世界中から新進気鋭の若手音楽家が参加する「ジュネーヴ国際音楽コンクール」。国際的に有名な大会で、ピアノ・声楽・弦楽器・管楽器・作曲といった多岐にわたる審査部門を有する点がユニークです。
ただ、毎回すべての部門が開催されるわけではありません。2023年には、フルートと弦楽四重奏団の2部門が開催されることになっています。
本記事では2023年大会について、概要や日程、課題曲などを紹介します。
目次
ジュネーヴ国際音楽コンクールとは?
ジュネーヴ国際音楽コンクールは、才能ある若い音楽家の国際的なキャリアを支えることを目的とした音楽コンクールです。世界国際音楽連盟の本部があるスイス・ジュネーヴにて1939年から開催されていて、これまでに器楽、声楽、指揮など、多数の部門で審査が行われてきました。
近年はピアノ、フルート、クラリネット、チェロ、ヴィオラ、弦楽四重奏、声楽、パーカッションの8部門を年ごとに交代で、また、作曲部門も2年ごとに開催しています。
コンクールの受賞者は、2年間にわたってコンサートツアー提供といったサポートを受けることができます。この点から、ジュネーヴ国際音楽コンクールは、若手演奏家にとって名声を得るきっかけとなる重要な大会なのです。
大会のレベル
ジュネーヴ国際音楽コンクールは、世界三大コンクールに匹敵する知名度と権威性を持つ大会です。
世界の才能ある音楽家が何百人もエントリーする中、セミファイナルへ進めるのは数十名程度。さらに、ファイナルにおいて受賞に適した演奏者が見つからない場合は上位該当なしとなるほど、非常に厳格な審査が行われています。
過去の主な日本人入賞者
ここでは、近年開催されたジュネーヴ国際音楽コンクールで入賞を果たした日本の音楽家をピックアップして紹介します!
2022年ピアノ部門第3位:五十嵐薫子
1994年生。6歳からピアノをはじめ、2015年に第84回日本音楽コンクール第3位および三宅賞を受賞するなど、数々のコンクールで実力を示し、2017年には桐朋学園大学を首席で卒業。その後、2019年日本ショパンコンクール第3位、2021年ショパン国際ピアノコンクール本大会出場といった輝かしい活躍を経て、2022年のジュネーヴ国際音楽コンクールのピアノ部門で見事3位入賞を果たしました。
2021年チェロ部門優勝:上野通明
1995年生。5歳でチェロをはじめ、幼少期をスペインで過ごした後、2004年に帰国して桐朋学園大学音楽学部ソリスト・ディプロマコースへ進学。13歳となった2009年に若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール(International Tchaikovsky Competition for Young Musicians)で、日本人初優勝の快挙を達成。以降も数々のコンクールで優勝・入賞を果たし、2021年ジュネーヴ国際音楽コンクールのチェロ部門で、日本人として初優勝かつYoung Audience Prizeを含む3つの特別賞を受賞しました。
2023年にはフルート部門と弦楽四重奏部門が開催!
審査部門が多岐にわたることで知られる、ジュネーヴ国際音楽コンクール。2023年には、フルート部門と弦楽四重奏団部門が開催されます。
1993年11月4日以降に生まれた人が対象で、今回も将来を期待される若手音楽家が集まり、世界中のクラシックファンから注目を集めることでしょう。
ジュネーヴ国際音楽コンクール2023の流れ
大会の流れ
フルート部門と弦楽四重奏部門で、審査の流れは共通しています。また、一部の審査段階では進出可能な人数が公表されています。具体的な流れと各審査に進出できる人数は下記の通り。
審査段階 |
フルート部門 |
弦楽四重奏部門 |
予備予選(ビデオ・レコーディング) |
ー |
ー |
オンラインリサイタル |
最大40名 |
最大16組 |
セミファイナル(3部構成) |
最大8名 |
最大6組 |
ファイナル |
非公表 |
非公表 |
ジュネーヴ国際音楽コンクール2023の日程と会場
今大会では、予備予選とオンラインリサイタルを経て、セミファイナルから会場審査がはじまります。各部門のセミファイナルおよびファイナルの審査日程と会場は以下の通りです。
◆フルート部門
セミファイナル |
2023年10月30~11月2日 |
ジュネーヴ音楽院 フランツ・リストホール |
ファイナル |
2023年11月4日 |
ヴィクトリアホール (ジュネーヴ) |
◆弦楽四重奏部門
セミファイナル |
2023年10月24~27日 |
ジュネーヴ音楽院 フランツ・リストホール |
ファイナル |
2023年10月29日 |
ヴィクトリアホール (ジュネーヴ) |
ジュネーヴ国際音楽コンクール2023の課題曲
フルート部門
予備予選(ビデオ・レコーディング) <20-30 分> |
1.テレマン「無伴奏フルートのためのファンタジー」から1つ選択 |
2.次のリストから、フルート独奏のための現代作品を1つ選択
・G.ベンジャミン「飛行(Flight)」(1979) ・E.カーター「Scrivo in vento」(1991) ・H.ホリガー「(é)cri(t)」(2006) ・細川俊夫「垂直の歌Ⅰ(Vertical Song 1)」(1995) ・P.ユレル「エオリア」(1981) ・K.サーリアホ「Laconisme de l’aile」(1982) ・棚田文紀「独奏フルートのためのF」(1991) |
3.ピアノ伴奏付きの作品1つを自由に選択 ※一部の楽章のみの演奏も可 ※音楽的個性を表現できる曲を選択すること |
オンラインリサイタル <45分> |
1.F.マルタン「フルートとピアノのためのバラード」 |
2.次のリストから、フルートとピアノのためのソナタを1つ選択
・J.F.バーネット「グランド・ソナタ(Op.41)」 ・M.ボニス「フルート・ソナタ」 ・P.ブーレーズ「フルートとピアノのためのソナチネ」 ・M.オルバースレーベン「ファンタジー・ソナタ(Op.17)」 ・S.プロコフィエフ「フルート・ソナタ」 ・C.ライネッケ「フルート・ソナタ ウンディーネ」 ・E.シュルホフ「フルート・ソナタ」 ・C.M.ヴィドール「組曲(Op.34)」 |
3.次のリストから、フルート独奏のための現代作品を1つ選択
・B.フラー「Melodia」(2020) ・M.ジャレル「Le point est la source de tout」(2020) ・L.リム「Bioluminescence」(2019) ・P.マヌリ「Soubresaut」(2020) ・M.ピンチャー「Beyond」(2013) ・J.ヴィトマン「小組曲」(2016) |
4.自由曲 |
<注意>リサイタルは、ステージへの出入りと最終的な休止を含めて45分とする
セミファイナル(3部構成) |
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I. ソロリサイタル <50-60分> |
複数の自由曲によるコンサート形式 ※プログラムノートによる曲目解説が必要 ※フルート独奏、ピアノ伴奏付きの作品が演奏可能 |
Ⅱ. 室内楽 リサイタル <約45分> |
1.次のリストから、ハープシコードを使用したバロック ソナタ を1つ選択
・J.S.バッハ「フルート・ソナタ ホ短調(BWV1034)」 ・J.S.バッハ「フルート・ソナタ ホ長調(BWV1035)」 ・C.P.E.バッハ「フルート・ソナタ ホ長調(H506/Wq84)」 ・C.P.E.バッハ「フルート・ソナタ ニ長調(H505/Wq83)」 ・W.F.バッハ「フルート・ソナタ ホ短調(FK32)」 ・M.ブラヴェ「フルート・ソナタ第2番<ラ・ヴィヴレ>ニ短調(Op.2)」 ・M.ブラヴェ「フルート・ソナタ第4番<ルマーニュ>ト短調(Op.2)」 ・J.M.ルクレール「ソナタ第2番 ホ短調(Op.9)」 ・J.M.ルクレール「ソナタ第7番 ト長調(Op.9)」 ・G.B.プラッティ「フルート・ソナタ第6番 ト長調(Op.3)」 |
2.A.ジョリヴェ「リノスの歌(フルート、弦楽三重奏、ハープのための)」 |
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3.K.ジュルラのコンクール委嘱作品(フルート、クラリネット、ピアノのための) |
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III. アーティスティック・プロジェクトの提案 |
コンクール入賞後の2年間に実施したいプロジェクトの提案
※リサイタルプログラムに限らず、映像・ダンスなど他の芸術表現を含むものも可。 ※独創性があり演奏者の個性を表現していること、リサイタルで実現する価値のある意欲的な内容であることなどが求められる。 |
ファイナル(オーケストラとの共演) |
1.モーツァルト「アンダンテ ハ長調(K.315)」 |
2.次のリストから協奏曲を1つ選択
・M.A.ダルバヴィ「フルート協奏曲」 ・J.イベール「フルート協奏曲」 ・C.ニールセン「フルート協奏曲」 |
弦楽四重奏部門
予備予選(ビデオ・レコーディング) <約30 分> |
1.ハイドン作曲の弦楽四重奏曲から2つの対照的な楽章を選択 |
2.次の作曲家のいずれかによる弦楽四重奏曲から2つの対照的な楽章を選択
・ブラームス ・F.メンデルスゾーン ・シューベルト ・R.シューマン |
<注意>演奏する楽章は自由に選択でき、必ずしも連続している必要はない
オンラインリサイタル <最大50分> |
1.モーツァルトまたはハイドン作曲の弦楽四重奏曲から1つ選択 |
2.次のリストから、20世紀に作曲された弦楽四重奏曲を1つ選択
・H.デュティユー「弦楽四重奏曲<夜はかくの如し(Ainsi la nuit)>」 ・ヤナーチェク「弦楽四重奏曲第1番」または「弦楽四重奏曲第2番」 ・G.クルターグ「弦楽四重奏曲(Op.1)」 ・G.リゲティ「弦楽四重奏曲第1番」または「弦楽四重奏曲第2番」 ・ラヴェル「弦楽四重奏曲 ヘ長調」 ・ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲第4番」または「弦楽四重奏曲第6番」または「弦楽四重奏曲第8番」 |
<注意>オンラインリサイタルは、入退場を含めて50分以内とする
セミファイナル(3部構成) |
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I. リサイタル1 <最大90分> |
・バルトーク作曲の弦楽四重奏曲から1つ選択 ※残りのプログラムは自由選択 |
Ⅱ. リサイタル2 <最大75分> |
1.ベートーヴェン作曲の弦楽四重奏曲から1つ選択 |
2.次のリストから、現代作品を1つ選択 ・ベリオ「シンクロニエ(弦楽四重奏のための)」(1963-64) ・E.カーター「弦楽四重奏曲第5番」(1994-95) ・F.ドナトーニ「La Souris sans sourire」(1988) ・P.デュサパン「弦楽四重奏曲第5番」(2004-05) ・J.ハーヴェイ「弦楽四重奏曲第2番」(1988) ・H.W.ヘンツェ「弦楽四重奏曲第5番」(1976) ・W.リーム「弦楽四重奏曲第13番(2011) ・R.ソーンダース「フレッチ」(2012) ・S.シャリーノ「Sei quartetti brevi」(1967-92) |
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3.自由曲 |
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III. アーティスティック・プロジェクトの提案 |
コンクール入賞後の2年間に実施したいプロジェクトの提案 ※リサイタルプログラムに限らず、映像・ダンスなど他の芸術表現を含むものも可。 ※独創性があり団体の個性を表現していること、リサイタルで実現する価値のある意欲的な内容であることなどが求められる。 |
ファイナル<最大45分> |
任意の弦楽四重奏曲(1曲) |
ジュネーヴ国際音楽コンクール2023のチケット情報
ジュネーヴ国際音楽コンクール2023のチケットに関する情報はまだ発表されていません。
今後情報が更新される可能性が高いので、チケット情報が気になる人はジュネーヴ国際音楽コンクールの公式サイトをご確認ください。
まとめ
将来の活躍が期待される若手音楽家が集まるジュネーヴ国際音楽コンクールは、音楽を学ぶ人だけでなく、クラシック音楽ファンにとっても注目のイベント。ここでの入賞をきっかけに、世界に名前を知られる音楽家が誕生する可能性もあるので結果が楽しみですね。