メディアで取り上げられることが多い分、日本のピアニストは知名度が高めですが、海外の若手ピアニストを知る機会は少ないのではないでしょうか?
世界で活躍するピアニストは、音楽の中心地ヨーロッパはもちろん、中国やロシア出身の演奏家も多くいます。特に若手ピアニストは、高い技術力と表現力を持っており心打たれる演奏が特徴的です。
そこで今回は、海外の若手ピアニスト8人を紹介します。いずれも傑出した演奏家ですので、ぜひ参考にしてみてください。
チョ・ソンジン
チョ・ソンジンはソウル出身の韓国人ピアニストです。
1994年生まれで、6歳からピアノを始め、15歳の時に第7回浜松国際ピアノコンクールで最年少優勝者となります。2011年チャイコフスキー国際コンクール第3位入賞後、2015年の第17回ショパン国際ピアノコンクールで優勝し、一躍有名になりました。
11歳で初めて開いた彼のリサイタルは高い人気を誇り、これまでにカーネギーホールやサントリーホールなど著名な会場で行われています。
また、ロンドン交響楽団やルクセンブルク・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団といった世界最高峰のオーケストラとのとの共演も果たしています。
このように華々しい活躍を見せるチョ・ソンジン。知性と情熱が共存した彼の演奏からは、冷静でありながら溢れる思いを感じ取れます。圧倒的なテクニックもさることながら、その幅広い表現力は、たった1音で別世界へと連れていってくれるほどです。
ユジャ・ワン
中国人ピアニスト、ユジャ・ワンは、超絶技巧と豊かな表現力、さらにカリスマ性を兼ね備えています。海外で活躍するピアニストの中でもトップレベルの知名度と人気を誇るほどです。
1987年生まれの彼女は、6歳からピアノを始め、北京の中央音楽院やフィラデルフィアのカーティス音楽院で学びました。その後、1999年カルガリーのコンチェルト・コンペティションや2002年アスペン音楽祭コンチェルト・コンペチションなどで優勝するなど、学生時代から華々しい活躍をしています。
そんなユジャ・ワンが一躍有名になったきっかけは、オタワ・ナショナル・アーツ・センター管弦楽団と行ったメジャーデビューコンサートです。その演奏を聴いたカナダの記者が「スターの誕生」と評したことで、世界中で注目を集めるようになりました。
彼女の演奏は、情熱的かつ人間離れした技術力が魅力で、クラシックファンから初心者まで全ての人を魅了します。プロの演奏家でも難しいといわれるリムスキー=コルサコフ作曲「熊蜂の飛行」の演奏は、まさに圧巻。演奏時には派手なデザインやカラーのワンピースを着ることが多く、個性的で唯一無二です。パフォーマンスのような音楽を聴きたい方は、ユジャ・ワンの演奏がおすすめです。
ラン・ラン
ラン・ランは中国出身の男性ピアニストです。
1982年に生まれ、3歳からピアノを始めて2年後には瀋陽ピアノコンクールで優勝するなど、幼少期からその才能を開花させています。その後も、第2回チャイコフスキー青少年音楽家コンクールや第4回エトリンゲン青少年ピアノコンクールで優勝しました。
15歳でフィラデルフィアの名門カーティス音楽院へ入学すると、17歳のときに代役演奏で出演した「世紀のガラ・コンサート」で評価を高め、一躍有名になりました。
彼の演奏は、自由でありながら緻密に作りこまれており、どんな曲でも自分のものにしてしまいます。また、演奏中の表情が魅力的で、音楽への愛や敬意が感じられます。
クラシックコンサート以外にも演奏を行っていて、グラミー賞授賞式では、アメリカのヘヴィメタルバンド「メタリカ」や歌手「ファレル・ウィリアムス」などと共演し、大きな話題を呼びました。
ダニール・トリフォノフ
1991年生まれのダニール・トリフォノフは、ニジニ・ノヴゴロド出身のロシア人ピアニストです。10代から国際コンクールで活躍し、第4回スクリャービン国際コンクールで第5位、第3回サンマリノ・国際ピアノコンクールで第1位といった実績を持ちます。
クリーブランド音楽院に在学中には、第16回ショパン国際ピアノコンクールで第3位、第14回チャイコフスキー国際コンクールで第1位を獲得し、プロとしての道を歩んでいきました。
高い感受性と表現力から生み出される彼の音楽は、世界屈指のピアニスト達も絶賛するほどです。世界的女性ピアニストのマルタ・アルゲリッチは、「やさしさも悪魔的な一面も彼はすべて持ち合わせている。こんな素晴らしい演奏、今まで聴いたことがありません」と高く評価しています。
これまでにシカゴ交響楽団やベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との共演も果たし、海外の若手ピアニストの中でも勢いのある演奏家ダニール・トリフォノフ。20代の頃から日本でもコンサートを行っているため、今後も演奏を聴く機会があるでしょう。
ベンジャミン・グローヴナー
イギリス生まれのピアニストであるベンジャミン・グローヴナーは、BBCヤング・ミュージシャン・オブ・ザ・イヤーにて史上最年少の11歳で優勝し、一躍注目を浴びました。
1992年生まれの彼は13歳で協奏曲デビューを、20歳でアルバムデビューをするなど若くから輝かしい活躍をしており、イギリスの天才ピアニストと呼ばれています。リサイタルではジャズの要素を含むカプースチンの「エチュード」を完璧なテクニックで披露し、神童としてさらに注目されました。
彼の演奏は作曲家のセオリーを逸脱せずに練り上げられており、曲の良さを最大限に引き出しています。さらに、あるインタビューで「ピアノは自分の指の下にオーケストラがあるようなもの」と語った通り、彼の音色は驚くほど豊富です。
クラシック音楽のよさを味わいたい方は、ベンジャミン・グローヴナーの演奏を聴くとよいでしょう。
アリス紗良オット
アリス紗良オットは、ドイツ人の父と日本人の母の間に生まれたミュンヘン出身のピアニストです。1988年に生まれ、これまでに10以上の国際コンクールで受賞してきました。
現在、世界で最も多忙なピアニストといわれるほど活躍し、演奏のほか、ブランドへのデザイン提供やアンバサダー就任などさまざまな活動を行っています。
彼女の演奏は繊細かつ情熱的で、1音1音に熱い思いが込められています。演奏はもちろん、弾いている姿も美しく、惹き込まれること間違いなしです。
また、その生い立ちもあって日本のテレビ番組への出演も多く、情熱大陸やセブンルールなどで取り上げられています。セブンルールでは、本番前のルーティンとしてルービックキューブをしたり家でサザンオールスターズを聴いたりと、洗練された演奏とはかけ離れた一面を公開し、話題になりました。
2019年に難病である多発性硬化症を発表した後、闘病を乗り越えさらにパワーアップしたアリス紗良オットの演奏からは、その強い人間性も感じ取ることができるでしょう。
アレクサンドル・カントロフ
アレクサンドル・カントロフはフランス出身の若手ピアニストです。1997年生まれの彼は、ヴァイオリンの巨匠ジャン=ジャック・カントロフを父に持ち、幼少期はパリ国立高等音楽・舞踊学校やエコール・ノルマル音楽院で技術を学びます。
その後、22歳という若さでフランス人として初めてチャイコフスキー国際コンクールで優勝を果たしました。
これまでにベルン交響楽団やソフィア・フィルハーモニー管弦楽団、そして関西フィルハーモニー管弦楽団と一緒に演奏した経験があります。アルバムも数多く発売しており、海外ピアニストの中でも勢いのある若手演奏家として頭角を現しています。
彼の演奏は、技巧的でありながら豊かな表現で、胸が熱くなるのが特徴。透き通った音から重厚な音まで多彩に表現しきっており、常にその曲にふさわしい音がホール中を包み込みます。
来日回数は少ないものの、今後の活躍が期待される有望な演奏家です。
ユリアンナ・アヴデーエワ
ユリアンナ・アヴデーエワは、1985年モスクワ生まれのロシア人ピアニストで、5歳からグネーシン特別音楽学校でピアノを学ぶなど、幼少期から才能溢れる人物です。
チューリヒ芸術大学をトップレベルの成績で卒業後、2008年からコモ湖国際ピアノアカデミーで研鑽を積み、高い技術力と表現力を身に着けました。
これまでに、2006年ジュネーブ国際音楽コンクール第2位(1位なし)、2007年パデレフスキー国際ピアノコンクール第2位、2010年ショパン国際ピアノコンクール第1位など、世界的に有名なコンクールで数々の受賞歴があります。
中でもショパン国際ピアノコンクールでは、世界的ピアニストのマルタ・アルゲリッチ以来45年ぶりの女性ピアニスト優勝者として一躍有名になりました。
彼女の演奏は自然で聴きやすく、素直な音楽の中から垣間見える確かなテクニックと表現に圧倒されます。リサイタルではショパンやラヴェルのほか、モーツァルトやバッハなど様々な年代のクラシック曲を演奏するなど、こだわりのプログラムが魅力的です。
まとめ
今回は、世界で活躍する海外若手ピアニスト8人を紹介しました。
どのピアニストも素晴らしい表現力とテクニックで、演奏を聞けばきっと感動するでしょう。来日するピアニストが多いので、生の演奏を聴きに行くのがおすすめです。
ぜひ本記事を参考に、お気に入りの海外若手ピアニストを見つけてクラシック音楽を楽しんでいただければと思います。
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