今回はジャズやブルーグラスの現場でよくみられるフラットマンドリンについて、詳しくお話していきたいと思います。
ラウンドマンドリンとの違いや主なメーカーごとの特徴、オススメの楽器もご紹介していきますので、ぜひ最後までお付き合いください。
案内人
- 久保慎太郎大阪在住のマンドリン愛好家。幼少期にピアノを始め、学生時代にマンドリンやクラシックギター、コントラバスに出会い嗜むように。社会人になる際にはマンドリンオーケストラを自分で立ち上げて指揮者を務めるなど、常に音楽と過ごす人生を送ってきました…
フラットマンドリンとラウンドマンドリンの違い
まずはフラットマンドリンとラウンドマンドリンの違いについてお話します。違いは大きく3つありますのでひとつずつ見ていきましょう。
違いその❶:形状
フラットマンドリンは背面が平らで、ラウンドマンドリンよりもギターに近い形をしています。
細かい曲線の違いはあるものの、どれもほぼ同じ形状のラウンドマンドリンに対してフラットマンドリンは、渦巻型の装飾がボディに施されたFタイプと、洋ナシのような形をしたAタイプの2種類があります。
またサウンドホールもヴァイオリンのようなfホールタイプと、ギターのような楕円形のオーヴァルホールの2種類あるのもフラットマンドリンの特徴の一つ。
ピックガードの付け方も異なります。
ラウンドマンドリンは表面版と一体化しており、いわばデザインの一部のように扱われる一方で、フラットマンドリンはギターと同じく別パーツとして取り付けられています。
これはラウンドマンドリンと比べ、和音をストロークで演奏するなどギターに近い演奏をする頻度が高く実用性を重視した結果と言えるでしょう。
違いその❷:音色
形状が異なれば音色も変わってきます。
ラウンドマンドリンはフラットマンドリンに比べて丸みのある落ち着いた音色を持っており、フラットマンドリンはやや金属的ながらも煌びやかな音色を持っています。
サウンドホール内の空間がラウンドマンドリンよりも狭く、弦との共鳴もそれだけ早くなるためです。
FタイプとAタイプでも音の違いが見られ、FタイプはAタイプより高い音がはっきりと出やすいとされています。
違いその❸:使われるシーン
フラットマンドリンとラウンドマンドリンは使われるシーンも大きく異なります。
ラウンドマンドリンは基本的にクラシック音楽やマンドリンオーケストラの合奏で用いられることが大半。
それに対してフラットマンドリンは、クラシック音楽は勿論のことブルーグラスやジャズ、カントリー、ポップスなど幅広いジャンルで使われます。また、フラットマンドリンにはエレキマンドリンというタイプもありバンドミュージックでも活躍しています。つまり、フラットマンドリンの方がラウンドマンドリンより汎用性が高いというわけです。
フラットマンドリンのメーカーごとの特徴
フラットマンドリンを生産しているメーカーは数多ありますが、今回はその中でも代表的なメーカーを3社取り上げ、その特徴とともにご紹介します。
Aria
始めにご紹介するのは荒井貿易さんが1960年に発表した自社ブランドAria。
Ariaの最大の特徴は何と言っても値段の安さでしょう。1万円代後半から3万円とリーズナブルな価格帯で、フラットマンドリンの入門モデルとして多くの方に使われています。
ラインナップはAタイプ2種類とFタイプ1種類の計3種類。音色や音量など楽器としてのスペックはそこまで高くありませんが、Ariaで慣れた後に上位モデルに移るというのもいいかもしれません。
EASTMAN Guitar
続いてはアメリカの楽器メーカーであるEASTMANです。
ヴァイオリンやチェロ、コントラバスの豊富な製作経験を活かした質の高いフラットマンドリンが揃っています。EASTMANのフラットマンドリンは中堅者からプロまで広く愛されており、単板削り出しによって実現された独特な音の鳴りに定評があります。
価格帯も入門モデルなら6万円代、一番上のモデルでも30万円代と後述のギブソンに比べるとリーズナブル。どのメーカーのフラットマンドリンにしようかと迷った場合、値段と質の面でみてもEASTMANにしておけば間違いないでしょう。
各モデルにfホールとオーヴァルホールの2タイプあるため、自分の好みに応じたデザインを選べるところもオススメのポイントです。
Gibson
フラットマンドリンを生み出したアメリカの老舗メーカー。
今でこそアコースティックギターやエレキギター、ベースのメーカーとして有名なギブソンですが、その歴史はもともとフラットマンドリン製作から始まったのです。
ギブソンのフラットマンドリンは50万円を超えるものも多く、値段にふさわしい高いスペックを誇り、各ジャンルのトッププレーヤーたちに愛用されています。
現在新規で製作されているデザインは、Fタイプ/fホールとスタンダードなものが多いです。Aタイプやオーヴァルホールのものはオールドがほとんどで、希少価値が高いマンドリンも少なくありません。
ちなみにギブソンにはエピフォンという廉価ブランドもあり、こちらは2~10万円ほどで手に入るモデルがあります。
オススメのフラットマンドリン本体紹介
ここからはリーズナブルなモデルからハイスペックなモデルまで、オススメのフラットマンドリンをご紹介します。
ARIA AM-40 Fタイプ/fホール
ARIAのフラットマンドリンの最上位モデル。オーソドックスなデザインのモデルを2万円代で購入できるので、まず手ごろなマンドリンで始めたいという方にはオススメです。
EASTMAN 3 series MD-305 Aタイプ/fホール
EASTMANフラットマンドリンの入門モデルです。値段は7万円代とリーズナブルですが楽器としての質は高く、費用対効果は抜群。
EASTMAN 8series MD-814 Aタイプ/オーヴァルホール
プロの現場でも十分に使える音質と響きを持つEASTMANの上位モデル。20万円を超えるモデルですが、長く使い続けられる逸品となっています。
Epiphone MM-40L Fタイプ/オーヴァルホール
ギブソンの廉価ブランドエピフォンの中級モデルです。EASTMANと同じく値段の割に質もいいので、ギブソンは手が届かないけど…というかたにオススメ。
Gibson F-5G Fタイプ/fホール
もし予算に余裕があれば、このモデルを検討してみてください。フラットマンドリンの名器として高い評価を得ているモデルです。
フラットマンドリンに必要な弦とストラップの商品紹介
最後に、立って演奏することも多いフラットマンドリンには欠かせないストラップと、様々なジャンルの演奏にも活躍できる、オススメの弦をご紹介していきます。
おすすめのストラップ
ARIA/マンドリン用ストラップ SPS-2500M
Fender Mandolin Straps マンドリン用ストラップ
フラットマンドリンにオススメの弦
エリクサー マンドリン弦 ナノウェブ ミディアム
D’Addario EJ62 Mandolin マンドリン弦
まとめ
フラットマンドリンは活躍の場がとても多い楽器です。
これからマンドリンを始めようか迷っているのであれば、とりあえずフラットマンドリンから始めてみることをオススメします。どんどんフラットマンドリンの世界に入り込んでいけるでしょう!