子供が教室に通える年齢になるまで、または子供のレッスンがない日に、自宅でピアノを教えたいと思う親御さんは多いはず。本格的にとまではいかなくとも、我が子の成長を見守りながら一緒に演奏を楽しみたいですよね。

そこで本記事では、子供へのピアノの教え方や、教えるうえで大切なことについてピアノ講師である筆者が解説していきます。

案内人

  • 海老野みほ4歳からエレクトーンを始め、高校生の時にピアノに転向。
    音楽系専門学校に進学し、クラシック・ジャズ・POPs・作曲・アレンジなど、様々なジャンルの知識を身につけながら演奏活動を行う。
    2011年から都内の音楽スクールのピアノ講師として勤務。

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「ピアノって楽しい!」と思ってもらうのが何より大事

自宅でピアノを教える際には、根を詰めすぎず、ゆるくやっていくのがおすすめです。
楽しめれば継続しやすくなりますし、その分上達も早まります。

何より大事にしたいのは、「ピアノって楽しい!」と子供に思ってもらうことです。「楽しくない」「つらい」といったマイナスな感想を持たれると、それがきっかけでピアノが嫌になり、練習を継続してくれなくなることもあるので注意しましょう。

「なぜピアノを教えるのか」を明確にしよう

ピアノを教える前に「なぜ教えるのか」、目的を明確にするのも大事です。

  • 脳の成長や発達を促したい
  • 集中力を付けさせたい
  • 自己表現の幅を広げてあげたい
  • 教室でのレッスンをもっと効果的にしたい

上記のような目的が多いと思います。
しかし、欲張らずに目的は1つに絞ることをおすすめします。あれもこれもと設定すると教える方向性がブレて、面白くない指導になってしまうためです。

「なんとなく」で子供の時間を奪うのではなく、明確な目的を持ってから教えていきましょう。

子供へのピアノの教え方~教える順番~

ここからは、実際にどのようなステップで教えていけばいいのかを見ていきましょう。

①ピアノ(鍵盤)に触ってみよう!

まずは難しく考えず、鍵盤に触ってみましょう。
「鍵盤を押すと音が出て、離すと音が止まる」という基本的な仕組みや、音の高低・大小などを体感してもらうわけです。

最初は手のひらで複数の鍵盤を弾くスタイル(ジャンジャンと叩くイメージ)で大丈夫。一つの指で一つの鍵盤を弾くのは、徐々にで構いません。

②「ドレミファソラシド」を言えるようになろう!

次は「ドレミファソラシド」を言えるようになること。
早口言葉ゲームのように練習すると、子供はあっという間に覚えます。

ここでも無理に覚えさせるのではなく、『楽しみながら自然に』を意識しましょう。

③鍵盤の位置と音を覚えよう!

3ステップ目は、鍵盤の位置と、それに対応した音を覚えること。

まずは「ド」からなのですが、情報ナシだとまず分かりません。まずは下図のように、黒鍵が2つのグループと3つのグループに分けましょう。それから、黒鍵2つのグループのすぐ左隣にある白い鍵盤がドだと教えると認識してもらいやすいはずです。

ドの位置が分かったら、そこから一つずつ右に移動しながら「ドレミファソラシド」と音階を弾いてみましょう。この段階では、指は1本でなくとも大丈夫です。とにかく鍵盤の位置と音を覚えてもらうのが狙いだからです。

また、すべて完璧に覚える必要はありません。「この鍵盤を弾くと◯の音が出る」というのが理解できれば、次に進みましょう。

好きな曲のメロディーを弾いてみよう!

次に、子供が好きな曲のメロディーを一緒に弾いてみましょう。親である自分自身も練習することで、子供の「自分もやりたい!」という気持ちを引き出すことができます。

見本を見せる→1フレーズ弾いてみさせる→褒める→もう1回弾くように促す→さらに褒める

上記の繰り返しが理想的ですね。一部分だけでも弾けるようになったら、Youtubeなどの動画音源に合わせたり親が伴奏をしたりするともっと楽しく練習できますよ。

ゆくゆくは、おうち発表会をやってみるのもおすすめです。曲の完成という区切りによって子供は達成感を得られ、高いモチベーションを維持できます。

《応用編》楽譜の読み方

急いで教える必要はありませんが、楽譜の読み書きも同時並行でやると子供の理解度が深まります。
その場合、教本を活用するのがおすすめ。イラスト付きで分かりやすいものや、書く練習もできる教本があるのでぜひ活用してみましょう。

子供へのピアノの教え方~コツやポイント~

次は、子供にピアノを教えるコツやポイントをお伝えします。

子供が好きな時に自由にピアノに触れる環境を作る

1つめは、子供がピアノを弾こうと思った時にすぐ触れる環境を作ること。

ピアノを教える対象の子供が3~4歳である場合、特定の時間に練習させるのは時期尚早でしょう。それよりも、遊びの一部にピアノを取り入れるのがベストです。

日々の積み重ねを大切にする

2つめは、日々の積み重ねを大切にすること。筆者がおすすめする日々の練習というのは、曲を弾いたり指を動かしたりするだけではありません。

  • テレビや動画に合わせて歌う→音程感覚の練習
  • 手遊びをする→指先のコントロールの練習
  • テーブルなどを叩く→リズム感の練習
  • ドレミを無造作に弾く→演奏練習

など、日常生活そのものが練習になり得ます。
「日々の積み重ね」と言っても、ムリにやるのは禁物です。何気ないことでOKなので、ゆるく継続していきましょう。

ご褒美シートを作るなどして視覚的に達成感を味わってもらうのも効果的ですよ。

完璧を求めない

3つめは、完璧を求めないこと。

ピアノ演奏は「間違えないのが正解」となってしまいがちですが、はじめの段階ではそんなものは不可能です。さらに、間違いを気にしてしまうと楽しくなくなってしまいます。

間違えずに通して弾けるようになったら曲の完成と考えるのではなく、多少のミスがあっても子供が楽しんで弾き切れたら完成としてあげましょう。

子供へのピアノの教え方~おすすめの教本~

ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

大手音楽メーカーYAMAHAから出版されている、おもちゃのピアノ付属の絵本です。光った鍵盤を押さえるだけで曲が弾けるお手軽さが魅力で、鍵盤の作りもしっかりしています。お試しでピアノに触れさせたい方は、この本から始めてみるのがおすすめです。

初心者でも弾ける!白鍵&右手だけで弾ける!ベストソングス125


子供から大人まで知っている曲がたっぷり載っている一冊。白い鍵盤だけで弾けて、音名のふりがなも付いており、楽譜の読み書きの練習にも有用です。

入門×入門 どちらもやさしい! おやこピアノれんだん


ピアノに慣れてきた頃、もしくは小学生以降にちょうどいい難易度の曲集です。親子で違うパートを弾いて連弾ができる点も魅力的。大人のパートも初心者向けアレンジがされているため、ブランクのある親御さんでも安心です。

本格的に教えたいならピアノ教室がおすすめ


ここまで自宅でピアノを教える方法をお伝えしましたが、上達という観点ではやはりピアノ教室がおすすめです。子供が1日1回ピアノに触れる習慣ができたら、教室に通わせるのを検討してみると良いでしょう。

先生や教室選びのポイントは、技術を伸ばすだけでなく演奏そのものを楽しめるように工夫してくれたり、生徒の良い部分を伸ばしてくれたりするかどうか。いくつかの教室で体験レッスンを受けてみて、相性や通いやすさ、月々の費用などを比べましょう。

また、親だけで進めるのではなく、子供の意見も聞くようにしてくださいね。

まとめ

今回は、子供へのピアノの教え方について、「楽しみながら」という点に重点を置きながら解説しました。

あせって上達を考えすぎずに、音楽を通じた親子のコミュニケーションとして一緒に楽しんでくださいね。