【クラシック奏者向け】エンジニアが教える録音ガイド【機材導入編】

                                   
コラム(雑学)
公開日時:2020/01/04
 
更新日時:2020/04/27
                       

演奏をする方なら、誰しも一度は自分で録音をしたいと思った事があるのではないでしょうか。しかしそう思っても、「難しそうだし色々と面倒くさそう」と、安価なハンディレコーダーで済ませたままの方も多いかと思います。そして、あまりに悪いその音に愕然とすることも…。

ハンディレコーダー

筆者は録音エンジニアとして、レコーディング・スタジオに長く勤めていた事があり、スタジオを離れた後もCDとしてリリースされたクラシックのプロ演奏家の録音を行ってきました。そのような実体験を元にした論考ですので、検索情報だけではない、経験によるそれなりに信用できる記事になったかと思います。はじめてレコーディングをする方はもちろん、既に録音経験のある方にも参考になる地検かも知れませんので、ご一読ください。

 

録音に必要な3つのもの

音楽を録音するために何が必要か…知ってしまえば当たり前でも、知らないと「何をどう揃えればいいのか」は思いのほか高いハードルです。まずは、録音をするために最低限必要となるものを紹介します。3つあります。また、なくても何とかなりますが、出来れば持っていたいものがもうひとつ。以下の通りです。

 

・マイク
・マイクプリアンプ
・レコーダー
・編集装置(高度な編集やミックスダウンを求める場合には必要)

 

細分化してゆくと、それぞれの機器をつなげるケーブルや、マイクを立てるためのマイクスタンドなど、ここに若干の付属物がつきますが、大きく分けると上の3つ(ないし4つ)です。先ほど例に出したハンディレコーダーは、これらの機能をひとつにまとめてあるので、ひとつ持っているだけで録音ができる、というわけです。これと同じ理屈で、レコーダーと編集機能を併せ持ったものなど、現在は幾つかの機能が融合した機材が作られています。録音機材は良いオーディオ機器に似ていて、良い録音を求めれば求めるほど、それぞれを単体で揃えていく事になります。

 

初期のレコーディング・システム例

上記の機材を使ってどのようなレコーディング・システムを構築するのか、図にしておきます。

レコーディングシステム

(図:レコーディング・システム)

4番の編集装置は、購入するレコーダーによりますが、レコーダーのほうである程度までは出来ることが多いです。しかしもしパソコンを持っているようであれば、オーディオ編集ソフトを入手し、録音した音声ファイルの編集が容易に出来るようになります。無料もしくは安価なソフトはさすがに製品版には劣りますが、最初は無料のもので十分でしょう。

レコーディングシステム2

(図:レコーディング・システム パターン2)

もうひとつのシステム例を示しておきます。先ほどは、マイクプリアンプとレコーダーが一体となった例でしたが、こちらはレコーダーと編集機器が一組になった例です。このようにパソコンをベースに音声の録音や編集やミックスのシステムを構築したものを、デジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)と呼びます。
クラシック演奏をなさる方は、楽譜作成や作曲の関係で、DAWソフトをすでに導入していらっしゃる方もいるかも知れません。そうした方にとっては、このシステムは非常に有効です。しかしこのシステムは、ホールやリハーサルにレコーダーを持っていくのが煩わしい、持っていない方には初期投資がかかる、パソコンに詳しくないと挫折しがち、といったマイナス面もあります。

おすすめの機材の買い揃え順序:初期編

機材の基礎知識は以上ですが、これだけでは具体的に何を買えばよいのか分からず、戸惑われる方も多いかと思います。そこでご参考までに、おすすめの機材買い揃え順を紹介しておきます。

はじめて録音をする時は一通りの機材を揃える必要があるため、資金面でもすべての機材に最上を求めると大変です。そこで、のちの拡張性を考えながら選択してゆくと、初期の負担を軽減出来ます。例えば、マイクは良いものを買えば一生ものなので、先述したように、マイクの予算は多めにとって、残りを低価格帯のもので済ませ、低価格帯の機器が故障したらそのタイミングで良いものに買い替えていく、といった具合です。

マイク

そのように考えると、録音システムの構築には、スタート時の初期システムと、最終的に完成されたゴールがある事になります。今回は、先に挙げたシステム構築のうちの1番を例にして、初期システムを構築するための機材購入例を挙げてみます。

(最初のシステム構築に必要なもの)
・マイク(2本):Audix SCX1
・マイクプリアンプ+レコーダー:TASCAM DR-680MKⅡ
・付属物:マイクスタンド2本、マイクケーブル2本

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ソロもしくはデュオの録音、あるいはアンサンブルやオーケストラでもステレオ録音であれば、これだけ揃えると、ハンディレコーダーとは比較にならないほど良い音で録音が可能です。意外と簡単ですよね。
マイクは、買い替えた際も用済みとならないレベルのもののうち、なるべく低価格帯のものを例に出しました。予算オーバーであれば、さらに低価格帯のコンデンサーマイクに変える選択もあります。

いずれの場合も、クラシック録音の最初のマイクとして個人的におすすめなのは、「単一指向性」で「スモールダイアフラム」の「コンデンサーマイク」を選ぶことです。なぜこの3つが良いのか細かい話になってしまうので、またの機会に紹介したいと思います。反対に、予算に余裕があるようであれば、Schoeps というメーカーのCMC-6のようなプロ仕様のマイクを買っておけば、買いなおす必要は一生なくなるでしょう。

ちょっとしたトリビアですが、Schoeps やB&K といったマイクメーカーは、グラモフォンやEMIといった伝統的にクラシック録音を続けてきたレコードレーベルのレコーディングで使用されています。また、多くのコンサートホール常設マイクの定番となっている、プロからの信用がとても高いメーカーです。
マイクプリアンプとレコーダーも、予算に応じて変更可能です。

ここに例に出したレコーダーはマイクプリアンプがついているフィールドレコーディング(屋外録音)用なので、家でも屋外の録音でも持ち運びが楽です。また、マイクも6本まで入力可能なため、マイクが増えても機材を買い替える必要がありません。しかし値段を抑えたいのであれば、マイクの入力が2つのものなど、より低価格のものを選んでもいいでしょう。
もしパソコンをお持ちであれば、パソコンに編集ソフトを組み込んで作業を行えば、編集は容易になります。

レコーダーでも簡単なミックスは可能ですが、パソコンに編集ソフトを組み込んで作業を行えば編集をよりスムーズに行うことができます。

 

まとめ:これだけで、ハンディレコーダーとは比較にならない本格的な録音の世界に飛び込める!

いかがでしたでしょうか。なるべく良いコンデンサーマイク2本、マイクプリアンプアンプ付きレコーダー、そしてマイクケーブルやマイクスタンドなどの付属物。これだけ買い揃えれば、マイク付きのハンディレコーダーよりも断然に良い音で録音できるようになります。そして、もしパソコンをお持ちであれば、パソコンに音声編集ソフトを入れることで編集も容易になる、というわけです。

今後、機会があればプロのレコーディングにも引けを取らない録音・編集・ミックスをするための「機材導入アドバンス編」と、おそらく多くのプレイヤーが悩める「録音の実技!マイキング編」を紹介したいと思いますが、ひとまず「機材導入編」がみなさんのレコーディングライフの一助となったなら幸いです。

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