アナログ・レコード事始め(1)アナログ・レコードとは

2017/07/11
音楽家の生活

最近、アナログ・レコード、すなわちLP盤がひそかなブームになっているといいます。現在の音楽メディアはCDを通り越して配信音源が主流となり、人生初の音楽体験がCDあるいは配信音源なのは当り前で、すでにアナログ・レコードというものを全く知らない人たちが多数派という時代になりつつあります。

そんな今、アナログ・レコード回帰現象が起きているといのは、筆者のようなアナログ時代の生き残り、かつ未だにアナログ・レコードから離れられないアナクロ人間にとっては予期していなかった驚きであり、また喜びでもあります。
普通であればここで「なぜアナログ・レコードが見直されているのか」、「アナログ・レコードとデジタル音源の音質比較」というような定番の話題となるところです。しかし、そのようなややこしい、時として不毛な争いになりがちな議論はさっさと脇に置いて、アナログ・レコードを知らない世代、あるいは知ってはいても始めるにあたって一体どこから手をつけてよいのやら、と感じているような方々のために、アナログ・レコードというもののざっくりとした概要や歴史、それにアナログプレーヤーやクラシック・アナログ・レコード(LP盤)の探し方、選び方、楽しみ方などを少し書いてみたいと思います。

 

■アナログ・レコードとは何か

そもそも音というのは空気が振動する現象です(空気の無い宇宙空間では音は聞こえないと言われています)。その音(振動)を目に見えるように図面化すると、大小さまざまな波のような形となります。よくTVドラマなどで見る心電図やウソ発見器の図形のようなもの、というとイメージしやすいでしょうか。とにもかくにも、音や音楽というものはすべて、その波の大きさや形などで表現されています。
その波の形(波形)を、そのまま目に見えないくらいまでに縮小して円周状にグルグルと彫り込んだものがアナログ・レコードと言われるものです。ではデジタルはどうかというと、その波形を細かく網目のように刻んで(この際ですから詳しく書いてしまいますと16ビット、48kHzの場合、波の高低を65536段階に、1秒間を48000回に刻みます)その網目の番地を順番にデジタルメディアに格納していきます。表計算ソフトに数字を入力して巨大な表を作っているようなものだと思っていただければよいと思います。さらに配信の場合、そのデジタルデータを圧縮するわけですが、さすがにアナログの話とはかけ離れてしまいますので以下省略します。
つまり、アナログ・レコードは「音の波形をそのまま記録したもの」と言えます。なおこの波形を刻むという方法は、エジソンがレコードを発明した時の原理から全く変わっていない、長い歴史を持つ方法でもあります。

 

■アナログ・レコードを楽しむには何が必要か

デジタルで音を聴くための装置(スピーカー、アンプやヘッドホン)は既にお持ちという前提として、まずは「レコード・プレーヤー」がどうしても必要になります。このレコード・プレーヤーには刻まれた溝から波形を取り出すための「ピックアップ・カートリッジ」、いわゆる「レコード針」が付いていますが、中級機から高級機になると、このピックアップ・カートリッジが別売りとなることが多くなります。
レコードプレーヤーだけでは、実はまだ普通に音楽を聴くことはできません。理由の一つは、レコードプレーヤーから出てくる音が非常に小さいものだからです(レコード針の種類にもよりますが、大体CDの1/10から1/100ほど)。試しに後述するフォノイコライザーを使わずにアンプなどに繋ぐと、音量を最大にしても遠くで鳴っている程度の音しか聴こえません。もう一つの理由は、レコード盤に音を刻むときにイコライジングといって高い音の波を大きく、低い音の波を小さくして刻んでいるため、再生する時には、その逆に、高い音を小さく、低い音を大きくする必要があるのです。これは、高い音の波は小さく、低い音の波は大きいため、それを平均化してレコードに刻みやすくするためです。このイコライジングにはちょっとした特典があります。それは、主に高音域で発生するレコード盤のキズの音や、針が盤面をこする時の音(サーフェスノイズといいます)が高音を小さくすることに伴って必然的にそれらのノイズも小さくなるのです(したり顔で書いていますが、考えてみれば当たり前のことです)。
その昔、アンプには必ず「Phono(レコード)」入力というものがあり、そこにレコードプレーヤーをつなげると、音の増幅とイコライジングが自動で(というのも変な表現ですが)行われたのですが、現在「Phono」入力のあるアンプはほとんどありません。では何が必要かというと「フォノイコライザー」というものを別に用意することになります。しかし、初級機といわれるようなアナログプレーヤー(大体1万円から5万円のもの)には、フォノイコライザーが内蔵されているものも多く、「フォノイコライザー内蔵のプレーヤー」を選べば、別に用意する手間が省けることになります。逆に、オーディオにこだわられる方にとっては、「ピックアップ・カートリッジ」も「フォノイコライザー」も別売りとして色々と吟味しながら選ぶという楽しみが増えるともいえます。
最近のアナログ・ブームのおかげもあってか、アナログ・プレーヤー初級機は、CD-R内蔵コピー機能付き、USB出力付き、はてはBluetooth機能までついたものまであり、デジタル世代にとっても「アナログ事始め」は随分と敷居が低くなってきているように思います。
次回は、アナログプレーヤーの具体的な選び方と使い方について書いてみたいと思います。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Technics_SL-1200#cite_note-8
ロングランを誇った普及型アナログプレーヤーの名作 SL-1200シリーズ。その頑丈さからDJにも愛用され、現在でも様々な亜種(OEM製品)が入手可能。

https://www.denon.jp/jp/product/accessories/cartridges/dl103
放送局でも使われた国産の定番カートリッジ DL-103。

https://www.ortofon.jp/product/1/51
MC型カートリッジの祖にして、今だに高い人気を誇るSPUカートリッジ。

https://www.audio-technica.co.jp/atj/show_model.php?modelId=1448
ほぼ唯一ともいえる普及価格帯のフォノイコライザーを今でも作り続けているオーディオテクニカ。

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