日本を代表する作曲家・合唱指揮者である松下耕。音楽の授業や合唱コンクールなどで一度は耳にしたことがある名曲『信じる』も、松下氏の作品です。

  • 松下耕ってどんな人?
  • 松下耕はどんな曲を作ってる?
  • 松下耕の曲の特徴や魅力を知りたい!

本記事では、このような疑問にこたえ、松下氏の経歴や作風、代表作を詳しく紹介します!人気曲を数多く生み出す松下耕の人物像や名曲誕生の背景も知ることができるので、ぜひチェックしてみてくださいね。

案内人

  • 山吹あや幼少期からピアノ、中学校からサックス、高校から声楽を始め、地方国立大学教育学部音楽専攻へ進学。中学校では合唱部顧問を担当し、県大会を通過し関東大会に多数の出場経験がある。

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松下耕の経歴

国立音楽大学講堂

1962年に東京で生まれた松下耕は、国立音楽大学作曲学科を首席で卒業し、卒業後はハンガリーへ留学して合唱指揮法や作曲法を学びました。

帰国後は合唱作品を精力的に発表するとともに、数多くの合唱団の音楽監督や指揮者として活躍しています。

主な受賞歴は下記の通りです。

  • 1994年 バルトーク国際合唱コンクール 優秀指揮者賞
  • 2001年、2005年 マルクトオーバードルフ国際室内合唱コンクール カール・オルフ作曲賞
  • 2003年 ブダペスト国際合唱コンクール グランプリ 最優秀指揮者賞
  • 2005年 ロバート・エドラー合唱音楽賞 (アジア人初受賞)

2001年には松下耕が音楽監督や常任指揮者を務める合唱団で構成された「耕友会」を結成。2017年には合唱音楽の普及・振興を図るための「東京国際合唱機構」を設立するなど、日本の合唱界を牽引する存在として活躍しています。

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松下耕の作風

松下耕の合唱作品は、和音の響きの美しさを重視した作風が特徴的です。ハンガリーから帰国後は純正律を用いた無伴奏合唱作品を中心に作曲しており、2000年代以降はピアノ付きの合唱作品も増えています。

松下氏はできるだけ多様なタイプの合唱曲を書きたいという思いから、自身の作品を5種類に分類しています。

  • 日本固有の音組織を用いた楽曲
  • ラテン語のテキストによる宗教的作品
  • 合唱団の技術向上を狙った練習曲
  • 誰が聴いても楽しい、エンターテインメント性の高い作品
  • 以上のどれにもあてはまらない作品

NHK全国学校音楽コンクールの課題曲を多数手がけたり、日本各地の民謡を素材にした合唱曲を手がけたりと、幅広いジャンルの合唱曲を作曲。作品のほとんどは合唱曲ですが、サクソフォーン四重奏曲やオーケストラ作品、オルガン作品などの器楽曲も手がけています。

松下耕の代表曲

ここでは松下耕の代表曲を6曲紹介します。ぜひ聞いてみてくださいね。

信じる

第71回NHK全国学校音楽コンクール(2004年)において、中学校の部の課題曲として作曲された楽曲です。コンクール後も根強い人気を誇り、現在も全国の中学校で歌われています。

中学生でも理解しやすいシンプルな言葉の中に、信じることの根幹に迫るメッセージが込められてる歌詞が特徴的で、作詞を担当した谷川俊太郎は、「信じる行為そのもの」を詩の中心としていると話しています。

楽曲はシンプルな三部形式です。冒頭は変ニ長調のあたたかな雰囲気で始まり、中間部はニ短調へと劇的に転調、再び変ニ長調へと戻ります。終盤には声部ごとに異なる旋律を歌うポリフォニックなハーモニーが楽曲を盛り上げます。

言葉にすれば

第74回NHK全国学校音楽コンクール(2007年)において、高等学校の部の課題曲として作曲された楽曲です。ゴスペラーズとの共同制作で、同グループの安岡優が作詞を、安岡優と松下耕が作曲を担当しています。

賛美歌のようなアカペラのハーモニーから始まり、ソロパートを経てポップス特有のシンコペーションが多用された曲調へと変化していきます。松下氏自身が「自分たちなりにポップに崩した演奏を」と語っており、楽譜に書かれたリズムを正確に歌うのではなく、ポップスのノリで軽快に歌うことがポイントの楽曲です。

ヒカリ

NHK全国学校音楽コンクール第70回記念として一般公募され、優秀作品となった瀬戸沙織の詩が用いられた楽曲です。中学生向けの混声三部合唱曲として作曲され、後に混声四部合唱版も出版されています。

冒頭は不安や孤独を描いたニ短調の4分の4拍子から始まり、8分の6拍子へと変化していきます。中盤でヘ長調に転調し、だんだんと希望の光が差していくように展開されていくのが特徴的です。

そのひとがうたうとき

兵庫県立芦屋高等学校の委嘱で作曲され、1998年に初演された楽曲です。混声版が出版された後に女声版と男声版も続けて出版され、さまざまな世代で広く歌われています。

平和への祈りが綴られた谷川俊太郎の詩は、漢字は一切使われておらず、ひらがなのみで書かれているのが大きな特徴です。この詩は作曲家の木下牧子も合唱曲として付曲しています。

世界中のさまざまな場所のさまざまな立場の人たちの平和と幸せを願うように、壮大なスケールで楽曲が展開していきます。

ほらね、

東日本大震災の被災地を歌で応援しよう、歌で日本をつなげようという、カワイ出版による企画である「歌おうNIPPONプロジェクト」のために書き下ろされた楽曲です。

合唱指揮者の伊東恵司が作詞を手がけており、人々の心に寄り添うあたたかい歌詞が特徴的です。子どもから大人まで誰にでも歌いやすい明快な曲調で、幅広い世代に愛されています。学校のクラス合唱でも取り組みやすく、人気のある一曲です。

俵積み唄

混声合唱とピアノのための四つの日本民謡『北へ』の中の1曲で、青森県の民謡を素材として作られた楽曲。中高生に特に人気があり、コンクールや演奏会など、多くの学校で演奏されています。

日本民謡ならではのかけ声や合いの手を用いつつ、ジャズのテンションコードやロックのアップビートも取り入れており、様式にとらわれない自由な曲調になっています。リズミカルな日本語のテキストと鮮烈なピアノがマッチし、スピード感や力強さが印象的です。

まとめ

本記事では松下耕の経歴や作風、代表作を紹介しました。気に入った楽曲はありましたか?「曲名は知らなかったけど聞いたことがあった」「こんな経緯で作られたんだ」など、きっと新しい発見があったと思います。

松下耕が手がけた名曲はまだまだたくさんあるので、ぜひお気に入りの一曲を見つけてみてくださいね。