東京支部の吹奏楽コンクール全国大会中学の部は毎年予測ができません。6度の金賞受賞に輝いている有名強豪校や、世界最大といわれる音楽の祭典「ミッドウエスト・クリニック」に出演した歴史ある吹奏楽部など魅力あふれる学校ばかり。今回は東京の中学吹奏楽強豪校についてご紹介します。各学校の課題曲への取り組みについても注目です。
案内人
- 川島光将指揮者・作曲家・編曲家 元・中学高等学校音楽教員、吹奏楽顧問 吹奏楽指導者協会・認定指導員 音楽表現学会会員 K MUSIC GROUP代表 現在はオーケストラ、吹奏楽、合唱、声楽など音楽全般の指導にあたる。
目次
【中学】東京の吹奏楽強豪校を紹介!
吹奏楽コンクール中学の部は毎年予測不可能。
東京支部もかなり大混戦です。
中学生の部活は練習時間も短く、そのなかで試行錯誤しながら本当によく取り組んでいます。わずかな練習量の差で結果が大きく変わってしまいますからね。
東京支部は、2018年から代表が3枠から2枠に減って狭き門となっています。
一体今年はどの学校が代表に選ばれるのでしょうか。
羽村市立羽村第一中学校吹奏楽部
羽村第一中学校吹奏楽部2021 紹介PV
実績
全国大会初出場は2000年。計12回全国大会に出場している伝統ある強豪校です。
そのうち金賞も6回獲得しています。
顧問が変わっても全国大会の舞台へ上がることができる生徒のパワーがすごい。
吹奏楽中学校部の東京支部で絶対的王者の存在です。
特徴
部員に「目標は何ですか?」と聞くと、「日本一です!」と必ず明るい大きな声で返ってきます。そのポジティブさが羽村市立羽村第一中学校の魅力ですね。
顧問の玉寄勝治先生は吹奏楽指導者として大変有名で、明星大学でも音楽監督を務めています。
玉寄先生の練習は歌うことを根本に置いていて、音感や音程感、ハーモニーを養います。
また、「中学生だからこのくらいでいい」という限界を作らないのがモットーだそうです。
のびのびした演奏はこうした先生の指導と子どもたちの努力で生まれているのですね。
今後の活躍にも注目していきましょう。
中央区立日本橋中学校吹奏楽部
第27回大江戸問屋祭り 日本橋中学校 吹奏楽部
実績
東京支部大会にはこれまで16回も出場しており、2019年には悲願の全国大会出場を達成しました。
もともとマーチングが有名な学校で、マーチングバンド全国大会で金賞。さらにマーチングステージ全国大会にも出場しています。
今年もその勢いそのままで、ますますと活躍が期待されます。
特徴
日本橋中学校吹奏楽部は、行動面と音楽面の両面を大切にしています。
協調性や考える力、そして周囲への配慮、礼儀やマナーなどを学びながら音楽を通して生きる力を育んでいる吹奏楽部です。
吹奏楽部のモットーである「心はひとつ」の言葉を胸に、自分たちの目標に向かって精一杯取り組んでいます。
コンクールだけではなく、東京ディズニーシーでドリーマーズ・オン・ステージに出演したり、NHK大河ドラマ「いだてん」出演するなど、エンターテイメント性も抜群です。
次はどんなエンターテイメントを見せてくれるのか、楽しみで目が離せませんね。
小平市立小平第三中学校吹奏楽部
青い水平線/チェザリーニ
実績
これまで全国大会に14回出場している超強豪校です。
今では吹奏楽指導者として活躍される中村睦郎先生が、まだ小平第三中学校の顧問だった2001年に、初めて全国大会の舞台に立ちました。
その後顧問の交代があっても安定して全国の舞台に上がり続けました。
そんな全国大会常連校となっていた小平第三中学校でしたが、2019年に大波乱が起き、まさかの代表を逃してしまいます。
今年はそのリベンジが期待されます。
特徴
全国大会常連校の小平第三中学校吹奏楽部ですが、コンクールに上がるメンバーは入学当初はほとんど全員が初心者であったとのこと。
楽譜が読めなかった一年生たちが、先生や先輩方と一緒に練習をして、8月には全員が舞台に乗っています。
大変効率の良い練習をしている証拠ですね。
また素晴らしい成績は夏のコンクールだけでなく、
毎年11月から行われるアンサンブルコンテストとソロコンテストに一、二年生が参加し、見事全日本アンサンブルコンテスト出場を果たしています。
「地域に根差すバンド」を心がけ、定期演奏会だけでなく、近隣の小学校や祭りなどのイベントでの演奏会にも積極的に参加しています。
下記ブログで部活の様子を知ることができるのでぜひご覧ください。
玉川学園中学部吹奏楽部
交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」/R.シュトラウス
実績
全国大会に14回出場している強豪校で、初出場はなんと1985年。非常に歴史の長い吹奏楽部ですね。
2018年に東京支部の代表校が3校から2校に減らされてからは、まだ代表に選ばれていません。実力は十分なので、今年は久しぶりに全国大会の舞台で演奏を聴きたいですね。
特徴
玉川学園吹奏楽部の活躍は世界規模です。
なんと世界最大といわれる音楽の祭典「ミッドウエスト・クリニック第70回大会」に出演しました。中学校部門での日本からの参加は初めてです。
世界中から1万5000もの人々が集まる音楽の祭典に出場するほどの実力を持つ玉川学園吹奏楽部。今年の吹奏楽コンクールでの活躍が楽しみです。
板橋区立赤塚第三中学校吹奏楽部
ルパン三世のテーマ -Lupin The Third-/大野雄二(シュピール室内合奏団との共演)
実績
全国大会には過去5回出場しています。
初出場は1975年と大変歴史のある学校です。
東京支部大会では昨年まで5年連続金賞を獲得しており、その実力はお墨付き。
いつ代表に選ばれてもおかしくない吹奏楽部です。
特徴
赤塚第三中学校は吹奏楽コンクールだけでなく、全日本マーチングコンテストにおいても3年連続金賞という快挙を成し遂げています。
地元のパレードへの参加も多く、マーチングが非常に有名な学校です
顧問の先生とともに、非常にエネルギーのあるパフォーマンスが特徴です。
吹奏楽コンクールでは毎年邦人作品を自由曲に選んでいます。
2014年からは高昌帥先生や真島俊夫先生など、人気の邦人作曲家の作品が演奏されています。
課題曲はもちろんマーチ曲。今年の演奏も楽しみです。
【要チェック】東京強豪校の過去の名演ベスト3
ここからは、過去の東京強豪校の名演を紹介します。
東京は昔から非常にレベルの高い支部として有名でした。
お互い切磋琢磨し合ってきたからこそ、生まれた名演。これぞ吹奏楽の素晴らしいところと言えるでしょう。
エルザの大聖堂への行列/ワーグナー 豊島区立第十中学校吹奏楽部
エルザの大聖堂への行列/ワーグナー
豊島区立第十中学校吹奏楽部は伝説の吹奏楽部です。
全国大会初出場は1962年。
当時の顧問、酒井正幸先生率いる第十中学はもはや向かうところ敵なしでした。
この演奏「エルザの大聖堂への行列」は1996年の演奏で、全国大会で第一位を獲得しました。
今でも多くの団体がこの曲を演奏しますが、誰もがこの第十中学の演奏が一番と言います。
正確なピッチ。豊かな音楽性。
誰もが唖然となった超名演です。
輝く銀嶺 イタリア奇想曲 豊島区立第十中学校吹奏楽部
こちらも豊島区立第十中学校吹奏楽部の演奏ですが、『別物』という意味で選ばせていただきました。
この演奏の時の顧問は磯和利先生で、もともと磯和利先生は板橋区立赤塚第三中学校を全国に導いた名指導者でした。(その時の演奏の音源は残念ながらアップされていませんでした。)
その後、豊島区立第十中学に異動し、見事名門を復活させました。
この演奏はそんな10年以上ぶりに全国大会に出場した1983年の演奏です。
惜しくもこの演奏は銀賞でしたが、演奏レベルは文句なしでした。
二つの交響的断章/ネリベル 練馬区立田柄中学校吹奏楽部
とにかくこの曲はかっこいいですね。
今ではこういった響きの作品は増えましたが、当時はまだ誰も聴いたことがありませんでした。
のちにネリベルサウンドと言われるこの作風はとても人気が高く、コンクールでも多くの団体が演奏しました。
そのなかでも田柄中学は卓越したテクニックで、1982年に中学生で初めての金賞を受賞しています。
まとめ
コンクールでの成績だけでなく、それぞれの学校に魅力があるので今後の活躍が非常に楽しみですね。
今回紹介した有名校だけでなく、まだまだ素晴らしい学校が東京にはたくさんあります。
もしかしたら今年はまた別の学校が全国大会の舞台に出場するかもしれません。
また名演が生まれそうな予感がします。今年も目が離せませんね。