オーケストラ曲の編曲と言えば四国支部ではないでしょうか。代表校が固定されているイメージが強い支部ですが、いま勢いのある学校も増えているため予測できません。今回は四国支部の中から、全国常連校の伊予高等学校吹奏楽部や、四国大会で3年連続金賞を受賞している北条高等学校吹奏楽部など、とくに注目度が高い強豪校を一挙解説します。
案内人
- 川島光将指揮者・作曲家・編曲家 元・中学高等学校音楽教員、吹奏楽顧問 吹奏楽指導者協会・認定指導員 音楽表現学会会員 K MUSIC GROUP代表 現在はオーケストラ、吹奏楽、合唱、声楽など音楽全般の指導にあたる。
目次
四国の吹奏楽強豪高校を一挙紹介!
四国支部は他の支部に比べ、代表校が固定されている印象がありますよね。演奏スタイルにも特徴があり、派手さはないが綺麗に仕上げる演奏が多いのも特徴です。
こういった支部ごとに特徴があるというのも面白いですね。
演奏スタイルや選曲にも注目しながら、四国支部の吹奏楽強豪校を紹介していきます。
愛媛県立伊予高等学校吹奏楽部
管弦楽のための舞踏詩「ラ・ヴァルス」/ラヴェル
実績
吹奏楽コンクール全国大会には26回出場。2004年からは3出制度以外の年は毎年出場している全国常連校です。
金賞はまだ一度しか受賞していないので、今年こそはと気合が入っているでしょう。
特徴
全国大会初出場の1984年から4人の顧問が赴任していますが、それぞれの時代で見事全国大会に出場しています。
顧問の先生が変わってしまうと、成績に大きな影響が出てしまうパターンが多いのですが、安定して良い成績を残せているのはそれだけ良い伝統が引き継がれているからでしょう。
2008年からはオーケストラの編曲作品を自由曲にしています。
正統派な曲だからこそ好成績を収めるのは難しい部分があるのは事実でしょう。
しかしその正統派な演奏こそが伊予高等学校吹奏楽部の持ち味です。
YouTube公式アカウントにて吹奏楽部の演奏や活動を見ることができますので、ぜひチェックしてみてください。最近流行りのリモート演奏なども聴けて、コロナ禍でも負けずに吹奏楽活動を続けている子どもたちの姿に感動させられます。
香川県立坂出高等学校吹奏楽部
交響詩「ローマの祭」より / O.レスピーギ
実績
2017年から3年連続で全国大会に出場しており、全国大会常連校として定着してきています。しかし四国支部代表は全国大会の舞台では、なぜか好成績を取りにくいという流れがあり全国大会に出場した5回全て銅賞となっています。
特徴
坂出高等学校吹奏楽部の特徴は、なんといっても個人演奏レベルの高さです。
その証拠に、今年まで全日本アンサンブルコンテストに8年連続で全国大会出場という快挙を成し遂げています。
また、自由曲は流行りの邦人作品を選ぶことが多く、高いテクニックを要求される曲となることが多いのも特徴のひとつです。
ちなみに坂出高等学校は合唱部も大変有名です。
実は、坂出高等学校には音楽科があり、専攻以外に全員が声楽・ピアノ・管弦楽器の三分野を学び、独奏だけでなくアンサンブル(独唱・合唱など)を通して幅広く音楽を勉強する環境が整っています。
そのため、個人演奏レベルも高くなっているのでしょう。
高松第一高等学校吹奏楽部
交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」/R.シュトラウス
実績
全国大会出場は計12回。初出場はなんと1975年という、四国支部の中で特に歴史のある吹奏楽部です。1968年以降、吹奏楽コンクール四国大会へ連続出場という偉業を成し遂げています。
特徴
1985年に創部された高松第一高等学校吹奏楽部。これだけ歴史のある部活ですから、卒業生の中にはプロの演奏家になった人も多いそうです。
全日本アンサンブルコンテスト全国大会にもこれまで20回出場し、2020年の全国大会では見事銀賞を受賞しています。
これだけ長く第一線で活躍している吹奏楽部は日本全国の中でも、珍しいのではないでしょうか。2017年からは惜しくも支部大会金賞で代表には選ばれていませんが、近いうちに必ず全国大会の舞台に戻ってくるでしょう。
TwitterやYouTubeで練習の様子や素晴らしい演奏を見ることができるのでぜひチェックしてみてください。
愛媛県立北条高等学校吹奏楽部
ルイ・ブルジョワの賛歌による変奏曲/クロード・T・スミス
実績
全国大会にはこれまでに5回出場。四国支部大会は16回出場しています。
2013年の全国大会出場以来、最近は全国の舞台に出ていませんが四国大会では3年連続金賞を受賞しており、いま勢いに乗っている強豪校です。
特徴
2021年8月5~6日に和歌山県民文化会館で開催された『第45回全国高等学校総合文化祭吹奏楽部門』に出場。総文祭で全国の舞台に立つというのは、大きな意味がありますね。いかに魅力的な吹奏楽部であるかがわかります。
また、第28回全日本高等学校選抜吹奏楽大会に出場したことでも話題になりました。
同校の野球応援や、ライトを使って演出された定期演奏会を開くなど、エンターテイメント性も優れているのが北条高等学校吹奏楽部の特徴です。
今後の活躍にも期待しましょう。
愛媛県立松山南高等学校 吹奏楽部
バレエ音楽「シルヴィア」より/ドリープ
実績
全国大会出場は1999年の一回のみですが、安定して四国支部大会に出場し、2017年からは連続で金賞を取り続けています。
特徴
2019年の第31回吹奏楽選抜大会に出場し、パフォーマンスが話題になりましたね。
高校生らしいハツラツとした笑顔と、キレのある動きが印象的な素晴らしい演奏です。
自由曲の選曲の特徴としては、オーケストラ曲の編曲ものが多い傾向があります。
あまり奇をてらった演奏ではなく、正統派でストレートな表現を得意としているようです。
課題曲も一時期はマーチ系のものを選ぶことが多かったのですが、2017、18年は課題曲Ⅲを選んでいます。
演奏面だけでなく、選曲面もどういった曲を選ぶか注目ですね。
まとめ
選曲について語りだすと好みが大きく分かれてしまうのですが、四国支部のようにオーケストラ曲の編曲モノを大切にするということはとても大事だと筆者は個人的に思います。
吹奏楽全国大会の歴史を自由曲から見ていくというのもとても面白いですよ。
さて四国支部は今年はどの学校が選ばれ、全国大会でそんな演奏をしてくれるのでしょうか。非常に楽しみです。