲気を表現する上で欠かせません。

パーカッションがかっこいい吹奏楽の演奏動画

ここからは、パーカッションがかっこいい楽曲を紹介していきます。

宝島(和泉宏隆 作曲/真島俊夫 編曲)

吹奏楽の名曲に数えられる一曲。宝島は冒頭のアゴゴベルという打楽器に続き、多くの小物打楽器群が楽曲のリズムをつくりながら盛り上げていく打楽器奏者にとって非常に楽しい楽曲です。

エル・クンバンチェロ(ラファエル・エルナンデス 作曲)

こちらもラテン系の打楽器が活躍する曲で、吹奏楽の名曲です。

エル・クンバンチェロとは ”太鼓を叩いてお祭り騒ぎする人達” を意味します。その名の通り一曲を通して常に楽し気でノリのいい曲です。

開始と同時にラテンパーカッシのソロから始まるこの曲はまさにお祭り騒ぎ。冒頭から活躍するラテンパーカッションは一曲中打ち鳴らされ続けます。

華麗なる舞曲(クロード・トーマス・スミス 作曲)

「華麗なる舞曲」は吹奏楽コンクールでの常連曲で、演奏者一人一人の技術が求められる非常に難度の高い曲として知られています。
この曲の魅力は、一曲を通してコロコロと変化をするテンポや曲調、要所要所にみられるさまざまな楽器のソロです。

打楽器パートは頻繁に変化する曲調をリードする役割を担いつつ、常に曲を華やかにするためにたくさんの楽器を演奏しなければなりません。また、吹奏楽曲の中でまれにしか見ることのできない打楽器のみのソロもあり、まさに打楽器が大活躍する楽曲です。

まとめ

本記事では吹奏楽におけるパーカッションの役割、魅力について解説してきました。

盛り上げ役としてのイメージだけではなく、意外といろんなところで活躍しているのを知るきっかけとなれば幸いです。

吹奏楽を聴く際は、ぜひパーカッションにも着目してみてくださいね。