「ピアノは幼い頃にはじめないと上達しない」
「大人になってからじゃ上手く弾けるようにはなれない」
こう思っている大人の方は多いのではないでしょうか。たしかに、子供の脳は新しいことをスポンジのようにドンドン吸収できるため、大人より上達が早いのはあります。
しかし、ピアノの場合は「弾けるようになりたい」という意思の強さが何より重要です。これがあれば、大人になってから始めても十分に上達できます。
その理由や練習方法について、ピアノ講師でもある筆者が解説していきます。
案内人
- 古川友理名古屋芸術大学卒業。
4歳よりピアノを始め、伊藤京子、深谷直仁、奥村真の各氏に師事。
地元愛知県三河地方を中心に器楽、声楽、合唱伴奏者として活動する傍ら、島村楽器音楽教室等でピアノ講師として勤める。
目次
ピアノは大人になってから始めても上達する?
冒頭でお話した通り、ピアノは大人になってから始めても上達できます。
ピアノを始める理由として、子供の場合は多くが親御さんのご意向によるものです。一方、大人の場合は、目的はそれぞれでも「弾けるようになりたいから」というのがほとんど。誰かに促されてではなく、自分の意志で始めるわけです。
その分とても熱心に練習するので、めきめきと上達していきます。練習につぎ込む時間や頑張った分が「弾けるようになる」という目に見える結果として表れやすいのもポイント。
年齢は関係ありません。「大人になってからでも大丈夫かな」と心配されている方も、安心してぜひチャレンジしてみてください。
大人になってからのピアノ練習で大事なのは「意志の強さ」!
言うまでもなく、ピアノの上達には練習が不可欠です。
大人になってからはじめる方は「ピアノが好き」「ピアノを弾けるようになるのが憧れ」といった理由が多く、皆さんやる気は充分。でも残念ながら、やる気だけではピアノは上達しません。大切なのは、練習を継続する ”意志の強さ” です。
これが案外難しい。筋トレやウォーキングが続かない方は多くいますが、ピアノでも同じです。練習の途中で壁にあたり、なかなかクリアできない場合もあるでしょう。そんなときでも「絶対できるようになるぞ!」と、自分を奮い立たせる必要があります。
「あの人にピアノを披露するんだ!」などの具体的な目標を立てるのもおすすめです。
ピアノは慣れに依存する面も大きいですから、継続ができれば遅かれ早かれ上達し、好きな曲を気持ちよく弾きこなす理想の自分に近づくことができます。
大人からピアノを始めることの効果
大人になってピアノを始めることには、こんな効果があります。
- 脳の老化防止
- リラックス効果
- 記憶力向上
それぞれ詳しく解説していきます。
脳の老化防止
1つめの効果は、脳トレによる老化防止です。
指をたくさん動かす、右手と左手でそれぞれ違う動きをさせる、楽譜から多くの情報を読み取るなど、ピアノ演奏というのはけっこう忙しいもの。これらによって神経が刺激され、若々しい脳をキープしやすくなるのです。
記憶力や考える力、運動能力などは、どうしても加齢とともに落ちていきます。しかし脳は違う。ピアノを日頃から弾いて、楽しみながら老化防止に努めましょう。
リラックス
2つめの効果はリラックス。
ピアノを弾くと、脳内にドーパミンというホルモンが分泌され、快感や幸福感、意欲などを感じることが分かっています。これにより、体全体がリラックス状態へ導かれるのです。
ただ、面白いことにこのドーパミン、イヤイヤ弾いている時には分泌されないそう。やはり、楽しみながら意思を持ち続けるのが大事ですね。
記憶力向上
3つめの効果は記憶力向上。
ピアノの演奏というのは、実は脳の構造までもを劇的に変化させるのです。実際に、記憶力を司る脳の海馬という部分を発達させ、記憶力向上をもたらしてくれることが判明しています。
楽譜を見ながらの演奏でもこの効果は得られますが、音や強弱、表現を暗譜すると、よりいっそう記憶力を鍛えられますよ。
大人になってからのピアノは趣味にピッタリ!
前項でも紹介した通り、「ピアノを弾きたい」という気持ちが強い大人だからこそ、ピアノから得られる効果はたくさんあります。
まさに大人の習い事、大人の趣味にピッタリなんです!
毎日自宅で楽しむのも良し、演奏会や発表会など目標を定めて取り組むのも良し。
大人になってから始めても遅いなんて諦めるのはもったいない!
今からでもぜひ挑戦してみましょう。
大人からのピアノ~独学での練習方法~
独学でピアノを練習するメリットとして以下のことが挙げられます。
- お金がかからない
- 自分のペースで練習できる
レッスンに通う勇気が持てないという方は、まずここから始めてみましょう。
ピアノ(または電子ピアノ)がご自宅に届いたら、次にご紹介する方法を試してみてくださいね。
まずはドレミが書いてある楽譜から
まずは、やっぱり楽譜を買って練習してみましょう。初心者の楽譜選びで大事なポイントは以下の3つ。
- 一つひとつの曲が半ページくらいで終わる
- ドレミが書いてある
- 「はじめての」「初心者の」といった教本
大人の生徒さんで「楽譜を読める気がしないんです……」という方がよくいらっしゃいます。そういう方の購入した楽譜を見てみると、中級以上の難しい内容であることが多いんですよね。
ストレートに言うと、背伸びしてしまっているのです。これが原因で挫折するのはもったいないので、素直に初心者向けを選びましょう。弾ける楽しみを感じられる方が、確実に上達が早くなります。
着実派の方は、教科書タイプの教本で指使いから正確に
ピアノの基本から身につけていきたい方は、弾くときの姿勢や指使いまで丁寧に書いてある教本を選ぶのがおすすめです。
「包丁を使う時は猫の手で」とよく言われますよね。ピアノも手の形を整えると指を動かしやすくなりますし、美しい音で弾けるようになります。弾くたびに指使いが違ったり、手がひっくり返ったりするような指順で弾いていると、音にバラつきが生まれ、リズムもキープできません。
こういうのは一度変なクセが付くと矯正に時間がかかるため、最初の段階できっちり固めてしまうのが良いでしょう。
感覚派の方は、動画を参考にしよう
初心者でも30分で両手で弾ける!ピアノレッスン基礎の基礎「ベートーヴェン第九合唱」【ピアノ/入門/基礎/ソルフェージュ】
楽譜や教本で勉強のように練習するのは苦手という方は、YouTubeで配信されている初心者向けの動画を参考にするのがおすすめ。手元が映っている動画なら自分との比較がしやすいですし、馴染みのある曲であれば感覚を掴みやすいでしょう。
生活に負担なく楽しむのを第一に、独学の練習方法を選択してみてください。
大人からのピアノ~教室の探し方~
正しい弾き方を身につけ、効率良く上達するには、やはりレッスンを受けるのが理想です。先生の一言で劇的に弾けるようになるといったことは珍しくありませんし、各教室で開かれる発表会やおさらい会はモチベーションになります。
レッスンというと、今までは教室に通うのが主流でした。しかし、コロナウイルスの影響によってピアノレッスンの形も大きく変わり、現在はオンラインでもピアノを習えるようになっています。
では、オンライン・オフラインそれぞれのメリットや教室探しのポイントを解説しますね。
オンラインレッスン
オンラインレッスンでは、ZoomやSkypeなどの通話ツールを使い、自宅と先生の教室をつないでレッスンを行います。
教室に通う時間を省ける、遠方からでも受講できるといった点が大きなメリットです。また、教室でのレッスンでは指導できない、家で弾くときのイスの高さや姿勢などもチェックできます。
通信環境を整備する必要はあるものの、手軽さは大きな魅力ですね。「環境が違うと緊張する」という方にもおすすめですよ。
オンラインレッスンを探すには、1レッスンごとに購入する形のこちらのサイトがおすすめ。
オンラインでストレスなくレッスンを受けるためには、環境を整えることも大切です。
Zoomの設定について、下記記事も参考にしてみてくださいね。
オフラインの教室
教室で受けるレッスンの醍醐味は、先生とマンツーマンで指導を受けられること。
先生の手本を生で聴けますし、映像では伝えきれない細やかな指導までしてもらえます。自宅には電子ピアノかアップライトピアノしか置けない方も多いと思いますが、教室通いならグランドピアノを弾ける可能性もあり、テンションが上がりますよね。
大人の方がピアノ教室を選ぶポイントは次の3つ。
- レッスン回数を柔軟に対応してもらえるか
- 急用の場合振替が可能か
- 通いやすい場所にあるか
- 先生との相性
継続してピアノの上達を目指すのであれば、先生との相性は特に大切。なるべく無料体験レッスンのあるところを選び、一度受講してみてください。「何か違うな」と感じたら、遠慮なく別の教室を探しましょう。
【おすすめの教室:椿音楽学校】
全国に200箇所以上のスタジオを構え、有名音大出身の講師も多数抱える音楽教室です。レッスンはすべてマンツーマンなので、自分の習熟度に合った指導を受けられます。オンラインレッスンも実施しているので、興味のある方はぜひ下記リンクからサービス詳細をチェックしてみてください。
大人からピアノを始める人におすすめの練習曲
初めてピアノや楽譜に触れる方だと、曲の難易度や練習しやすさを判断するのは難しいですよね。
ここではピアノ講師が選ぶ、初心者におすすめのクラシック曲を3つご紹介します。
メヌエットト長調/J.S バッハ
メヌエット ト長調 BWV.Anh.114 / Johann Sebastian Bach : ピアノ(ソロ) / 初級
バッハの『メヌエット ト長調』は、初心者向けの教本に必ずといっていいほど掲載されているクラシック曲。ゆったりとしたテンポ、同じリズムの繰り返し、覚えやすいメロディーなどが特徴で、初めて取り組む曲にうってつけです。
弾けるようになってきたら装飾音も加えて、バロック時代のチェンバロの雰囲気を味わいながら楽しむのも良いですね。
カノン/パッヘルベル
パッヘルベルのカノン / Johann Pachelbel : ピアノ(ソロ) / 初級
続いて紹介するのは、パッヘルベル作曲の『カノン』。同じコード進行を反復しながらゆったりと進んでいき、左手が同じ動きを繰り返すためとても弾きやすい曲です。
ピアノ初心者にとって、左右の手が別々の動きをするというのが最も難しさを感じる部分でしょう。カノンのように、どちらかの手の動きに集中できる曲を選ぶと、この点に躓くことなく楽しめますよ。
エリーゼのために/ベートーヴェン
エリーゼのために / Ludwig van Beethoven : ピアノ(ソロ) / 初級
超有名曲『エリーゼのために』です。
上記の2つより少し難易度は上がりますが、繰り返しの多い曲なので、テーマをクリアできれば曲の半分は仕上がったも同然。強弱やテンポの緩急を付けると、本格的な演奏を楽しめます。
大人になってからピアノを始める人におすすめの教本
大人向けのピアノ教本は数多く出版されています。しかし、初心者向けと書いてあるものの割と難しく感じるものも……。
はじめの教材で難しさを感じてしまうと、せっかくのピアノ熱も半減してしまいます。そこで、大人になってからピアノを始める方へ本当におすすめしたい教本を3冊紹介します。
音符の読み方からはじめる 大人のためのピアノ悠々塾 入門編/ヤマハ
初めて音符を読む方でも安心して取り組めるよう、鍵盤の位置や指使い、音名が丁寧に書き込まれています。収録曲は『きらきら星』や『喜びの歌』といった有名どころばかり。耳慣れした曲で、無理なく両手奏に慣れていけるよう工夫されています。
ピアノの教科書/ヤマハ
大人向けの教本は、単色で文字量の多いものが目立ちますが、この本はオールカラーとなっており、さらにQRコードを読み取ると動画視聴も可能。視覚聴覚両方から楽しくピアノを学べる内容となっています。
コードについても解説されているので「弾き語りを楽しみたい」という方にもおすすめ。
おとなのためのピアノ教本/ドレミ楽譜出版
楽譜の読み方→右手の練習→左手の練習→両手奏と順序立って進んでいく、ピアノ初心者に優しい教本です。曲のジャンルはクラシック・童謡・ポピュラーとさまざまで、飽きることなく最後まで進めていけます。
CDも付いており、特に独学でピアノにチャレンジしたい方にぴったり。ほかの教本で長続きしなかった方にもおすすめしたい一冊です。
大人からのピアノ練習には「flowkey(フローキー)」が便利!
楽譜、教本、動画のみならず、昨今ではピアノの練習に「アプリ」という選択肢もできています。
代表的なのは「flowkey」というサービス。1,000曲以上の楽曲から好みのものを選んで練習したり、レッスンコースでピアノの基礎から勉強したりできるのが特徴です。演奏補助機能やお手本動画も実装されていて、楽譜+教本+動画をいっぺんに体験できます。
flowkeyについては、詳細を下の記事にて解説していますので、ぜひ読んでみてください。
まとめ
ピアノを始めるのに年齢は関係ありません。楽しむ心と根気さえあれば、ピアノは何歳からだって上達できます。独学、オンラインレッスン、ピアノ教室など学び方も自由です。
自分のライフスタイルに合わせた練習方法を取り入れて、ピアノのある日常を楽しみましょう!