「音大生」と聞くと裕福やお金持ちといったイメージがあるかもしれません。しかし、イメージ通りの音大生は一部に限られ、さまざまな奨学金制度やローンを使っている学生も数多くいます。
そこで今回は、音楽大学への進学を考えている方のために、全国の音大学費をランキング形式で解説します!リッチな音大からコスパがよく充実したカリキュラムの音大まで、全国にはさまざまな学校がありますので、ぜひ参考にしてください。
案内人
- 林和香東京都出身。某楽譜出版社で働く編集者。
3歳からクラシックピアノ、15歳から声楽を始める。国立音楽大学(歌曲ソリストコース)卒業、二期会オペラ研修所本科修了、桐朋学園大学大学院(歌曲)修了。
目次
国立音楽大学と私立音楽大学の4年間の学費総額を比較
音楽が学べる国立大学といえば、最高峰は東京藝術大学音楽学部でしょう。授業料は年間約65万円で、4年間で260万円程度です。
一方、首都圏にある私立大学の授業料平均はおおよそ年間150万円で、4年間で500〜700万円となります。
音楽大学 |
1年間の学費総額 |
4年間の学費総額 |
国立 |
約65万円 |
約260万円 |
私立 |
約150万円 |
約500~700万円 |
音大学費の内訳
学費の内訳は大きく分けて、入学金、授業料、施設代、保険料の4つです。
施設代は主にコンサートホールや防音のレッスン室、楽器の維持などの管理のために必要になります。そのほかにも、大学によっては同窓会費や実習費などもかかります。
学費以外に必要な費用
大学の学費以外にも、音楽を学ぶために必要な費用があります。レッスン代、練習室のレンタル代、演奏会費やコンクール出場費などは常にコストを要するところです。
また、楽譜や小物類の購入のほか、ワンランク上の楽器購入になると多額の出費をともないます。他にも、楽器演奏可のアパートを借りる場合は相場よりも高い家賃が必要です。
音大の学費が高い理由は個人レッスンにあり
一人で大人数に対して授業を行う一般大学と違い、音大では1対1の個人レッスンが授業のメインとなっています。プロの演奏家や一流の指導者からレッスンを受けられる環境が整っているのは音大生の特権とも言えますが、やはりその分授業料も高くつくのです。
さらには、コンサートホールやレッスン用防音室などといった施設全体にかかる設備費も、学費が高額になる要因のひとつです。
首都圏10音大の年間学費ランキング(初年度学費総額)
気になる学費をランキングでご紹介しましょう。このランキングは初年度にかかる費用(入学金、授業料、施設代、保険料など)を比較したもので、大学の公式ページで公開されている金額をもとにしています。
順位 |
大学名 |
初年度費用総額 (入学金※総額から抜粋) |
10位 |
東京藝術大学音楽学部 |
¥1,206,020(¥338,400) |
9位 |
日本大学芸術学部音楽学科 |
¥1,920,000(¥260,000) |
8位 |
東邦音楽大学 |
¥2,050,000(¥250,000) |
7位 |
玉川大学芸術学部 |
¥2,058,430(¥250,000) ※芸術学部:音楽学科 |
6位 |
武蔵野音楽大学 |
¥2,220,000(¥150,000) ※演奏学科:器楽・声楽コース |
5位 |
洗足学園音楽大学 |
¥2,262,650(¥200,000) |
4位 |
国立音楽大学 |
¥2,267,000(¥200,000) |
3位 |
昭和音楽大学 |
¥2,275,500(¥200,000) |
2位 |
東京音楽大学 |
¥2,312,000(¥300,000) ※声楽、楽器、作曲指揮、等専攻 |
1位 |
桐朋学園大学 |
¥2,606,600(¥600,000) |
注目大学①【東京藝術大学】
東京藝術大学は音楽を専門とする学部を唯一有する国立大学です。その歴史は古く、120年に至ります。全国からトップレベルの学生が集まり、国内外で活躍する優れた演奏家を多数輩出してきました。国立大学のため学費は安いですが、毎年志願者が多く倍率が高いため狭き門です。
注目大学②【東京音楽大学】
都心に近く、最先端の設備で学生生活を送りたい方におすすめなのが東京音楽大学です。アクセスのよい池袋キャンパスに加え、2019年には中目黒・代官山キャンパスが開校しました。おしゃれなカフェが大学内にあり、教室もきれいなので、充実した音大生活がかなうでしょう。
注目大学③【武蔵野音楽大学】
好立地で豊かな空間を有した武蔵野音楽大学江古田新キャンパス。コンサートホールの多さは国内屈指で、オペラやオーケストラから室内楽まで幅広くの演奏会が行われています。入学金はランキングの中でもっとも低い15万円です。初年度費用総額でも6位と、コスパのよさが特徴です。
首都圏で最も安い学費の音大ベスト3
上記のランキング以外で、比較的学費の安い首都圏の大学を3つご紹介します。
1位:お茶の水女子大学(文教育学部|芸術・表現行動学科|音楽表現コース)
国内でも数少ない、総合大学の中で音楽を専門的に学べる大学です。たくさんの学部学科があるため、さまざまな学生と交流できるのも魅力のひとつでしょう。国立大学のため、学費は東京藝術大学と同じ120万円ほどです。
2位:桜美林大学(芸術文化学群|音楽専修)
1・2年次は複数の専門を選択し、3・4年次で専門を絞って深めていきます。音楽を幅広く学べるのが特徴で、オペラから賛美歌や日本の伝統音楽も学べます。さらに「ハンドベル」「ゴスペル」の授業は全国で桜美林大学にしかありません。学費は年額約150万円です。
3位:フェリス女学院大学(音楽学部)
少人数のアットホームな環境で他学部の授業を受けることもできるため、多角的な視点を持った学生生活を楽しめます。入試に音楽科目がなく、音楽が好きな気持ちがあれば挑戦できる大学です。学費は年額約150万円で、オプションで個人レッスンを受けることもできます。
関西の音大学費ランキング
ここからは、関西の音大について紹介していきます。
まずは、学費ランキングから見ていきましょう。
順位 |
大学名 |
初年度費用総額 (入学金※総額から抜粋) |
5位 |
京都市立芸術大学音楽学部 |
¥1,034,800(市外出身者¥482,000) ※市内出身者入学金¥282,000 |
4位 |
大阪音楽大学 |
¥1,600,000(¥200,000) |
3位 |
武庫川女子大学音楽学部 |
¥1,914,700(¥200,000) ※音楽学部:演奏学科 |
2位 |
相愛大学音楽学部 |
¥1,987,400(¥300,000) ※演奏コース |
1位 |
神戸女学院大学音楽学部 |
¥2,234,800(¥200,000) ※音楽学部 |
注目大学④【大阪音楽大学】
関西で最も大きな音大である大阪音楽大学。クラシックからポピュラー、ジャズ、邦楽、ビジネスまで幅広く対応している歴史の長い大学です。音楽専門の教育機関として、四年制大学、短期大学、大学院まで擁しています。
注目大学⑤【京都市立芸術大学】
創立140年を超える京都市立芸術大学。一学年は200名程度で、美術学部と音楽学部に分かれています。入試倍率が高く狭き門と言われていますが、少数精鋭の環境を好む方にはおすすめです。2023年秋には京都駅近くへと移転するので新しい施設にも注目です。
東京・関西以外の人気音大学費
比較的規模の大きい音楽大学は東京や大阪、京都に集まっていますが、実は探してみると音楽を学べる大学は全国にあります。
岡山県【くらしき作陽大学音楽学部】
岡山県倉敷市にある自然豊かなキャンパスが特徴のくらしき作陽大学音楽学部。海外の音楽院の指導者によるレッスンから、教員採用試験対策など、音楽を活かす進路を選ぶことができます。入学金は25万円、学費はコースによって異なりますがおおよそ年額160〜185万円です。
広島県【エリザベト音楽大学】
中四国九州で唯一の音楽大学です。演奏専攻から作曲、音楽学、アートマネジメント、幼児教育など広いプログラムが用意されています。一人ひとりのレベルに合わせて学びの深さを選択できる「カテゴリー制」も魅力です。入学金は30万円、学費は年額約160万円です。
学費が払えない家庭に嬉しい奨学金や学費免除制度について
「音大で音楽を学びたいけれど、経済的に厳しい…」という方のために、負担を軽くできる制度をいくつかご紹介します。
学費・入学金免除制度
多くの大学で学費の全額や一部を免除する制度を設けています。国立音楽大学では、「特別給費奨学生」として入学すると4年間の学費が免除され、さらにレッスン時間が2倍となったり特別レッスン受講などの特典を受けられます。
また、大学によっては入学金に関する制度があります。武蔵野音楽大学では、付属校に兄弟姉妹が在籍している場合、一人分の入学金を免除しています。東京音楽大学では、入学金相当額の奨学金給付があります。大学ごとにさまざまな制度がありますので、資料を確認してみましょう。
奨学金
日本学生支援機構奨学金は多くの大学生が利用している制度です。大学によっては成績優秀者に向けた外部団体による奨学金も設けられ、「明治安田クオリティオブライフ文化財団」「よんでん文化振興財団」「青山音楽財団」などがあります。
教育ローン
要件を満たす方は日本政策金融公庫の「国の教育ローン」を申し込むことができます。学費や受験費用、アパート家賃などの教育に必要な資金を学生一人につき350万円以内で融資する制度です。また、銀行の学費ローンは低金利で借りれるため、チェックしておきましょう。
まとめ
音大で学びたい人にとって避けては通れない『学費どうしよう』問題。しかし、よく調べるとコスパの良い大学もあるし、奨学制度を使って負担を軽くすることも可能であることがおわかりいただけたかと思います。
奨学金の返済計画、将来的な収入などもしっかり考えなければなりませんが、まずは音楽の勉強に打ち込める大学生活を送ることが一番大切です。本記事があなたの素晴らしい音大ライフの手助けになれば幸いです。