【弓で奏でる打楽器】ボウイング奏法が印象的なパーカッション作品5選

2017/10/08
楽器

19 世紀なかごろより急速に発展し様々なかたちで音楽作品に用いられてきた打楽器ですが、その特徴のひとつと して楽器のヴァリエーションが膨大なことが挙げられます。奏法は各打楽器によりそれぞれ異なり、さらに撥類を組み合わせることによって音色の可能性は無限の拡がりをみせます。当然表現媒体として打楽器をチョイスする作曲家は多く、彼らはこれまでにない新しい響きをもとめ従来の奏法からは大きく逸れた特殊奏法を考案してきま した。「撥で楽器をたたく」だけでは表現しきれないものを表現したかったのかもしれませんね。

数多ある打楽器の特殊奏法のなかから今回は「ボウイング」(=コントラバスやチェロの弓で弾くこと)が印象的な パーカッションソロの作品を 5 曲ご紹介したいと思います。

(1)Mourning Dove Sonnet (1983) / Christopher Deane

ノーステキサス音楽大学で教鞭をとるクリストファー・ディーンによるソロヴィブラフォンのための作品。 両手にコントラバスの弓を持ち、さらに左手にヴィブラフォンの撥を、右手にはポルタメント用のゴムの撥を合わ せて持つというアクロバティックな奏法で北米に生息するナゲキバトの鳴き声を模倣します(グリップは下記図 1 を参照)。

弓で弾きながら鍵盤の中央部を押さえ高い倍音を発生させたり、曲の中間では低音域の鍵盤にミュートを置き響き を変質させるユニークな手法をとっています。 楽器の特性を熟知した打楽器奏者ならではの作品といえますね。

 

(2)ソロ・パーカッションのためのグラウンド(1976) / 福士則夫

福士則夫は戦後日本における現代音楽の発展に貢献した作曲家のひとり。とりわけ打楽器のための作品を多数かい ていますが、これは彼の友人に優秀なパーカッションのスペシャリストが多いことに由来します。 この作品ではサスペンデッドシンバルと銅鑼、そして本来仏具である”りん”がコントラバスの弓で弾かれます。デ リケートで透明な響きが印象的です。

ボウイングのほかにも爪でシンバルを引っ掻く、銅鑼を蹴飛ばすなどの特殊奏法が採用されており、しばしば国際 コンクールの課題曲として取り上げられています。  (動画では 4’15″辺りでりん、その直ぐあとに銅鑼を弾いています。)

 

(3)変化する共鳴の長さ(2000) / 鷲見音右衛門文広

マリンバソロとデジタル音源による鷲見音右衛門文広の 2000 年の作品。 曲の冒頭部、右手はマリンバの撥を 1 組、左手にはコントラバスの弓を持ち演奏します。弓で得られる持続音と撥 によるトレモロとのコントラストが興味深いですね。 この作曲家特有の軽妙ですっきりしたハーモニーとデジタルサウンド、そして弓によるシルキーな音色が絶妙に溶 けます。 音源には委嘱者の声にデジタル処理を施したものがミックスされているそうです。

 

(4)I Ching for Solo Percussion(1982) / Per Norgard

デンマークを代表する作曲家のひとり、ペア・ネアゴーによる 1982 年のパーカッションソロの作品。 第 2 楽章でフレクサトーンをコントラバスの弓で弾くよう記譜されています。インディアンモノコード(ゴピチャ ンド)、演奏者の声、口笛、ロートトム、水をはった水槽に沈めたスイスカウベルやボウルを叩きながら引き上げる など、滑らかにポルタメントする楽器ばかりが使われたユニークな楽章です。 (動画では 1’20″辺り。) ※繰り返し呟かれる「No.9」は、ザ・ビートルズの Revolution No.9(White Album)に由来し、それを参考にする よう記譜されています。

 

(5)Wild Garden(2004) / Eckhard Kopetzki

エクハルド・コぺツキはドイツのパーカッショニスト兼作曲家。この作品もイーチン同様演奏者自身により「ワイ ルドガーデン」というテキストが繰り返し呟かれます。 曲が穏やかな表情になったセクションでは、ティンパニーに乗せたスイスカウベルがコントラバスの弓で弾かれます。弓で弾いたあとにティンパニーのペダルを動かし音程を変化させています。このようにティンパニーを共鳴体 やエフェクターとしてしようする手法は武満徹が好んで使っていたようです。 (動画では 2’35”辺り。この奏者は恐らく黒いカーボン弓を使用しています。)

今回取り上げた 5 曲のみならずボウイングが用いられる打楽器作品は実はとても多いです。 独特の音色とその効果が作曲家たちのクリエイティヴィティを刺激するのかもしれませんね。そういったクリエイ ティヴィティに目を凝らし耳を傾け演奏家は作品に相応しい音たちを創造します。
さて、次は作曲家は打楽器になにを求めるのでしょうか。

 

≪譜例≫

図 1 Mourning Dove Sonnet

こんなグリップ見たことありますか?

 

譜例 1 Mourning Dove Sonnet 

弦楽器の譜面のように運弓記号が記譜されています。

 

譜例 2 ソロ・パーカッションのためのグラウンド

Rin はりん、T-t はタムタム=銅鑼のこと。

 

 譜例 3 I Ching for Solo Percussion

音符の後の尻尾はポルタメントの形を示す。

 

譜例 4 Wild Garden 

(col legno)は弓の木部で=弓の木部で叩く。

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