歌や楽器、音楽の練習に日々励む皆さん。演奏する楽しさを感じてくると、しだいに演奏会を開きたいという思いが生まれてきますよね。しかしここで、「リサイタル・演奏会は、どうやって開くの?」と素朴な疑問が浮かび上がってくる人も少なくないでしょう。

そこで今回は、リサイタルや、演奏会を開くために必要な3つの視点をご紹介します。

 ①主催者としての視点
 ②足を運んでいただくお客様の視点
 ③演奏会を支える人々の視点

それぞれの立場から考えてみると、同じ『演奏会』でも違った視点があることに気が付きます。演奏会を開くということについての疑問が、お読みいただいて少しでも解決されれば幸いです。

①主催者としての視点〈急がば回れ?見通しをもった企画が演奏会を充実させる!〉

まずは、主催者側としての視点をチェックしていきましょう。

演奏会の実現には、案外時間がかかるもの。練習計画を練り、フライヤーを作成し、チケット代を設定し…といったことを皮切りに、すべきことが山積みです。
しかし、それら細かいことの一つひとつが演奏会のクオリティに貢献し、より多くのお客様に楽しんでいただくために不可欠な要素となります。

具体的にどういったことが、いつまでに必要なのかを可視化してみましょう。

(1)会場の予約
会場により異なりますが、1年前までに押さえておくのが理想です。どんなに遅くとも半年以上前には決定しておきたいところですね。はやる気持ちと戦い、ここでしっかりと準備期間を確保しましょう。また、利用料金がチケット代に応じて上下する場合も多いので、こちらも予め話し合っておくとベターです。

(2)プログラムの選定、練習計画の作成
こちらも、もちろん早いに越したことはありませんが、半年ほど前から練習を開始できるとよいでしょう。人数や規模の大きな演奏会では特に、本番に近い状況でのリハーサルも肝心です。
選曲については、次の項でも詳しく後述します。

(3)フライヤーの作成
発行時期としては、3~4ヶ月前が妥当です。業者に発注をかけるか、はたまた自作するかによって予算が大きく変わりますが、ビジュアルが目に留まるか、という点は集客にも大きく影響するところです。懐の許す限り、デザイン会社等を頼る方が得策でしょう。

まだまだ伝えたい内容は数あれども、とかく情報量の多いフライヤーは読み手の戦意を削いでしまいがちです。「公演名」「日時」「会場」「問い合わせ先」等の必要な情報を吟味し、精査された情報を大きくすっきりと表記したいですね。

その他にもプログラムの作成、協賛の依頼、当日が近づくと会場との打ち合わせ等、突き詰めれば枚挙に暇がありませんが、すべきことをリストアップしておき、自分たちに必要なことを洗い出せるように、また全体を管理把握できるようにしておくことが大切です。

②足を運んでいただくお客様の視点〈ストーリーのある選曲で、聴衆に旅をさせよ!〉

(1)プログラムに流れをつくるメリット
音楽は「再現芸術」とよばれるように、音響体験だけでなく、そこにある時間をも体感させるものです。そこでしか出会えない演奏、そして音が直接肌を振動させる感覚、そうした生きた感動を味わえることが、聴衆にとっても醍醐味のひとつといえるでしょう。

「やりたい曲をやろう!」それもよし。しかし、演奏会はいわば時間体験の連続です。プログラムに流れをもたせることによって、単なる楽曲それぞれの枠を超え、人々に「まるで旅をするような」感覚で深くお楽しみいただけるのではないでしょうか。

(2)糸口は千差万別!自分らしい着眼点を見つけよう
少々難しく書いてしまいましたが、大切なのは選曲のコンセプトを考えてみることです。

たとえば「2020年はベートーヴェン生誕250年」というところから、彼の人生の軌跡を描くというように、作曲家のメモリアルイヤーから考えるのも常套手段です。

また「フランス六人組」のような、ある時代ある国に絞ったものや、「シェーンベルクとヴェーベルン」といった師弟関係から発展していくプログラムも、単純ながら魅力的でしょう。

さらに言うならば、やりたい曲からスタートして、関連する楽曲を組み合わせていくというだけでも、脈絡という意味では十分です。「平和をテーマにした作品」なども、やや使い古された感はあるものの、明確なメッセージ性が伝わりますよね。

充実した時間体験を…と考えると高いハードルに感じますが、このようにヒントは身近に潜んでいます。ひとつのアイディアを膨らませたり、発展させたりしながら、最終的には独自の視点でプログラムを組めるとよいですね!

③演奏会を支える人々の視点〈一期一会!周囲の人を上手に頼って、有機的に動く〉

演奏会は当然ながら、出演者だけで成立してはいません。あなたが思い描くコンサート、その一連の流れをシミュレーションしてみると、どうでしょうか。

まずは演奏している自分自身、あるいは一緒に演奏している仲間たち、視点を変えれば受付スタッフや影アナ、ドアマンまでといったように、演奏会に関わってくれるあらゆる人の動きをイメージしましょう。そうすれば当日、会場でどういう働きをする人が必要か見えてきます。

人員を早めに依頼しておくことは、地味な作業ながら成功の鍵を握っていますよ。

(1)終演後は必ず「反省会」を行う
打ち上げと同じくらいに忘れてはならないのが反省会です。酒の席で話に花が咲くのも一興。ただし欲を言えば、その場限りで終わってしまわないように工夫したいところです。可能であれば後日、まとまった時間を設け、反省点を記録に取っておくのが理想的でしょう。

また、特に演奏面の課題をリストアップするために、本番の録音を残しておくことも効果的ですね。

(2)使い方広がる「良質な録音」
ちなみにほとんどのホールでは、録音用の吊りマイクや機材を舞台機構としてもっていますので、お世話になる機会も多いはずです。手軽で安価というメリットがある反面、編成に合わせた録音や、高度な要求には応えられない場合があります。

音質に録音をこだわる方や、CDメディアにしたいので編集までお願いしたいという方は、専門業者に外注するという選択肢も十分あるでしょう。

(3)次につながっていく演奏会にするために
最後に、企業等で広く使われている「PDCAサイクル」をご存じでしょうか。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(行動)の頭文字を取った言葉で、これらを繰り返すことにより、継続的な改善をねらうというものです。

演奏会に置き換えてみれば、自分たちの公演を改めて客観視し、より良くできる点を明確にしておくことが重要だとわかります。結果的にそれが、次の演奏会開催へのモチベーションにもつながっていくはず。

まとめ

さて、ここまで大まかにではありますが「演奏会を開く」ということについて、3つの視点・3つのポイントから考えてきました。実際に自分たちの手で演奏会を開催するイメージは湧きましたでしょうか?

皆さんの思い描く本番当日が、少しでもいい形で実現されますように!