音楽が大好きな仲間たちと切磋琢磨する、音大で過ごす日々は素晴らしいものです。
しかし、卒業後は?音大生なら誰でも職業音楽家になれるわけではありませんし、誰もが音楽の先生になるわけでもありません。
本記事では音大生のリアルな進路と、演奏家になるための心得をご紹介します。
目次
音大卒業後のリアルな進路
まずはこちらの円グラフをご覧ください。これは、平成31年卒の音大生の進路をまとめたものです。
突出した数字を持つのが、進学・留学です。「音大生は就職しないの?」と思った方も多いのではないでしょうか。
平成31年度の大学卒業者の78%が就職したという文科省の数字から見ても、音大生の進学率は高いと言えます。
ただ、進学したからといって、学生の延長という訳ではありません。大学院生たちの多くは、在学中から演奏活動を行い、一人前の奏者としてのキャリアを歩んでいるのです。
次に多いのが、フリーランスの演奏家です。コンサートやイベントなど、単発の業務委託を結んで出演料を得ます。中には、教師や音楽教室の講師として働きながら、並行して演奏活動をしている人たちもいます。
演奏団体というのは、オーケストラや劇場の正規団員のことです。こちらは、音楽の世界には珍しい正規雇用なのですが、狭き門なので1%となっています。
演奏家になりたい!そのためには?
コンクール・オーディションを受けよう
コンクールやオーディションの成績優勝者には、コンサートに出演できたり、協奏曲のソリストになる機会が与えられることがあります。
こういった情報は音大に集まってくるものなので、学内の掲示をよく確認しましょう。
学生のうちに、どんどんチャレンジしていきましょう!
協会・連盟・事務所に所属しよう
日本には、数多くの演奏家の協会・連盟や音楽事務所があります。
オーディションを受けて合格すれば、所属団体から演奏の仕事を紹介して貰える他、コンサート開催時に協賛を受けられることもあります。
団体によって会則は異なりますが、その地域の出身や在住が求めるところや、年会費がかかるところもあります。
活動の盛んな連盟・事務所に加盟すれば、仕事の幅も広がります。
コンサートを企画・主催しよう
演奏の仕事が来ないからといって、何もしないのでは、永遠に道は開けません。
自主コンサートを開くことで、新しいファンがついたり、新しい演奏の仕事につながることもあります。
自主企画のコンサートは、赤字のリスクを抱えますが、仲間を集めるなどして工夫しましょう。
企画・演奏・マネジメント・集客を経験することは、音楽家として必要な経験です。
演奏の仕事いろいろ
フリーランスの音楽家として生活してゆく場合、具体的にはどんな仕事があるのでしょうか。
ほとんどの演奏家は、いくつかの仕事を掛け持ちしています。様々な演奏の仕事をご紹介します!
コンサート奏者
自身のコンサートをメインに収入を得ている演奏家です。チケットの売り上げが出演料となる場合、主催側から出演料が払われる場合もあります。
依頼が途切れないようなコンサート奏者となるためには、大手の音楽事務所に所属したり、国際コンクールで入賞していたりする必要があります。
オーケストラ団員
オーケストラの正式団員は、非常に狭き門です。一度採用されると、正規雇用で定年まで勤めることができます。
そのため採用枠が少ないのですが、エキストラとしても、オーケストラに乗ることができます。
エキストラとして参加しているうちに、正式団員の話が来ることもあります。オーケストラに入ることが夢という方は、多くのオーケストラに参加するようにしましょう。
コレペティトール
バレエやオペラでは、録音ではなく、生のピアノで稽古をします。その稽古のときのピアノを弾くのが、コレペティトールといいます。
ただ単に楽譜を演奏するだけでなく、舞台作品の深い知識が求められます。通常はバレエ団、劇団と契約します。
イベント奏者
記念式典、ディナーショー、ロビーコンサート、クリスマスやカウントダウンといったイベントで演奏します。
音楽家連盟や事務所などから募集が回ってくることもあれば、主催から直接声が掛かることもあります。
ブライダル奏者
結婚式での生演奏は人気です。新郎新婦のリクエストに沿って、式や披露宴で生演奏を行います。
ブライダル関連の事務所が複数あり、登録していると募集が回ってきます。登録には面接と演奏審査があります。
楽器のデモンストレーター
電子ピアノといった電子楽器を演奏して、その楽器の魅力を伝えるという販売促進の一環で行われる演奏の仕事です。
コンサートの時間は30分ほどあり、人の多いショッピングモールや楽器店の店頭で行われます。楽器店と契約している人がほとんどですが、単発で仕事を請けることも。
バックミュージシャン
テレビで、ミュージシャンの後ろで楽器を演奏している人たちを見たことはありませんか?
単発で募集が出ることが多く、学生のうちからチャレンジできます。
そのうち特定のアーティストのツアー、レコーディングに参加するようになる人もいます。主にテレビ局が募集しています。
夢を叶えた演奏家、学生時代はどう過ごしてた?
人脈を作ろう
演奏の仕事が多い音大出身の友人に聞くと必ず出てくるワードが「人脈」です。
オーディションやコンクールといった正攻法も大切ですが、できるだけ多くの人に出会い、人脈を築くことが必要です。
音楽関係の人に顔を売るのも大切ですが、他業種の人脈が後から生きてくることも。
譜読みの力をつけよう
演奏で食べていきたいと思うなら、譜読みの速さは必須です。ピンチヒッターとして仕事を請けても、譜読みが速ければ対応できます。
そうした対応力のある演奏家は重宝され、仕事につながっていくのです。譜読みの他に、移調能力や、ピアノならコード奏ができるといいでしょう。
他楽器とも積極的に関わろう
音大では、ついつい同じ楽器同士で仲良く固まりがちです。それ自体は悪いことではないのですが、他楽器の人ほど、自分を必要としてくれることがあります。
様々な楽器の人と仲良くなっておくと、自分の専攻楽器が足りない時に声をかけてもらいやすくなります。
イベントやブライダルでは、様々な組み合わせのアンサンブルが求められることも。
演奏+○○の力を磨こう
音大に入学すると、難なく超絶技巧を繰り出す猛者たちがたくさんいて、心折れることもあるでしょう。しかし、諦めるのには早いのです!
実力はもちろん大切ですが、上手な人だけが演奏家として活躍しているわけではありません。
トップになるには難しいかも…と気付いた時点で、演奏の枠を超えて、幅広い勉強をしましょう。
アレンジが得意な人、歴史が好きな人、料理が得意な人…。一見音楽とは関係ない趣味や知識でも、どう魅せていくかはあなた次第。
演奏+○○の力を身につけることで、他の演奏家とは一線を画したキャラクターを売りにすることができます!
演奏以外の仕事に就いた音大卒業生たち
年々、音大生の就職活動率は高まっています。10年前の一般企業への就職率は、全体の8%ほどでした。現在は、17%もの学生が一般企業に就職しています。
一般企業の中には、音楽系企業も含まれます。このような企業で、今までの経験・知識をダイレクトに生かすことも可能ですし、音楽以外の企業でも、音大生の持っている力は存分に生かすことができるのです。
まとめ
音大を目指す学生は、年々減っています。それは「苦労して音楽を勉強しても、食べていけない」という理由もあるのかも知れません。確かに、正社員のように安定した生活を送ることはできないかもしれません。
しかし、「働き方改革」が推奨され、「終身雇用」が神話となりつつある今、フリーランスの音楽家は、時代に沿った働き方ともいえます。実際、「音楽で食べている」音大卒業生は、数多く存在しています。
大切なのは、行動すること、やり続けること、音楽を愛する気持ちです。やり方や魅せ方次第で、いくらでもマーケットを切り開く可能性があります。あなたの勇気ある一歩を、応援しています!