いまさら訊けないクラシックコンサートの基本マナー【初心者向け】

2019/08/13
演奏会

クラシック音楽の演奏会に行くとき、アタマを悩ませる問題がいくつかあります。服装は? 演奏中のマナーは? 拍手のタイミングは?

クラシック音楽のコンサートに、最低限守るべきルールが存在するのは確か。そしてこのクラシック演奏会特有のマナーがとくに堅苦しいと感じさせ、クラシック音楽じたいを敬遠する人を大量に生み出しているのも事実。今回は、最低限これだけできていれば大丈夫!! なクラシック演奏会鑑賞のツボ。

 

名演も、観客のマナーあってこそ

クラシックだからといって、とくべつ気負うことはありません。服装についても、いつも着用するよそ行きでじゅうぶん。あとは、演奏家の奏でる音楽世界にどっぷり浸っていればいいのです。ただ、ちょっとした気遣いがあるかないかでその日の演奏が、たとえどんなにすばらしい掛け値なしの名演だったとしても、いつまでも記憶に残る公演となるか、そうならないかの分かれ道になったりします。

具体的には、以下のポイントにちょっと気を配るだけで、格段に楽しい演奏会になるはずですし、どれもまったくむずかしいことでも、堅苦しいことでもありません。

 

耳障りな音は出さない!

映画館のポップコーン問題ほどではないにしろ、お隣さんの出す音というのは意外と気になるもの。たとえばビニール袋のガサガサ音や、金属系アクセサリーなどがぶつかりあってガチャガチャと周囲に響かないようにする配慮は必要。コンサートホール内は、意外と音が響くものです。クラシック音楽の場合は弱音のそのまた弱音みたいな微妙な表現が多いので、このへんは注意が必要かと思います。

また衣擦れや、体の揺れによる振動音も場合によっては不快に感じられたりします。ノリやすい性格ゆえ、筆者もついスイングしたくなるような快演を経験したことがありますが、ようは程度の問題。あまりにノリノリで、気がついたら周囲から冷たい視線を浴びていた、なんてことにならないように。

 

公演中の「雑談」は無条件でレッドカード!

公演中のおしゃべりほど、イラつくことはありません。演奏の途中、なかば陶然としていると、いきなり「この指揮者はねぇ…」とかヒソヒソ話されるのはひじょうに迷惑な話。開演後は、日頃のモヤモヤをひととき忘れ、すばらしき音楽世界に身も心も預けること。

演奏の感想は休憩時間中に交換しあうのがオトナの対応というものですし、だいいち演奏者に対して失礼。オーケストラの団員、とりわけ最前列にいる弦楽器奏者などに言わせると、客席のようすはけっこう見えているとか。その日の公演の成否は、間接的ながらもわたしたち聴き手にかかっている、と言えるかも。

 

携帯電話のマナーモードも要注意!

近年の演奏会あるある話で筆頭に挙げられるのが、携帯電話やスマートフォンの着信音問題。とりあえずマナーモードにしておけば大丈夫ではありますが、マナーモード時のあの振動音というのも、ピアニッシモで演奏される楽章ですとやはり気になります。そこで開演前に、スマートフォンの通信そのものを切る、つまり「機内モード」にしておくという手があります。これなら着信音も振動も起きないので、まずは安心。

そうは言っても、演奏中に電話する人はまずいないと思われるので、電源を完全にオフにするのがやはりベスト。これなら周囲に気兼ねすることなく、演奏会を楽しめるはずです。

 

「聴く姿勢」にも気配りを、トイレは開演前に

最近のクラシック専用ホールも含め、演奏会場のホールの座席は、感覚的にはシネコンの座席とだいたいおなじ。座席のクッションはそれなりに音を吸収してくれますが、すこし座り直しただけで耳障りな衣擦れ音が聞こえるような服装は避けたほうがよいでしょう。貧乏ゆすりもハタ迷惑なので、こちらもNG。

演奏中の咳やくしゃみについては、生理現象なのでしかたないところではありますが、なるべく音が漏れないよう、ハンカチなどで口を覆う気配りはお忘れなく。

そしてトイレは開演前にすませておくのがベスト。筆者がコンサート会場に行ってまず最初にするのが、トイレの場所の確認。クラシック音楽の演奏時間は長いので、演奏が始まる前にトイレを済ませておくのが無難です。

 

ヘンなタイミングで拍手してしまったら?

クラシック演奏会でよく聞かれるのが、「どこで拍手したらよいのかわからない」。たしかに! 楽章間の切れ目がまったくないか、もう終わりかと思いきやまだつづきがあった、なんて作品もちらほらあります……たとえばベートーヴェンの有名な『交響曲 第5番』も、第3楽章と最終楽章は切れ目なしに演奏されますし、チャイコフスキーの『交響曲 第6番《悲愴》』の第3楽章と最終楽章の切れ目では、全曲が終わったとカン違いした(?)パラパラ拍手が入ったりします。

演奏家からすると、この手の自然発生的な拍手はなんら問題なしのようです。げんに本場ウィーンやベルリンでの公演を収録した放送を見たり聴いたりしたとき、「拍手を入れるべきではない切れ目」で拍手が入った場面を見たことがあります。本場の聴衆だからといってみな完璧なタイミングで拍手しているわけではないのです。むしろ問題なのは、演奏が終わって間髪入れずの拍手。残響も曲の余韻のうち。拍手はそれからでも遅くはありません。

もうひとつ、「ブラヴォー屋」という人がいます。指揮者の岩城宏之氏もかつてエッセイで「ブラヴォー屋」を、「こういう人種は、[中略]ブラヴォーと怒鳴るとせいせいした顔つきで、後も見ずにさっさと帰ってしまう」と批判したくらい。なにごとも度を超えてはいけない、ということでしょう。

 

グールドは、「コンサートは死んだ」と言ったけれども…

おまけとして筆者自身の失敗談を。以前、ある演奏会に行ったときのこと。ゲスト出演のマリンバ奏者の方の演奏になったとき、不覚にも睡魔に襲われ、コックリコックリと舟を漕いだことがありました(しかも席は最前列に近い位置)。眠くなった原因は開演前に口にしたグラスワインだったので、それ以後、演奏会前はアルコール類を飲まないようにしています。もっとも、マリンバじたいが眠気を誘う音響効果のある楽器だった、というのもあるかもしれませんが。

カナダの伝説的ピアニストのグレン・グールドは若くしてコンサート活動からドロップアウトしたとき、「コンサートは死んだ」という趣旨の発言をしています。理由は定かではありませんが、音楽とまるで関係ないところで外野からあれこれ言われるのが耐えられなかったからのようです(げんに、彼は心無い批評家の酷評に傷ついたことがありました)。

そうは言っても、演奏会というのはその場かぎり、文字どおり「一期一会」のチャンス。演奏会のすばらしさは、聴き手も演奏家もみなひとつの「音楽体験」を共有できるところにあります。わたしたち聴き手には、「生きた」音楽を享受する権利があるのです。

 

…だから、演奏会はこわくない!

以上、いくつかポイント別に演奏会場でのマナーについて書き出してみましたが、どれも基本的なルールないしエチケットばかりで、これを理由にクラシックコンサートを敬遠する、というのは、はっきり言って宝の山を前にしてすごすごと引き下がるようなもの。なぜ楽しまないのか、もったいないですよ!

わたしたちに残された貴重な音楽遺産を演奏会というかたちで直接聴く、という経験は、生きる支えにもなってくれるはずです。

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