パーカッションは打楽器と和訳されますが、「打つ」以外にも「振ったり」「擦ったり」するものも、これに含まれます。人間の体だってパーカッションになりますし、人類が初めて作った楽器も打楽器なのだそう。

そんなパーカッションは、世界中に1,000種類以上あるとされるのを知っていますか?比較的簡単な構造をしているため、バリエーションが生まれやすいんですね。

本記事ではパーカッションの中でも、クラシック・吹奏楽・マーチングでよく使われるものを紹介していきます。

案内人

  • 北村萌吹奏楽にて12歳より打楽器を始め、14歳からは学外でマリンバの個人レッスンを受ける。
    神戸山手女子高等学校音楽科を経て同志社女子大学学芸学部音楽学科演奏専攻管弦打楽器コースを卒業したのち スイスに渡り、
    Conservatorio della Svizzera Italiana(スイス・イタリア音楽院)にて研鑽を積む。(修士課程)

    詳しくはこちら

パーカッションは種類が豊富

冒頭でお話した通り、パーカッションの種類は多岐にわたります。太鼓や銅鑼、トライアングル、カスタネット等のほか、叩くなり擦るなりすると音がなるという性質上、私たちの身体も打楽器になりうるのです。

珍しい例として、チャイコフスキーは大砲を打楽器として曲に取り入れました。現代音楽やポピュラーミュージックでは、ドラム缶や鉄パイプなんかも用いられます。

また、パーカッションはリズムだけでなく、音の高低の使い分けによってメロディやハーモニーまで生み出せます。パーカッションのみからなる楽団もあるほど、楽器として多様性に富んでいるのです。

クラシックで使われることが多い打楽器

クラシックにおける打楽器は、オーケストラの核になるリズムを担当することが多いです。また、華やかな音色の小物楽器で印象的なアクセントを添えることも。

クラシックでよく使われるのは、例えば以下のような打楽器です。

ティンパニ

ティンパニは、オーケストラで「第二の指揮者」と呼ばれる、打楽器の王様的存在です。舞台の一番後ろから、指揮者に代わってオケ全体を先導することもあります。

ティンパニは「膜鳴楽器(まくめいがっき)」と呼ばれる打楽器の種類の一つ。多くの膜鳴楽器は胴体に貼られた皮をチューニングして音の高さを変えますが、ティンパニでは付属のペダルによって音程を簡単に上下させられます。これにより、音程感がはっきりしているのが特徴です。

基本的には大きさの異なる2〜4台を並べて演奏します(多ければ7台並べて演奏することも)。

<費用相場>
50万円〜1,200万円(4〜5台揃えて)
皮の張り替えが定期的に必要で、ヘッド(皮のこと)は一枚1~2万円が相場です。

鍵盤打楽器


マリンバソロ


合奏での鍵盤楽器

バチ(マレット)を使って鍵盤を叩く鍵盤打楽器も、オーケストラではよく使われます。代表的なのは、金属製のグロッケンシュピールやビブラフォン、木製のシロフォンやマリンバなど。鉄琴や木琴という名前で知っている方も多いのでは。

合奏においては、メロディを弦楽器や管楽器とともに演奏したりして、オケ全体にアクセントをつける役割を主に担います。あまり知られていませんがソロの楽曲も多く、特にマリンバに関しては数多くのソロコンクールが存在します。

<費用相場>
グロッケン:3万〜50万
ビブラフォン:20万〜100万円
シロフォン:15万〜50万
マリンバ:40万〜300万

タンバリン


動画の23秒あたりからはタンバリンのアップ映像も。タンバリンのみならず、同じ打楽器のカスタネットも大活躍ですので、そちらにもご注目ください!

タンバリンは、誰もが学校の音楽室で触れたことがあるのではないでしょうか。一般的には胴のまわりに小さなシンバルが付けられ、鼓面には皮が貼られていますが、シンバルではなく鈴だったり、皮がなかったりと、いくつかのバリエーションがあります。

オーケストラの楽曲でタンバリンが登場すると、あの小さな楽器一つで華やかにも不気味にも、さまざまな印象へガラっと変えることができます。

<費用相場>
1,000円〜5万円

【おまけ】演奏に不可欠なバチ

打楽器といえば、手だけでなくバチで演奏するイメージも強いはず。

ドラムセットやスネアドラムを演奏する際のものはスティック、ティンパニや鍵盤楽器に使われる先端に毛糸のヘッドがついているものをマレットといいます。いずれのバチも、重さ・柄の種類・長さ・材質・形などによって叩いたときの音がかなり変わります。

曲に合わせて何種類も購入することになるため、打楽器奏者はバチのコレクターともいえます。

<費用相場>
スティック:数百円〜1万円
マレット:3,000円〜数万円

吹奏楽で使われることが多い打楽器

吹奏楽における打楽器は、オーケストラに比べて楽器数や演奏人数がより必要なことが多く、リズムを担当するのはもちろん、楽曲全体を派手で華やかに仕上げるのも役割になります。

よく使われるのは、以下のような楽器です。

ドラムセット

吹奏楽はもちろん、ポップスからジャズまで、いろいろなジャンルに登場するドラムセットももちろん打楽器。多種多様な打楽器を組み合わせ、両手両足を駆使して演奏します。ドラムの役割は、バンドの核となるリズムを刻み、ビートを作ることです。

少し変わったドラムセットも紹介しますね。上の動画を見てみてください。

あらかめプログラミングした音をドラムの電子部分に組み込むことで、すべてを1人で演奏するワンマンオーケストラです。組み合わせの自由度が高く、両手両足を駆使できるドラムセットならではの進化でしょう。

<費用相場>
5万〜150万
さまざまな楽器を組み合わせるので値段はピンキリです

ボンゴ・コンガ

ボンゴとコンガは、どちらも水牛の皮を使用した楽器で、吹奏楽ではポップスの楽曲でよく登場します。片手で持ち運べるくらいの大小二つの太鼓がつながっている方がボンゴ。縦長の樽状のものをコンガと呼びます。

基本的には手で演奏され、スラップなど意外と多くの奏法があるのが特徴。一人で幅広いリズムを表現できる、奥の深い楽器です。

<費用相場>
ボンゴ、コンガ共に:5,000円〜5万円

ウッドブロックなど小物

小物の打楽器たちも外せません。数え切れないほどの種類が存在しますが、先に紹介したタンバリンやトライアングルは特に有名ですね。

吹奏楽ではウッドブロックもよく使われます。よく通る音のする木製のパーカッションです。ほかにも、振って音を出すマラカスや、ギコギコと擦るギロ、「カーッ」という水戸黄門のテーマでおなじみの音が出るビブラスラップなども。

ドラムセットの一部に組み込まれることもあり、演奏で主役になることはなくとも、楽曲にアクセントを加えるスーパーサブ的な役割が多いです。

<費用相場>
筆者自身も知らない楽器が多いので相場は明記できませんが、12万円のトライアングルは見かけたことがあります

マーチングで使われることが多い打楽器

以下はクラシックや吹奏楽でもよく出てくる楽器ですが、今回はマーチングというジャンルにて紹介します。

スネアドラム


マーチングスネアドラムのパフォーマンス


クラッシックでのパフォーマンス。マーチングとの音質の違いを感じ取っていただけるかと思います

スネアドラムは、いわゆる小太鼓のこと。マーチングに限らずですが、主にリズムを作る楽器ですね。音の通りが良いため、細かいリズムを演奏することが多いです。

<費用相場>
1万〜50万

バスドラム


先に紹介したスネアドラムとの対比がわかりやすい動画。使用しているのはどちらもマーチング用です

バスドラムは大太鼓のこと。バンド全体の芯になる太めの音を、大きめのマレットで奏でます。なかなか注目してもらえませんが、リズムの根底を支える重要な楽器です。

<費用相場>
5万〜50万円

シンバル

二枚の金属を合わせて華やかな音を出すシンバルは、ここぞという時、楽曲に彩りを添えます。マーチングではバスドラムと共に拍を打つことが多く、キラキラ輝く見た目をしているため、目で楽しめるパフォーマンス性も注視されます。

ちなみに、オーケストラでは30分待ってようやく一発だけ出番があったりなど、その一瞬の華やかさのためだけにすべてをかける、まさに職人。

<費用相場>
1万〜10万

まとめ

今回は、音楽ジャンルごとによく使われるパーカッションを紹介しました。

今度、音楽を聴く際には、打楽器の音色に耳を傾けてみてください。今まで意識していなかった彩りやリズム感に気づき、楽曲の楽しみ方が増えると思いますよ。

本記事をきっかけに、打楽器の魅力に興味を持っていただければ嬉しいです。