イタリア・オペラといえば、モーツァルト「フィガロの結婚」、ヴェルディ「椿姫」、ロッシーニ「セビリアの理髪師」、プッチーニ「蝶々夫人」など有名どころを思い浮かべる人も多いでしょう。

日本には、こういった『イタリア・オペラの歌曲のみが課題曲』という極めて珍しいコンクールがあるのをご存知ですか?

今回は、これまでに錚々たる顔ぶれの声楽家を輩出してきた日伊声楽コンコルソについて、その歴史と2023年に開催される最新のコンクール情報をご紹介いたします。

日伊声楽コンコルソとは?

日伊声楽コンコルソとは、日伊音楽協会と読売新聞社が主催する声楽コンクールです。
1964年に始まり、現在に至るまで毎年開催されています。ちなみにコンコルソとはイタリア語で、コンクールやコンペティションを意味します。

1960年代の日本では、イタリア・オペラを生で聴くことが難しかったそうです。そんな時期にイタリア音楽への情熱を持つ音楽家たちが1964年に日伊音楽協会を設立し、同時に始めたのが日伊声楽コンコルソです。

声楽コンクールの課題曲といえば、ドイツ、フランス、イタリア、日本などさまざまな国の歌曲が混在していることがほとんどですが、この日伊声楽コンコルソの課題曲はイタリア・オペラのみとなっています。

第10回(1974年)には、ミラノを本拠地として世界的に活躍するソプラノ歌手・出口正子が優勝。第12回(1976年)には、ウィーン国立歌劇場の専属歌手として活躍するも早世した伝説のテノール歌手・山路芳久が優勝するなど、早期から近年に至るまで第一線で活躍するオペラ歌手を輩出してきました。

コンクールは1次予選、2次予選、本選と全て公開で行われ、優勝者には賞金100万円が贈呈されます。さらに入賞者による披露演奏会も行われ、これから声楽界に羽ばたく歌手の歌声を聴くことができます。

日伊声楽コンコルソ公式サイト

過去の結果と歴代入賞者

日伊声楽コンコルソの過去の結果と歴代入賞者をご紹介します。

詳細については公式情報をご参照下さい。

2022年:第1位 徐 大愚(バスバリトン)

中国浙江省出身。昭和音楽大学大学院修士過程2年(当時)。西安音楽学院音楽表現科声楽専攻卒業。これまでに李強、侯高翔、焦洋、的場辰朗の各師に師事。第4回かわさき新人声楽コンクール入賞。

引用元:昭和音楽大学

2021年:第1位 市川 宥一郎(バリトン)

神奈川県出身。昭和音楽大学大学院修了。2016年イタリア声楽コンソルソ・ミラノ部門入選。第1回かわさき新人声楽コンクール第3位。2021年度第1回イブラ・グランド・アワード声楽部門入賞。
2022年現在、藤原歌劇団団員。昭和音楽大学重唱講師。男声ヴォーカルユニット「URANO」メンバー。

引用元:オペラサロントナカイ

2019年:第1位 井藤 航太(テノール)

大阪府出身。東京大学医学部健康総合科学科卒業。
大学時代は「東京大学歌劇団」というオペラのサークルに所属し、学外でもオペラの公演に積極的に参加する。大学卒業後、複数回イタリアに短期滞在し、テノールのヴィンチェンツォ・ベッロ、指揮者のレナート・パルンボの各氏より指導を受ける。2018年京都市にて春秋座オペラ『蝶々夫人』にピンカートン役として出演。

引用元: 株式会社 ブックハウスカフェ

2023年|第59回日伊声楽コンコルソの日程と会場

ここからは、第59回大会の詳細についてご紹介いたします。
日程と会場は以下の通りです。

フェーズ

日時

会場

一次予選

2023年5月15日~17日(月~水)

イタリア文化会館 アニェッリホール(東京・九段南)

2023年5月10日(水)

西宮市プレラホール(兵庫県西宮市)

二次予選

2023年6月14日(水)

イタリア文化会館 アニェッリホール(東京・九段南)

本選・表彰式

2023年7月25日(火)

 

東京文化会館小ホール(東京都台東区上野公園)

 

特別コンサート

2023年11月17日(金)

 

よみうり大手町ホール(東京都千代田区)

第59回日伊声楽コンコルソの課題曲

第59回日伊声楽コンコルソの課題曲は以下の通りです。

1次予選

イタリア・オペラのアリア 1曲(6分以内)

2次予選

 

計2曲(11分以内:曲間を含む)

イタリア・オペラのアリア(1次予選以外の曲) 1曲

イタリア歌曲(下記記載の作曲家作品に限る 1曲

本選 計3曲(17分以内:曲間を含む)

 

イタリア・オペラのアリア(予選以外の曲) 1曲

イタリア・オペラのアリア(自由。予選の曲でもよい) 1曲

イタリア歌曲(予選以外の曲で、下記記載の作曲家作品に限る) 1曲

 

イタリア歌曲は、次の作曲家の作品の中から選ぶこと。移調は自由とする。

F. Alfano / V. Bellini / L. Berio / A. Casella / M. Castelnuovo-Tedesco / A. Catalani / F. Cilea / P. Cimara / D. Cimarosa / L. Dallapiccola / V. Davico / S. Donaudy / G. Donizetti / G. F. Ghedini / C. W. Gluck / G. F. Händel / R. Leoncavallo / G. F. Malipiero / P. Mascagni / V. Mortari / W. A. Mozart / J. Napoli / L. Nono / M. Persico / G. Petrassi / I. Pizzetti / A. Ponchielli / G. Puccini / G. Recli / O. Respighi / R. Rossellini / G. Rossini / A. Scarlatti / P. A. Tirindelli / G. L. Tocchi / F. P. Tosti / G. Verdi / E. Wolf-Ferrari / M. Zafred / R. Zandonai

 

※イタリア・オペラのアリアは予選、本選ともイタリアの作曲家の作品をイタリア語で歌うこと。原則として原調とする。ただし、慣習的に移調されているものは認める。

第59回日伊声楽コンコルソの結果

コンクールの結果は、詳細が分かり次第、本サイトにて紹介予定です。

第59回日伊声楽コンコルソのチケット情報

第59回日伊声楽コンコルソのチケット情報については、現在公開されておりません。
追って公式ホームページで発表するとのことですので、興味のある方は随時公式サイトを確認しておきましょう。

まとめ

本コンクール主催団体の一つである日伊音楽協会の初代会長は、藤原義江です。彼は藤原歌劇団を立ち上げ、日本のオペラ界の先駆者となりました。また、昭和のテレビ音楽番組でもお馴染みのテノール歌手・五十嵐喜芳や、バス歌手・岡村喬生など、声楽界の中でリーダーシップを発揮してきた歌手たちの足跡は、現代にしっかりと受け継がれています。

そんな中、この日伊声楽コンコルソでは、今回どのような才能ある声楽家が輩出されるのか、とても楽しみです。