映画とクラシックの親密なカンケイ

2017/06/17
クラシック

物語を盛り上げ、ときに観客の心を揺さぶる音楽は、今や映画に欠かせない要素になっています。
鑑賞している最中には意識していなくても、私たちはBGMや挿入音楽に少なからず影響を受けているものです。
サウンドトラックを聴いて映画を思い出したり、映画の内容はあまり覚えていないけれど、音楽が印象に残っているという経験は、誰しも持っているのではないでしょうか。

映画とクラシック音楽は深いカンケイにあるのです。

歴史的に見ると。

映像に音楽をつける技術が発達していなかった昔の映画を「サイレント映画」と呼びます。日本語では「活動写真」とも言いますね。(対して、音のついている現代の映画は「トーキー映画」と言います。)
このサイレント映画時代にも、実は音楽がついていたことをご存知でしょうか。
当時映写機は音が大きく、その機械の音を消すために、上映と合わせて、リアルタイムの伴奏(主にピアノの演奏)がされていました。また1911年には、映画専用の「映画オルガン」も作られたり、当時の映画人は無音の映像に音をつけるため、様々な施策を試みたようです。
「機械がうるさいなぁ、よし、あんな曲やこんな曲でカモフラージュしてしまえっ」というわけです。
当初は、既存の音楽や即興演奏が中心だったようですが、そのうち音楽の質も重視されるようになり、映画館専属のオーケストラなども誕生。また、映画のための作曲も行われるようになりました。フランスの作曲家、サンサーンスが1908年、「ギーズ公の暗殺」のために書いたのが、映画のための作曲第一号だと言われていますが、フランス芸術映画協会が、芸術としての映画(アメリカの娯楽としての映画に対抗)を目指し、音楽も一流のものをということで、サンサーンスを抜擢したと言われています。

ギーズ公の暗殺

その後、1920年代にトーキー映画が登場します。
クラシック音楽が使われている映画には、「バックミュージックとしてクラシック音楽を採用した映画」
「クラシック音楽業界を題材にした作品」と、2つに大きく分けられます。
それぞれの映画を見てみましょう。
まずはこれっ

「2001年宇宙の旅」

クラシック音楽が挿入されている映画で代表的とも言えるSF映画、スタンリーキューブリック監督のこの映画。音楽の教科書にも載っていたりします。
当初依頼していた作曲家が過労で倒れてしまったため、完成曲に納得がいかず、すでに録音までしていた曲を無断でクラシック音楽に差し替えて、騒動になった・・・という説もあります。

使われた曲を挙げてみましょう。
リゲティ:「アトモスフェール」「ルクス・エテルナ」「レクイエム」
リヒャルト・シュトラウス:「ツァラトゥストラはかく語りき」(カラヤン指揮ウィーンフィルハーモニー)
ヨハンシュトラウス2世:「美しき青きドナウ」
ハチャトゥリアン:「ガイーヌ」より「アダージョ」
等々
SFには現代音楽があうのか、リゲティの曲が3曲も使われていますね。
宇宙の壮大な感じにオーケストラの音色がはまっています。

アメリカ映画とクラシックが絶妙にマッチ!

「地獄の黙示録」

コッポラ監督の「地獄の黙示録」には、ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」より「ワルキューレの騎行」が使われています。この映画は、ベトナム戦争を舞台にしたもので、アカデミー賞もとっています。「ニーベルングの指輪」も戦いがテーマだからか、とても良い組み合わせ。

美しい映画「ベニスに死す」

トーマス・マンの小説をルキノ・ヴィスコンティ監督が映画化した、イタリア映画。
マーラーの交響曲第5番より「アダージェット」が使われています。もともとこの曲は、マーラーが恋人のために書いたラブレターだったとか。美少年に魅せられた作曲家というあらすじと、背景としても重なっていますね。(実際にマーラーがモデルだという説も…。)
この映画では、ほかにもマーラーの「交響曲第3番」やベートーヴェンの「エリーゼのために」などが使用されています。

さすがディズニー!「ファンタジア」

これは、改めて紹介するまでもないかもしれません。
クラシック音楽をバックにセリフのない8つの物語が展開されます。
演奏はフィラデルフィア管弦楽団。
バッハ「トッカータとフーガ ニ短調」
チャイコフスキー「くるみ割り人形」
デュカス「魔法使いの弟子」
ストラヴィンスキー「春の祭典」
ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」
ポンキエッリ 「時の踊り」
ムソルグスキー「はげ山の一夜」
シューベルト「アヴェ・マリア」

というように、時代や国を問わず、様々なクラシック音楽が使わています。
ここまでクラシック音楽を主体にした作品はなかなかありませんね。

まだまだ続く!クラシックが使われている映画
ここまで、名作として位置づけられている(クラシック音楽を採用した)映画を取り上げてきました。
最後に、私が「これだけは」と思うものを挙げましょう。

チャップリンの「独裁者」

ラストシーンの演説で有名なこの映画。途中の床屋のシーンに挿入されたブラームスのハンガリア舞曲第5番がたまりません!
本当に面白い!

いかがでしたか?
気になったものがあればぜひ鑑賞してみてください。

最近の映画は有名なポップスのアーティストに作曲が依頼されることも多いですが、上記のような映画を改めて観ると、その映画のためだけに新しく音楽を作ることが必ずしもよいとは限らない気がします。既存のクラシック音楽がここまで効果的に使われているのですから。また、既に知られている曲を使うことで、観客に映画のシーン印象づけるという戦略にもなります。
もちろんここで取り上げたもの以外にもたくさんの映画でクラシック音楽は使われています。探してみてください!

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