17世紀、イタリアで生まれたマンドリン。小さなボディで最大限に音量を稼ぐべく、同音に調律された弦を2本張るのが大きな特徴です。クラシックでおなじみのボウルマンドリンの他に、アメリカにて発展したフラットマンドリン(あのギターメーカー、ギブソンにてロイド・ロアーという人物が開発)があります。こちらはカントリー・ブルーグラス等で使用され、更なる音量の確保や歯切れの良いコードワークを実現するため、バイオリンにヒントを得た構造をしています。

さて、私はベース弾きなのですが、小さくて軽い、コードまで弾けてしまう。そんなコントラバスとは真逆のマンドリンに憧れに近い魅力を感じておりました。大学4年の夏、なけなしのお金を手に安いマンドリンを購入しました。

本稿では筆者がマンドリンを始めるにあたり、必須な物、あると便利と感じたものについてお話します。

これがないと弾けない! マンドリン演奏に必須な物

1.マンドリン

これがないと始まりません。前述したボウルマンドリン、フラットマンドリン(ひょうたん型のA型、ボディに渦巻の意匠があるF型があります)、さらにはエレキマンドリン等、様々なマンドリンが存在するので、やりたい音楽や家の防音事情、値段等を鑑み、自分に合ったマンドリンを見つけましょう。

因みに筆者が最初に買ったのは、19,800円(税抜)のA型のフラットマンドリンでした。安くても十分楽しめます。

2.弦

購入したマンドリンには必ず弦が張られていると思います。しばらくはその弦で楽しめますが、マンドリンの弦は金属弦なので、2週間もすると音の煌びやかさがなくなり、1ヵ月もすると錆びてきてしまいます。マンドリン購入に合わせ、1セット購入しておくと良いでしょう。

現在は様々なメーカーが弦を販売しており、太さや材質だけでなく、メーカーごとのこだわりによって音が違います。自身の好みを見つけるためにも、色々な弦を試してみましょう。

中にはギター弦を組み合わせて使っている方もいるくらいですからね。

筆者はマーチン製80/20のブロンズ弦を使っています。

3.ピック

伝統的にマンドリンを指でほぼ弾くことはありません(最近では石橋敬三さんなどがギターやエレキベースで使われる指を使った奏法を取り入れ、革新的な演奏をしています)。

昔はべっ甲製のピックを使っていましたが、現在べっ甲はワシントン条約により取引が制限されており、流通数が少なく高価です。故に現在では、ギターのピックで代用することが多いです。

マンドリンは単音弾きをする機会が多いこと、弦の張力が高いこともあり、厚さ1mm以上の固めのピックが良く使われます。材質も多種多様で、握り心地や弦と当たった際の感覚、弾いた時の音で選びましょう。

また、こだわり派やプロ奏者は、自分の理想の音が出せるよう、ピックを削り、弦と触れる面の形状を変化させています。ギター用のピックは1枚100円程と大変手頃な値段なので、削ることも含めて、色々試してみるとよいでしょう。

筆者はクレイトンというメーカーのウルテム製、厚さ1.2mmの物を使用しています。

4.チューナー

正しい音程で弾かないことには音楽になりません。チューナーは必須です。

特にマンドリンは同音の弦2本を同時に弾くため、少しでもずれていると基音がぼやけたなんとも言えない音がします。音感を身に着けるためにもしっかりチューニングしましょう。

最初に買うチューナーとしておすすめなのがクリップ型チューナーです。これは楽器のヘッド部に挟むように装着することで、振動を基にチューニングしてくれます。着けっぱなしにしておけばチューニングが億劫になりづらいので、1つ持っておくと便利です。

最近では携帯アプリもリリースされており、お金をかけたくない方や、持ち歩きが面倒な方はそちらを使ってもよいでしょう。

早く上達したいあなたの為に。あると便利な物

1.教則本

最近ではネット上でもそれなりの情報を手に入れることができますが、やはりプロの奏者が監修した教則本の情報はより正確かつ効率的です。構え方から基礎練習、簡単に弾ける曲の譜面まで、楽しく習得できるでしょう。何より自分でお金を払っている分、出費を無駄にしないように頑張れます。

まだまだ日本では馴染みのないマンドリン。教則本は海外出版の物が多く、全編英語なんて物も珍しくありません。そんな中おすすめなのが、藤田 修 著「図で解る 正しいマンドリンの弾き方」です。演奏時の姿勢や、ピックの持ち方、ストロークの仕方などが図で解説されており、上達の一助となってくれるでしょう。

図で解る 正しいマンドリンの弾き方

2.理論書

音楽理論というと、とても複雑で難しいものであると感じる方も多いでしょう。

しかし、筆者の主観だと学生時代嫌いだった教科よりも、取っ付きやすいものでした。音楽理論を少しでも齧っておくと、例えば普段マンドリンでは演奏されていないロックの曲をアレンジして弾く、なんてことも出来ます。「勉強かぁ…」と思うかもしれませんが、是非取り組んでみてください。もっと音楽が、マンドリンが楽しくなりますよ。

さいごに

マンドリンを始める際に必要な物について書いてみましたが、いかがでしょうか?よく、大人になって楽器を始めるのは子供の頃にスタートするより、上達しづらいと言われます。確かに子供の頃の吸収力もなく、仕事や人との付き合いでなかなか練習の時間が取れない等、上達のハードルを上げる要因は多々あります。しかし、大人の頭脳と経済力を駆使すれば、効率の良い上達が望めるはずです。まずは楽しく、ゆっくりと。続けることにこそ意味があります。あなたの人生にマンドリンの爽やかな音色を加えてみてはいかがでしょう?