「マンドリンってどうやって選んだらいいんだろう…」
決して安い買い物ではないので悩んでしまうのも当然です。
そこで今回はあなたのそんなお悩みを解決するべく、10年以上マンドリンを嗜んできた知見を活かして、選び方やオススメのマンドリンをご紹介していきます。
ご一読いただき、ぜひ楽器選びの参考にしてください。
案内人
- 久保慎太郎大阪在住のマンドリン愛好家。幼少期にピアノを始め、学生時代にマンドリンやクラシックギター、コントラバスに出会い嗜むように。社会人になる際にはマンドリンオーケストラを自分で立ち上げて指揮者を務めるなど、常に音楽と過ごす人生を送ってきました…
目次
マンドリンってどんな楽器なの?
マンドリンは17世紀イタリアで発祥したといわれる弦楽器です。
ギターと同様にリュートを祖先としており、イチジクを縦に割ったような特徴的な形を持ちます。
ヴァイオリンと同じ調弦で、太い弦から順にG-D-A-Eとなっていますが、ヴァイオリンとは大きく異なる点が二つあります。
一点目が弦の数。ヴァイオリンの4弦に対してマンドリンは8弦あり、2本で一対(おなじ調弦)の複弦になっています。
二点目が演奏方法で、マンドリンは弓を使わずピックで弾いて演奏します。
そのためギターと同じく音の減衰があり、持続的な音色を奏でる場合はトレモロ奏法を活用する必要があります。
マンドリンは、19世紀後半に他の西洋の楽器とともに日本に輸入されました。
20世紀初頭のマンドリンオーケストラや大学マンドリンクラブ設立を起点に広く普及し、現在まで長く愛されているという歴史を持ちます。
マンドリンの選び方
マンドリンを購入する際は新品を購入するか、それともオールド(中古)を購入するかという二つの選択肢がありますが、今回は新品を購入するという前提でお話していきます。
マンドリンの選び方には大きく分けて以下の3つの視点があります。
①値段で選ぶ
②質で選ぶ
③個性で選ぶ
それぞれ説明していきますね。
①値段で選ぶ
まずお話しするのは、安い値段で購入できるものを探すという選択肢です。
マンドリンの相場は10万円前後の初心者モデルから150万円を超えるハイスペックなものまで幅広い価格帯です。
初めてマンドリンを始めるという方は10万円前後の初心者モデルを選ぶということが多いです。
ただし上達するにつれて楽器の性能が追い付かず、どこかのタイミングでもう少しハイスペックなモデルに乗り換える必要があるでしょう。
②質で選ぶ
一方で初めから楽器の質を重視するという考え方もあります。
マンドリンには入門モデルでも20万円以上するような高級メーカーがあり、そのようなモデルを購入するのも選択肢の一つです。
値段が高いため購入にかかるコストは痛手ですが、その分楽器としての質は非常に高く、中級者・上級者になっても使い続けることができます。
③個性で選ぶ
これは値段や質ではなく、他の人があまり使っていないという点を軸にした選択肢です。
マンドリンにも定番メーカーがありますが、あえてそれらを外して、知る人ぞ知る名器を探すというのも面白いと思います。
個人製作の楽器が対象になってくるので非常に個性的な楽器と出会う可能性がある反面、同じ作家の楽器でも質や音色のばらつきがみられるので注意が必要です。
それでは次に、この3つの視点を踏まえたオススメのマンドリンをご紹介していきましょう。
まずは手ごろな値段で始めたいあなたにオススメ “鈴木/ENAマンドリン”
マンドリンの入門モデルとして広く知られている鈴木バイオリンと恵那楽器(ENA)のマンドリン。
鈴木バイオリンは愛知県名古屋にある1887年創業の老舗メーカーで、ヴァイオリン属を中心に製作する一方、その技術を活かしてマンドリンも製作しています。
その鈴木バイオリンから独立した恵那楽器(ENA)もまた、鈴木バイオリンの技術を継承してマンドリンやギター、ヴァイオリンを中心に製作しているメーカーです。
両メーカーの価格帯は6~13万円程度と非常にリーズナブルで、初めての楽器として人気の高いマンドリンです。
音質はこの後ご紹介するカラーチェや手工マンドリンと比較するとどうしても劣りますが、ソロでも合奏でも十分に使うことができる楽器です。
「まずは手ごろな値段で始めたい」という方は鈴木かENAを考えてみてはいかがでしょうか。
鈴木 マンドリンM-30
鈴木マンドリンの入門モデルです。
音質は入門モデルの域を抜けませんが、まず手軽に始めるならこのモデルです。
鈴木 マンドリン M-100
M-30では少し物足りない方はこちらのモデルがオススメ。
音質やスペックはM-30と大きく変わりませんが、ヘッドの部分のデザインが後述のカラーチェの高級モデルを彷彿とさせる点が特徴になっています。
ENAマンドリン EM-40
ENAマンドリンの入門モデル。
鈴木マンドリンM-30よりもさらに安い価格ですが、音質やスペックに差はほとんど感じられず、よりお得に買いたい方にはオススメ。
質を重視したいならコレ! キングオブマンドリン “カラーチェ”
質を重視するなら、カラーチェでしょう。
カラーチェはイタリアの老舗工房で、1835年創業という長い歴史を持っています。
イタリアのヴィナッチャ、エンベルガーという2工房に、フランスのジェラを加えた4大老舗工房の一つとして数えられ、そのなかで唯一現存している工房です。
カラーチェの特徴は、なんといってもその華やかな音色と響き。価格帯も一番安いモデルで20万円以上と高いですが、楽器としてのスペックは折り紙付き。
中級者や上級者になっても使い続けることが出来る一生モノの楽器といえます。お財布との相談にはなりますが、質をお求めならカラーチェをご検討ください。
カラーチェマンドリン No.24
カラーチェの中で入門モデルと言われるNo.24。
入門とはいえカラーチェの備える音色や響きはしっかりと受け継ぎ、楽器としての性能は高いです。
カラーチェマンドリン No.26
No24と並ぶ入門モデル。
No.24よりも少し値段が高めですが、性能はそこまで大きく変わりません。
デザインがNo.24と少し違い、その見た目でNo.24ではなくNo.26を選ぶ方も多いです。
カラーチェマンドリン No.13
No.24、26よりも1クラス上のモデル。
その上品な音色はさることながら、指板に下位モデルにはなかった白蝶貝のポジションマークが入り、より高級な印象を抱かせるデザインになっています。
カラーチェマンドリン No.16bis
カラーチェの中でも60万円を超える中級モデルの一つ。
背面の33枚リブに掘り込みがあり、それにより粒の際立った音色を実現している名器です。
個性を出したい方にオススメ! “手工マンドリン”
個性を出したいなら、マンドリン製作家が一つずつ手作りする手工マンドリンでしょう。
メーカーの量産モデルと比較して個性的な音色や特徴を持つことが多く、製作家の同じモデルでもその個性は大きく変わってきますので、「こだわりの楽器を探したい」というのであればオススメです。
日本はマンドリン人口が世界一という背景もあり、マンドリン製作家が多いです。その分楽器の選択肢も多くあり、手間暇かけて探せば自分にぴったりのマンドリンに出会えるかもしれません。
値段は大体15~35万円前後と、鈴木/ENAとカラーチェの間の価格帯が多いです。
宮野 手工マンドリン
国内の製作家でも人気のある宮野厚志氏が製作するマンドリン。
音程の安定感と高音の美しさに定評のある楽器です。
松島 手工マンドリン
上述した宮野氏のお弟子さんである松島哲志氏が製作するマンドリン。
他ではあまり見られない製作手法をとっており、独自の音色を兼ね備えています。
落合 手工マンドリン
国内製作家のなかでも、その品質に定評ある落合大悟郎氏が製作するマンドリン。
製作者が自ら材木を厳選するなど、品質に対する高いこだわりを感じる逸品が多いです。
番外編 フラットマンドリンという選択肢も
番外編としてフラットマンドリンも紹介しておきたいと思います。
フラットマンドリンとはラウンド型マンドリン(これまで紹介したタイプ)と違い、背面が平らでギターに近い形をしたマンドリンです。
日本におけるクラシックの現場ではラウンド型マンドリンが多いですが、海外ではフラットマンドリンを使っている方も一定数いらっしゃいます。
音の響きがラウンド型のマンドリンと異なるため、クラブや楽団などの合奏で使うのは難しいかもしれませんが、一人でまず始めようという方はフラットマンドリンという選択肢もありだと思います。
中古マンドリン購入時に確認するべき3つのポイント
ここまでマンドリンを選ぶポイントやオススメの商品を紹介してきましたが、メルカリやヤフオクで中古マンドリンを買おうと思っている方もいると思います。
そこで最後に中古マンドリンを購入する際に注意すべきポイントを3つご紹介します。
①ネックの反り
実際に演奏に使えるかどうかに最も影響のあるポイントがネックの反り。
マンドリンに限らずネックを持つ楽器であれば経年によるネックの反りは少なからず起こりますが、マンドリンは複弦という事もあり弦の張力が強いので、反り具合が強くなるケースも多いのです。
中古になると反りが激しく、正直使い物にならない状態のものもありますので注意が必要でしょう。
ネックの反りを確認する際は12フレットの弦高を見てください。
この写真上ポジションマークの2つ右にあるのが12フレットです。
通常この部分の指板と弦との間は3㎜程度ですが、これが4、5㎜になってくるとかなり反っている状態です。
商品写真や説明には記載されていない場合は販売者に確認した上で、購入してください。
②ブリッジとナット
ブリッジはマンドリンボディのサウンドホールの下で、ナットは指板の最上部でそれぞれ弦を支えるパーツです。
どちらも弦高や音の響きに関わる重要なパーツですので、破損や欠損していないかを確認することが失敗しないための重要なポイントと言えるでしょう。
ブリッジ
ナット
ちなみにナットは市販で手に入りますが、ブリッジはフラットマンドリン用のみ販売されています。
ラウンドマンドリン用のブリッジは工房などで取り付けてもらう必要があるので要注意です。
③ペグとテールピース
ペグとテールピースはネックヘッドとボディ下部それぞれで弦を引っかけて、張力を調整するパーツです。
これらも中古の場合破損していることが少なくないため、必ずチェックするようにしましょう。
ペグ
ペグは多少破損していても使えないことはありませんが調弦がしづらかったり、音程が狂いやすくなったりとマイナス面がとても大きいので、実用面を考慮するのであれば破損状態のものはお勧めしません。
テールピース
ペグもテールピースも型によっては市販で購入することはできますが、余計な修理コストもかかってきますので、できるだけ破損していないものを選ぶようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか。おさらいも兼ねてもう一度今回の内容をまとめておきます。
選ぶ視点 | オススメ楽器 | 値段 | メリット | デメリット |
値段 | 鈴木・ENAマンドリン | 6〜13万前後 | 値段が安い | 上位の楽器に乗り換える必要有り |
質 | カラーチェマンドリン | 20〜120万前後 | 長く使い続けられる | 値段が高い |
個性 | 手工マンドリン | 15〜35万前後 | 他とは違う個性が出せる | 質にばらつきがある |
その他 | フラットマンドリン | 2〜30万前後 | クラシック以外のシーンでも使える | 場合によっては合奏で使えない |
ここまでマンドリンを選ぶための3つのポイントとそれに対応するオススメ楽器を紹介してきましたが、最後にもう一点、楽器を購入するときの大切なことをご紹介しておきます。
それは「実際に楽器に触れてみる」ということです。その楽器の持つ魅力や個性は実際に触れてみて初めて実感することが出来ます。
ぜひ3つのポイントをふまえ、実際に触れて検討してみてください。あなたが自分にぴったりのマンドリンに出会えることを願っています。