ショパンといえば、ピアノを志す人なら一度は憧れる有名な作曲家。小さなピアノ独奏作品からピアノ協奏曲といった大作まで多彩な音楽を手掛け、39歳で若くして亡くなるまでに数多くの名曲を残しました。

多種多様な作品を残しているために「どの曲から聴けばいいかわからない」という人も多いのではないでしょうか?そこで今回は、これだけは聴いておきたい代表的な曲を20曲取り上げて紹介します。これさえ聴いておけば、あなたも立派なショパン通!繊細かつ情熱的なショパンワールドを思う存分楽しんでみてくださいね。

案内人

  • 山本知恵ピアノ歴30年以上、他にもクラリネット、ヴァイオリンの演奏経歴を持つ音楽と美術を愛するフリーライター。好きな曲はベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」とヘンデルのオラトリオ「メサイア」。

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ショパン:ロマン派のピアノの詩人

フレデリック・フランソワ・ショパン
フレデリック・フランソワ・ショパン(仏: Frédéric François Chopin)

フレデリック・ショパンは、19世紀ロマン派音楽の最も重要な作曲家の一人であり、特にピアノ音楽においては比類ない存在と言えるでしょう。彼の音楽は、その感情的な深み、技術的な難易度、そして独特の旋律と和声の美しさで知られています。

ショパンの生涯と作風

ショパンは1810年、ポーランドのジェラゾワ・ヴォラで生まれました。彼の音楽は、ポーランドの民族音楽とパリの都会的な音楽文化の影響を受けています。ショパンは、その生涯の大部分をフランスで過ごし、その間に多くの名曲を作曲しました。彼の作風は、感情的な表現力と繊細な技巧を特徴としており、その音楽はしばしば「ピアノの詩人」と評されています。

ノクターン(夜想曲) 第2番 変ホ長調 作品9の2

この作品は、ショパンのノクターンの中でも特に有名で、その美しい旋律と繊細な感情表現が評価されています。多感な青年期に作曲され、その後の彼の作風を予感させる作品です。この曲は、映画やドラマの中でよく使用され、特にロマンティックなシーンでのBGMとして人気があります。ショパンの作品の中でも特に親しみやすいメロディとなっており、クラシック音楽が初めての方にもおすすめの一曲です。

ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調《葬送》 作品35

この作品は、ショパンのピアノ・ソナタの中でも最も有名なものの一つで、特に第3楽章の「葬送行進曲」は広く知られています。その悲壮感あふれる旋律と力強いリズムにより、しばしば葬儀や追悼の場で演奏されます。ショパンの感情の深みが表現されたこの曲は、多くのピアニストから愛されています。

24のプレリュード(前奏曲集)第15番 変ニ長調《雨だれ》 作品28の15

「雨だれ」は、ショパンが作曲した前奏曲の中でもとりわけ人気のある作品です。この曲は、その繊細なリズムと美しい旋律が特徴で、雨だれが窓ガラスを打つかのようなリズムが印象に残ります。また、全24曲からなる前奏曲集の中の一つであり、この前奏曲集はバッハの《平均律クラヴィーア曲集》と同じくそれぞれの曲がすべて異なる調で書かれています。

ポロネーズ 第7番《幻想》変イ長調 作品61

この曲はショパンのポロネーズの中でも特に評価が高い作品で、その壮大なスケールと情熱的な旋律が特徴です。ショパンの故郷ポーランドの民族舞踊「ポロネーズ」を基にしていますが、その中にショパン独自の感性と創造力が加わっています。その力強さと華麗さから晩年の傑作とも言われており、コンサートで取り上げられる機会も多い作品です。

バラード 第1番 ト短調 作品23

ショパンの『バラード第1番』は、その劇的な構成と情緒的なメロディで知られています。ショパンがパリで活動していた時期に作曲されたこの曲からは、彼の故郷ポーランドへの郷愁や、当時の社会情勢への反映がうかがえるでしょう。この曲は多くの映画やドラマで使用されており、フィギュアスケートの羽生結弦選手が使用した曲としても有名です。

舟歌 嬰ヘ長調 作品60

ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58

「舟歌」はその軽快なリズムと明るい旋律で人気があります。この曲は、水面を滑る舟の動きを音楽に表現したもので、その中にはショパンの独特のリズム感と旋律美が詰まっています。コンサートではショパンの代名詞ともいえる物語性を含む抒情的な曲調が、聴衆の心をとらえるでしょう。

この曲は、ショパンのピアノ・ソナタの中でも最も成熟した作品とされています。その中には、彼の感情の深みと優れたテクニックが見事に結びついており、特に最終楽章の華麗な技巧が高く評価されています。また、この曲はその深遠な表現力が必要とされることから、多くのピアニストにとって挑戦的な曲とされています。

マズルカ 作品24

ショパンのマズルカは、彼の故郷ポーランドの民族音楽を基にした作品です。その中には彼の深い郷愁と愛国心が込められており、特に作品24はその独特のリズムと旋律が人気を得ています。『マズルカ 作品24』は、ト短調、ハ長調、変イ長調、変ロ短調の四つの曲から成り立ちます。

幻想曲 ヘ短調 作品49

この作品は、自由な形式と情緒的な旋律が特徴です。また、ショパンの創造力と感性が最もよく表現されている曲の一つともされています。他の作品と同じく祖国への思いが込められているとされるこの曲は、演奏者の解釈が比較的影響しやすい作品とも言われています。

ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11

この作品は、ショパンがまだ若く、ポーランドにいた時期に作曲されたもので、その中には彼の初期の情熱と才能が詰まっています。その華麗なピアノの旋律がこの曲の魅力と言えるでしょう。円熟期の作品と比べると青っぽい部分が見られるという意見もありますが、ショパンの若々しい感性に出会える名曲です。

エチュード集(練習曲集) 第3番 《別れの曲》ホ長調 作品10の3

「別れの曲」として有名なこの曲ですが、このタイトルは日本国内のみで使われる呼び名であることをご存じでしょうか。実はこのタイトルはショパンの伝記映画『別れの曲』のテーマ曲であったことから、定着したものなのです。美しく悲しげな主題に挟まれる荒々しい中間部が印象的なこの曲は別れのシーンにぴったりということで、映画やドラマで広く使われています。

ノクターン(夜想曲)嬰ハ短調(遺作)

ノクターン 嬰ハ短調(遺作)はショパンが1830年に作曲した作品ですが、没後20年以上たった1875年にようやく出版されました。ショパンの死後に発見されたこの作品は美しい旋律と詩的な表現で広く知られ、映画『戦場のピアニスト』のテーマ曲であったことでも有名です。また、この曲はしばしば追悼式で演奏され、その美しさと感動で人々の心を慰めます。

ポロネーズ 第6番《英雄》変イ長調 作品53

「英雄ポロネーズ」でおなじみのこの曲は、ショパンがポーランドの民族舞踊音楽であるポロネーズを基に作曲した作品です。ショパンが自国の独立を願って作曲したもので、その壮大なスケールと力強いリズムが特徴です。また、この曲はしばしば祝典的なイベントで演奏され、その場を一層盛り上げています。

ワルツ 第6番《子犬のワルツ》変ニ長調 作品64の1

「子犬のワルツ」は、ショパンが作曲したワルツの中でも特に人気がある作品です。この曲は、その軽快なリズムと愛らしい旋律が特徴で、子犬が元気に遊び回る様子を描いています。また、この曲はしばしば子供のピアノの発表会で演奏され、その可愛らしさと親しみやすさから多くの人々に愛されています。

ワルツ 第1番《華麗なる大円舞曲》変ホ長調 作品18

華麗なる大円舞曲は、ショパンが作曲したワルツ(円舞曲)の中でもとりわけ華やかな作品です。この曲は、その明るい旋律と躍動感あふれるリズムが特徴で、まるで豪華な舞踏会の様子を描いているかのようです。また、この曲はしばしばコンサートでもよく取り上げられ、その華麗さと楽しさで聴衆を魅了します

マズルカ 変ロ長調 作品7の1

『マズルカ 変ロ長調 作品7の1』は、ショパンが愛したポーランドの民族舞踊音楽マズルカを基に作曲されました。マズルカのの独特のリズムと旋律が特徴で、2分前後の短い曲のなかにショパンの故郷への愛が込められています。軽やかで愛らしい人気の曲で、ショパンのマズルカのなかでも特に有名です。

エチュード集(練習曲集) 第11番 《木枯らし》 イ短調 作品25の11

「木枯らしのエチュード」でおなじみのこの曲は、ショパンが作曲したエチュードの中で最も有名な作品のうちの一つです。細かいパッセージの演奏技術の習得を目的として作曲されました。激しいリズムと物悲しい旋律が特徴で、まるで冬の木枯らしを表現しているかのようです。

幻想即興曲(遺作)嬰ハ短調 作品66

ショパンは生涯においていくつかの即興曲を残しましたが、この曲は一番初めに書かれた即興曲です。1835年に作曲されたものの、ショパンはこの曲を出版するつもりはなかったと言います。しかし友人のフォンタナによりショパンの死後に出版され、今ではピアノの発表会やコンサートの定番曲として、親しまれるようになりました。

ショパンを聞くならこのCD!推薦盤を紹介

CHOPIN COLLECTION / Artur Rubinstein

ショパンを聴くならこれ、と言える11枚組コレクションです。ルービンシュタインが1946年から1967年にかけてリリースした作品をすべて収録。ショパンの作品を手頃な価格で楽しむことができます。

まとめ

今回は厳選に厳選を重ね、ショパンの代表的な作品を20曲紹介しました。これらのショパン作品には、ある一つの共通する「思い」があります。それはショパンの祖国ポーランドを思う切ない気持ちです。

ポーランドを強く愛していたショパンですが、青年期にフランスに渡ってから39歳で亡くなるまで、さまざまな事情が重なって再び祖国の地を踏むことがかないませんでした。生前からの彼の願いを受け、ショパンの姉ルドヴィカが彼の心臓をポーランドに持ち帰り、彼の地に埋葬したのだそうです。

このような背景にも思いを馳せつつ、ショパンの繊細かつ情熱あふれる世界観にひたっていただければ幸いです。