弦を弓で擦ることで音を出す撥弦楽器。そのジャンルの中で恐らく最も有名であろうバイオリンと比較すると、二胡という楽器がいかに特異な形状をしているかが分かるでしょう。

中国の伝統楽器である二胡の発祥については様々な説がありますが、現在有力とされているのはシルクロードを通じた伝来説です。中東にて生まれた「ラバーブ」と呼ばれる撥弦楽器が、シルクロードを通じてイスラム教と共に東西へ普及し、西ではバイオリンやヴィオラ・ダ・ガンバ等の楽器に、東では二胡や日本の胡弓、馬頭琴等に進化していきました。

少し鼻にかかったような独特の音色とバイオリンとは違う繊細なビブラートが特徴で、熟練者の演奏は女性の歌声を連想させます。最近では歴史を題材にした映像作品の劇伴音楽でフィーチャーされることも多く、日本での認知度も徐々に上がってきているようです。

そんな二胡の独特な世界観は、ベース弾きなのに様々な楽器を節操なく齧りまくっている筆者私の心にジャストミート。オークションサイトで二胡を手に入れたのでした。

本稿では筆者が二胡を始めるにあたり、必須な物、あると便利と感じたものについてお話します。

オリエンタル気分を味わうために! 二胡演奏に必須な物

1.二胡

これがないと始まりません。二胡には伝統的に「紅木」という木材が用いられ、特に「老紅木」と呼ばれる古く、質の良い「紅木」を用いて、熟練の職人が製作したものは、極上の音色を持つと言われています。その他「紫檀」やそれに類する「血紫檀」、「黒檀」等、基本的に希少な木材が使われてきました。

真剣に取り組むならこういった材で作成された伝統的な二胡で始めるのもいいですが、最近ではメイプル材等を用いた量産品も手頃な価格で売られているので、ひとまず手に取りたい方はこちらを購入すると良いでしょう。

筆者は某オークションサイトで量産品の中古を3000円で落札しました。音や造りはともかく十分使えます。

2.弓

二胡の弦を指で弾いても屁のような音しかなりません。二胡を二胡らしく、幽玄に奏でるために弓は必須です。竹を材料に作られる二胡の弓は、2本の弦の間に入れて使うため、張られた毛の片側が簡単に取り外せるようになっています。他のこの点も他の撥弦楽器とは一線を画す部分です。

北方式と南方式があり、安い楽器には北方式がセットでついてくることが多いです。

二胡の弓の最も驚くべきポイントは「消耗品である」ということです。毛が、というわけではありません。弓自体が消耗品なのです。楽器にあった弓を高額で購入し、長年の友とするバイオリンやチェロの奏者からすると考えられない概念でしょう。しかしその分弓自体の価格は抑えられています。良いものでも1〜2万程で購入可能です。

本当は最低でも年に1回は弓の交換をした方が良いという話ですが、私は未だに最初に購入した二胡についてきた弓を使っています。そろそろ買い替えてみたいです。

3.弦

二胡の弦は基本的に鉄弦なので弾いてるうちに錆びてきます。定期的な弦交換が必要です。

中国の各メーカーの他、ドイツのオットー・ムジカ社やバイオリン弦で有名なトマステイック社も二胡用の弦を生産しています。相場としては2,000円程度のものが多く、2本しか入ってないことを考えると少々割高です。

また、二胡は弦の張替えに慣れが必要なので、最初からある程度良い弦を張ろうとすると、失敗した時に悲惨です。まずは安い弦で張替え、チューニングの練習をしてみると良いでしょう。

筆者はトマスティック社の弦を使用しています。やはり様々な弦を生産しており、馴染みもあるため安心です。

4.松脂

松脂を弓に付けないとまともに音がなりません。必ず購入しましょう。買いたての弓は特に松脂の付きが悪いので、しつこいくらい念入りに付けると良いです。

松脂の違いによって微妙に音が変わるようで、比較記事を執筆してくださっているプロの奏者の方もいます。

購入の際の参考にしてみるのも良いでしょう。

5.チューナー

正しい音程で弾かないことには音楽になりません。チューナーは必須です。二胡は原始的な楽器なのでチューニングも繊細です。音感を身に着けるためにもしっかりチューニングしましょう。最近では携帯アプリもリリースされており、お金をかけたくない方や、持ち歩きが面倒な方はそちらを使ってもよいでしょう。

早く上達したいあなたの為に。あると便利な物

1.ミュート

二胡は音がかなり大きいため、集合住宅等では練習しづらい楽器と言えるでしょう。

それでも練習したい人のために、二胡専用のミュートが販売されています。駒に取り付ける洗濯バサミのような形状のもので、取り付け簡単、値段もお手頃なので持っていて損はしないでしょう。

筆者が購入したミュートは下記リンクのものです。

参考URL

2.理論書

音楽理論というと、とても複雑で難しいものであると感じる方も多いでしょう。

しかし、筆者の主観だと学生時代嫌いだった教科よりも、取っ付きやすいものでした。音楽理論を少しでも齧っておくと、例えば普段二胡では演奏されていない曲をアレンジして弾く、なんてことも出来ます。上達したらチャルダッシュも弾けてしまうかもしれません。

(参考URL)

「勉強かぁ…」と思うかもしれませんが、是非取り組んでみてください。もっと音楽が、二胡が楽しくなりますよ。

さいごに

二胡を始める際に必要な物について書いてみましたが、いかがでしょうか?趣味としての楽器を、自分のペースで楽しめるのは大人の特権と言えるでしょう。二胡は特に習得の難しい楽器ですが、まず出来るところから、ゆっくりと覚えていきましょう。

筆者もまだ全然弾けませんが、おかげ様で趣味の時間を楽しく活用できています。あなたの人生に二胡の幽玄な音色を加えてみてはいかがでしょう?

photo credit: IQRemix “Enchanting Rhythms of Chinese Music” – Edmonton via photopin (license)