課題曲選びは毎年頭を悩ませますよね。
自分たちに合う曲は何か。
参考音源と実際に演奏するときの違いは何か。色々と考えないといけません。
今回は2023年課題曲の中からⅡ番について深く掘り下げて考察していきます。
かなり個性的な曲なので、強く印象に残っている方も多いでしょう。
演奏ポイントも解説しているのでぜひ最後までご覧ください!
案内人
- 川島光将指揮者・作曲家・編曲家 元・中学高等学校音楽教員、吹奏楽顧問 吹奏楽指導者協会・認定指導員 音楽表現学会会員 K MUSIC GROUP代表 現在はオーケストラ、吹奏楽、合唱、声楽など音楽全般の指導にあたる。
目次
2023年吹奏楽コンクール課題曲Ⅱ【ポロネーズとアリア~吹奏楽のために~】
「ポロネーズ」は、ポーランドの国民的舞踏で、中庸な3拍子を意味し、「アリア」は、オペラ、オラトリオ、カンタータなどの中の旋律的な独奏曲を本来は意味します。
これらが合わさることにより誕生した個性的な曲です。
作曲者:宮下秀樹(みやした・ひでき)
演奏時間:約4分30秒
作曲家・宮下秀樹について
宮下氏は、現役の中学校教師です。激務の中、このような曲が書けるなんてすごいですよね。
しかも課題曲を作曲するのはこれが2回目。吹奏楽のための「エール・マーチ」が2020(2021)年度の課題曲になったばかりです。
これほど最短で再度、課題曲に選ばれた作曲家はいないのではないでしょうか。
演奏のポイント
先述した通り、この曲は「ポロネーズ」と「アリア」が合わさった曲です。作曲者自身は、小編成でも大編成でも演奏できるように書いたとおっしゃっていますが、どちらにせよかなり難しい曲と言えます。
タンギングが苦手な奏者がいるバンドにとっては鬼門でしょう。作曲者のやりたい音楽や意図は明確なので、それが実現できるバンドはぜひ挑戦してほしいです!
出だしからA
出だしは曲の紹介のような場所になっています。ホルン・ユーフォニアム奏者にとっては、緊張の一瞬ですね。アーティキュレーションを正確に、2拍目の裏の音の出だしをクリアにしましょう。そのために出だしの音が長くならないように注意です。
3小節目、4小節目とクラリネットにタンギングが出てきます。
他の楽器もそうですがfだからとタンギングを強く大きく演奏しようとすると、重くなり浮いて聴こえてしまうので要注意です。ここはスネアドラムに乗る感じで演奏しましょう。
AからE
Aのアウフタクトのところにsf(その音を強調して)という楽語がありますが、実際にはAの頭の音とセットですのでアウフタクトだけが強くならないように注意してください。
Aからはポロネーズです。3拍子のリズムで最も大事なのは3拍目の裏と次の1拍目の頭です。つまり、低音と打楽器がこの曲の性格を作っています。
9小節目からのメロディは、これぞ吹奏楽曲といった感じでカッコ良く、耳に残りやすいですね。アーティキュレーションを正確に、スラーのあるないをしっかり吹き分けましょう。
12小節目は速いタンギングでfです。苦手な方にとっては嫌なフレーズが続きますが、ここにもしっかりスネアドラムがいてくれるのでそこに合わせていきましょう。バンドによってはスネアドラムを目立たせて、合いの手をしている管楽器はあっさり演奏させるのも良いと思います。
Bに向かっての盛り上がりは打楽器にかかっています。バンドの人数に合わせて上手く音量をコントロールしてください。また、各パートの役割を理解してバランスの良い演奏を目指しましょう。
Cも基本的には同じです。タンギングが難しい楽曲ですが、そこにばかり気をとられないようにしましょう。
Dは三連符の頭にsfがありますが、実際はそのフレーズの頭の音をクリアにしてくださいという意味でしょう。実際楽譜どおりにその音だけをsfにするとおかしな事になります。
メロディのアーティキュレーションが変わっていることに注意しましょう。作曲者の意図が明確に現れているところです。43の箇所も「non rit. Non leggiero」と書かれています。低音楽器は音を極力短く演奏して、音が残らないようにしましょう。
EからG
ここは「pomposo(豪華に)」と書かれており、スケールを大きくした演奏をすると良いですね。
Ffという強弱だけにとらわれるのではなく、空間のイメージを広くとることを意識しましょう。そのためにも、4分音符のパートは絶対に速くならないように要注意。テヌートがついているかのように、重みを出すと良いでしょう。一方で、トリルをしているパートはあまりくどくならないように、気をつけましょう。
Fの2小節目(51小節目)の三拍目の裏がアクセントですね。この演奏をするにはその前の音を短くしないといけません。アップダウンのアップの状態を作ると演奏しやすいでしょう。その後も同じです。
GからJ
Gのそれぞれのソロは、アーティキュレーションを大切にして、スラーの位置を守りましょう。ポリフォニーのイメージです。
Hは綺麗な木管アンサンブルです。指揮がなくとも自分たちで音楽を作っていきたいですね。
Iのソロはテンポどおりでなくてもいいと思います。
78からは細かくダイナミクスが書かれていますが、大きなフレーズで音楽を感じましょう。波がせまってきて、また引いていくというイメージです。
Jから終わりまで
再びポロネーズです。
ここからは特に打楽器が聴かせどころですね。ただ、音色には気をつけてください。自分が演奏している音をしっかりチューニングから作っていきましょう。
フィナーレも打楽器を中心に作っていくと、まとまったカッコいい演奏になります。
音量ではなく重みを感じて、まるでジェットコースターに乗っているかのように体で音楽を感じられるといいですね。
こんなバンドにおすすめ!
かなり演奏スキルが求められる曲です。
タンギングに苦手意識のないバンドが良いでしょう。
そして打楽器パートのスキルもかなり求められます。
ちゃんと人数が揃っているのも大事ですが、普段から打楽器アンサンブルをしてパート内でまとまりがあるバンドが向いていると言えます。
まとめ
カッコいい曲ですが、実際に演奏してみると予想していなかった苦労が出てくるかもしれません。どんなこともそうですが、それを乗り越えた時に成長がありますのでひたすら練習を続けましょう。
ぜひ、自分たちのバンドの良さが際立つ音楽作りを目指してくださいね!