1月に突如として始まった新型コロナウイルス肺炎の世界的流行により、人々は会社や仕事場への出勤を自粛し、毎日自宅での生活を強いられています。
 
そしてそれは音楽家にとっても同じこと。
 
ライブやコンサートの中止が相次ぎ、ほとんどの音楽家が影響を受けているでしょう。
 
そんな中、それでも自分たちの表現を模索し、発信しているアーティストたちがいました。
 
今回は国内外のクラシックオーケストラ団体や、演奏家による「コロナに負けない」渾身のリモート音楽をご紹介します。

星野源「#うちで踊ろう」 × 全国60人の若手演奏家のオーケストラ

アーティストの星野源さんのSNS投稿による、「#うちで踊ろう」の楽曲に、全国の若手演奏家たちがリモート演奏で伴奏をつけ、コラボレーションが実現しました。
 
多くのアーティストが様々な楽器や方法で星野源楽曲をアレンジしている中、とびっきりのクオリティ。編曲もさることながら、自宅録音で集めた音とは思えない完成度です。さらに映像の出し方も凄くかっこいい!
 
指揮者は琉球フィルハーモニックオーケストラの正指揮者、松元宏康さん。
 
企画は合同会社アーツイノベーター・ジャパンによるものです。

米津玄師「パプリカ」 × 新日本フィル

新日本フィルハーモニー交響楽団のメンバーに米津玄師「パプリカ」。
 
「テレワークで合奏ができるのか?」シリーズの最終回です。
 
家族に囲まれながら演奏したり、室内で飼っている鳥がとまったりと、メンバーがそれぞれの場所、それぞれの仕方で音楽を奏で、離れていても音楽で繋がれるというメッセージに心打たれます。
 
また、動画の冒頭の静けさが、コンサートホールでの開演を待つ時間のようでリアル!演奏会場にいるようです。
 

ZARD「負けないで」 × 高嶋ちさ子と高嶋軍団

ヴァイオリニストの高嶋ちさ子さんディレクションによる、ZARDの「負けないで」。総勢24人の演奏家によるリモート合奏です。
ドラムやベース、ギター、シンセサイザーも加わって、豪華!
 
途中、高嶋ちさ子さんがリコーダーでソロをとったり、メンバーみなさんの合唱や、自宅でヨガをしながら歌う人がいたりと楽しい演奏動画です。
 
12人のヴァイオリンのハーモニーも美しく、高嶋ちさ子さんの家族の演奏も必見!
 

Official髭男dism「I LOVE…」 × 大阪桐蔭高校吹奏楽部

大阪の名門吹奏楽部「大阪桐蔭高校吹奏楽部」による、Official髭男dism「I LOVE…」の演奏。
 
このテレワーク合奏企画のために、ウィンズスコアの郷間幹男さんが編曲をした吹奏学アレンジです。
 
チューバやユーフォニアムの生徒さんは外で演奏したりしていますね。ディンパニーなどはどこで演奏しているのでしょうか!?
 
合同練習が出来ない状況の中でも、オンラインで繋がる吹奏楽部のみなさんの熱いハーモニーを是非聴いてみてください。
 

宝島 × 羽村第一中学校 + OBG

吹奏楽コンサートでも定番の人気曲「宝島」。羽村第一中学校吹奏楽のみなさんとOBG(卒業生)のみなさん、総勢およそ100人での迫力のあるアンサンブルです。
 
テレワーク合奏とは思えない生き生きとした演奏で、学生の皆さんの活力に元気が貰えますね。
 
ソロパートでは交互に手書きのメッセージが掲げられたりと、映像もチャーミング。
 
パーカッションは電子ドラムで演奏するなど自宅演奏ならではの工夫も。
 
今回は、羽村第一中学校出身のプロ演奏家、東野匡訓さん(Tp)と高井天音さん(Tb)も参加しています。
 


 

ベートーヴェン「第九」× ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団

オランダはロッテルダムにあるオーケストラ団体「ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団」。
 
現在日本国内よりもさらに感染拡大が深刻な欧州において、いち早くリモート演奏を試み、人々に勇気と励ましのメッセージを投げかけました。
 
ロッテルダムの地元企業である「シニアサービス」とのコラボーレション企画とのことですが、後半の合唱では音楽の力強さとそのメッセージをひしひしと感じることができます。
 
「ベートーヴェンのこの交響曲のように、この危機を乗り越え、世界中の演奏会が再び開かれることを願って」
「今朝、朝食のテーブルで私の妻がこの音楽を奏で、私は泣くのをこらえることしか出来ませんでした」など、感動、賛辞のコメントも並んでいます。
 

エルガー「エニグマ変奏曲」 × ミルウォーキー交響楽団

アメリカのウィスコンシン州ミルウォーキーに本拠地を置く楽団「ミルウォーキー交響楽団」もまた、リモート演奏を通して世界中に音楽を届けています。
 
冒頭の譜面台に置かれた手製のメッセージは、「From Our Homes to Yours(私達の家から貴方達の家へ)」。
 
エルガーのメロディは穏やかで美しく、それに合わせてゆっくりと切り替わる奏者たちの自宅演奏姿も涙を誘います。
 
音質もコンサート会場に錯覚するような、非常にクオリティの高い音色です。
 

ラヴェル「ボレロ」 × フランス国立管弦楽団

フランスの国立管弦楽団の団員たちによるモーリス・ラヴェルの『ボレロ』のリモート演奏動画。
 
『ボレロ』と言えば、作曲家モーリス・ラヴェルの代表曲の一つ。元々はバレエの音楽として作曲されましたが、今日まで様々なアーティスト、作曲家によって編曲、演奏されており、CMや映画でもよく耳にします。
 
楽曲は印象的で美しい二つの旋律のみで構成され、オーケストラ楽器を入れ替えながら、次第に厚みと音量を増して、たった一度のクレッシェンドでラストを迎えます。
 
クラシック楽曲でありながら、終始同じメロディのリフレインゆえに力強く、今的な響きもある『ボレロ』。
 
ラジオ・フランスのミッシェル・オジェ氏によって編集された今回の多重録音による感動的な『リモート・ボレロ』もまた、パーカッションと弦のピチカートから始まり、少しずつ楽器の音が増え大円団を迎えます。
 
動画のコメントには「ラヴェルのこの不変の音楽によって、あなたにささやかな安らぎを与えてくれることを願って」とのメッセージ。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
 
多くのミュージシャンたちの胸を打たれるリモート音楽によって、「離れていても、音楽は人と人を繋ぐのだ」ということが実感できますね。
 
音楽が劇的に世界を変えることはないけれど、一人一人の生活と心に寄り添う大事な出来事だということを教えてくれます。