アメリカを代表するピアノコンクール「ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール」には、13~17歳限定のジュニア向け大会が存在するのをご存知でしょうか。熾烈な競争を勝ち抜いた24人の若きピアニストが、ファイナリスト3名の座を目指してダラスの舞台に立ちます。

今年6月には、当大会の第3回が開かれる予定です。本記事ではコンクールの概要やレベル、日程、課題曲といった情報を紹介していきます。

ヴァン・クライバーン国際ジュニアピアノコンクールとは?

© Wikimedia Commons|Photo by Jack de Nijs in Amsterdam (1966)

そもそもヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールは、アメリカの名ピアニスト、ヴァン・クライバーンの名を冠した大会です。

1958年の冷戦真っ只中の時代、モスクワで開催された第1回チャイコフスキー国際コンクールにて、彼はソ連のピアニストたちを制し見事優勝しました。当時の情勢を考えると、アメリカ人がソ連のコンクールで優勝することの意義や価値は大きく、クライバーンは一躍アメリカの国民的英雄、そしてクラシック界の国際的スターになりました。

そんな彼の功績を記念して1962年にはじまったのが、ヴァン・クライバーン国際コンクールです。大会は4年に1度開催されており、2009年には辻井伸行さんが優勝したことで、日本においても大きな話題となりました。

同ジュニアピアノコンクールは、プロを目指す若きピアニストに次への足掛かりとしてもらいたいという願いから2015年にはじまりました。参加資格は13~17歳のピアニストです。こちらも4年に1回の開催ですが、本家とは年をずらして開催されています。

ヴァン・クライバーン国際ジュニアピアノコンクール公式サイト

大会のレベル

ヴァン・クライバーン国際コンクール自体が、三大ピアノコンクール(ショパン国際ピアノコンクール、チャイコフスキー国際コンクール、エリザベート王妃国際音楽コンクール)と並ぶほどハイレベルです。

そして、いずれは本家に挑戦するであろう若き奏者が集まるのがジュニアピアノコンクールであり、相当に熾烈な競争が繰り広げられています。この年代を対象としたコンクールでは、世界トップクラスといってよいでしょう。

過去の主な入賞者

2019年大会

第1位:Shuan Hern Lee(オーストラリア)
第2位:Eva Gevorgyan(ロシア/アルメニア)
第3位:JiWon Yang(韓国)

2019年 第1位 Shuan Hern Lee(オーストラリア)|演奏動画

2019年 準決勝|演奏動画

2015年大会

第1位:Alim Beisembayev(カザフスタン)
第2位:Arsenii Mun(ロシア)
第3位:Youlan Ji(中国)

2023年には第3回大会が開催!

2023年には第3回大会が開催されます。ここからは、コンクールの流れや日程、課題曲などを紹介していきます。

2023年ヴァン・クライバーン国際ジュニアピアノコンクールの流れ

応募については、2023年1月10日に締め切られています。44か国から248人の若いピアニストがオンラインで応募し、予選に臨む24名が選ばれました。

6月には予選、準々決勝、準決勝、決勝の流れで選考が行われます。

2023年ヴァン・クライバーン国際ジュニアピアノコンクールの日程と会場

選考ステージ

日程

会場

予選

6月8~9日

メドウズ スクール オブ ジ アーツ、カルート講堂(テキサス州)

準々決勝

6月10~11日

同上

準決勝

6月14~15日

同上

決勝

6月17日

モートン H. マイヤーソン、シンフォニーセンター(テキサス州)

2023年ヴァン・クライバーン国際ジュニアピアノコンクールの課題曲

予選

20分以内のリサイタルを行う。リサイタルには以下の曲が含まれている必要があり、残り時間についてはピアニストが選択できる。

1.3声または4声のバッハのプレリュードとフーガ1曲

2.高速かつ高度な技術を要するエチュード1曲(クライバーン財団の承認が必要)

準々決勝

30分以内のリサイタルを行う。リサイタルには以下の曲が含まれている必要があり、残り時間についてはピアニストが選択できる。なお、予選のレパートリーを繰り返すことはできない。

1.夜想曲、間奏曲、または無言歌に類する、ゆっくりとした叙情的な作品1曲(クライバーン財団の承認が必要)

2.以下のクラシックソナタいずれかの、最初または最後の楽章(ソナタはすべて演奏できる)

・ハイドンのソナタいずれか

・モーツァルトのソナタいずれか

・右のベートーヴェンのソナタいずれか

ソナタ第1番 ヘ短調 op.2 No.1

ソナタ第2番 イ長調 op.2 No.2

ソナタ第3番 ハ長調 op.2 No.3

ソナタ第4番 変ホ長調 op.7

ソナタ第5番 ハ短調 op.10 No.1

ソナタ第6番 ヘ長調 op.10 No.2

ソナタ第7番 ニ長調 op.10 No.3

ソナタ第8番 ハ短調 op.13「悲愴」

ソナタ第9番 ホ長調 op.14 No.1

ソナタ第10番 ト長調 op.14 No.2

ソナタ第11番 変ロ長調 op.22

ソナタ第12番 変イ長調 op.26

準決勝

フェーズ1とフェーズ2、それぞれ以下の課題を演奏。

フェーズ1

以下を含む40分間のリサイタルプログラムを演奏する。

 

1.存命の作曲家による1曲

2.16分以上の大作1曲

 

プログラムの残り時間についてはピアニストが選択できる。なお、予選および準々決勝のレパートリーを繰り返すことはできない。

フェーズ2

クライバーン財団が審査員と協議して決定した、協奏曲の1つの楽章をピアノ伴奏で演奏する。クライバーン財団は伴奏者を提供する。

決勝

3名のファイナリストは、次のリストから選択された協奏曲をダラス交響楽団とともに1曲演奏する。

・ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 op.15

・ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 op.19

・ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 op.37

・ショパン/ピアノ協奏曲第1番ホ短調 op.11

・ショパン/ピアノ協奏曲第2番ヘ短調 op.21

・グリーグ/ピアノ協奏曲 イ短調 op.16

・リスト/ピアノ協奏曲第1番変ホ長調 s.124

・リスト/ピアノ協奏曲第2番 イ長調 s.125

・メンデルスゾーン/ピアノ協奏曲第1番 ト短調 op.25

・モーツァルト/ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 K.271

・モーツァルト/ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K.453

・モーツァルト/ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467

・モーツァルト/ピアノ協奏曲第26番 ニ長調 K.537

・モーツァルト/ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K.595

・ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲 op.43

・ラヴェル/ピアノ協奏曲ト長調

・プロコフィエフ/ピアノ協奏曲第1番 変ニ長調 op.10

・サン=サーンス/ピアノ協奏曲第2番 ト短調 op.22

・クララ・シューマン/ピアノ協奏曲 イ短調 op.7

・シューマン/ピアノ協奏曲 イ短調 op.54

2023年ヴァン・クライバーン国際ジュニアピアノコンクールの結果

コンクールの結果は、詳細が分かり次第、当サイトにて紹介予定です。

2023年ヴァン・クライバーン国際ジュニアピアノコンクールのチケット情報

現地へ聴きに行かれる方は、チケット情報について公式サイトをご確認ください。

また、本家であるヴァン・クライバーン国際コンクールは毎回ライブ配信されており、ジュニアピアノコンクールについてもライブ配信される可能性があります。随時公式サイトをチェックしてみてください。

まとめ

今回は2023年の第3回ヴァン・クライバーン国際ジュニアピアノコンクールについて、概要や日程、課題曲などを紹介しました。

24人の挑戦者には、日本の菅原千尋さんと大山桃暖さんが含まれています。持てる才能を存分に発揮し、この大会を機に世界へ羽ばたいてほしいですね。