オペラは音楽、演劇、美術などが集結して舞台を創り上げていく総合芸術です。磨き上げられた技術・芸術の集大成と言ってもいいでしょう。
今回は、そんなオペラの魅力が伝わる作品を7つご紹介します!
「オペラは長そうだし内容も難しそう…」そう思っている方も大丈夫。有名曲について解説付きでご紹介しますので、ぜひ気軽に最後まで読んでみてくださいね。
案内人
- 林和香東京都出身。某楽譜出版社で働く編集者。
3歳からクラシックピアノ、15歳から声楽を始める。国立音楽大学(歌曲ソリストコース)卒業、二期会オペラ研修所本科修了、桐朋学園大学大学院(歌曲)修了。
目次
知っておきたいオペラの有名曲7選
本記事では、オペラの花形であるアリアをはじめ、重唱や合唱もご紹介します。
時代は古典から20世紀まで、イタリア語、ドイツ語、フランス語から選んでいます。それぞれの違いを感じながら聴いてみるのも面白いでしょう。
①復讐の炎は地獄のように我が心に燃え/モーツァルト『魔笛』より
夜の女王が実の娘パミーナに「父親ザラストロを殺害せよ」とナイフを渡して迫るシーンが印象的な作品。衝撃的な歌詞や強い復讐心を表現するために、高音の連続や、細かに動くフレーズなど、一般人では歌えないような超絶技巧が要求されます。オペラは観たことがなくてもこの曲は聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
魔笛について
モーツァルトの生涯最後の作品です。王子タミーノが夜の女王の娘パミーナを得るためにさまざまな試練を乗り越えていくファンタジーの物語。秘密結社フリーメーソンの思想も関連するためやや理解しづらい場面もありますが、魔笛の魅力はなんといっても魅力的な音楽です。美しい音楽がちりばめられ、最後まで目が離せないストーリーとなっています。
②あの方の声の優しい響きが〜香炉がくゆり(狂乱の場)/ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』
新婚の床で夫を殺害してしまったルチアは、血まみれで狂乱状態になりながら、エドガルドとの思い出を美しく歌います。フルート(グラスハーモニカ)を伴って歌い上げる旋律は、今にも壊れてしまいそうなほど儚く繊細で、その音楽の美しさがより一層深い悲しみを感じさせます。難度の高い歌唱力と演技力が求められる、プリマドンナの代表的なアリアです。
ランメルモールのルチアについて
舞台は17世紀のスコットランド。ルチアとエドガルドは恋人同士で密かに結婚の約束をしますが、実は二人の家は先祖代々領地争いのため敵対関係にありました。兄エンリーコによって実行された政略結婚をきっかけに、悲劇が展開されていきます。ガエタノ・ドニゼッティの代表作であり、最高峰のイタリアオペラのひとつです。
③凱旋行進曲/ヴェルディ『アイーダ』
凱旋行進曲のシーンはオペラの見どころであるとともに、単独でも演奏機会の多い人気曲です。有名なサビのメロディは前にまっすぐに伸びた「アイーダ・トランペット」で演奏されます。大人数の合唱団、バレエ、大がかりな演出、大規模なオーケストラが集結して、エジプト軍の勝利を高らかに盛り上げます。
アイーダについて
イタリアの国民的オペラ作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディの後期作品です。スエズ運河開通の記念で、カイロ歌劇場で初演されました。エジプト軍の指揮官ラダメスと、敵国エチオピア軍の王女であり奴隷のアイーダとの悲恋の物語です。祖国を捨て、二人は永遠の愛を誓いながら天国へと旅立ちます。
④ぶどう酒の燃える流れに(シャンパンの歌)/ヨハン・シュトラウス2世『こうもり』
舞踏会の主催者であるオルロフスキー公爵が『シャンパンの歌』を歌い始めると、舞踏会の盛り上がりは最高潮を迎えます。第1幕の後半で登場人物たちはそれぞれ嘘をついて外出していくが、それはこの仮面舞踏会に参加するためで、仮装をして正体を隠しながら全員同じ場所へ集まってしまうのです。
こうもりについて
軽快な音楽を多く残したシュトラウス2世の喜歌劇です。ウィーンで活躍し、ワルツ王とも呼ばれています。物語は、以前こうもりの仮装姿で酔い潰れて置き去りにされた男ファルケが、その置き去りにした友人アイゼンシュタインへの仕返しを企むことで展開していきます。つい口ずさみたくなるような楽しいメロディも人気で、今でも上演機会の多い作品です。
⑤諸君の乾杯を喜んで受けよう(闘牛士の歌)/ビゼー『カルメン』
第二幕の酒場のシーンです。カルメンが踊っていると花形闘牛士のエスカミーリョが登場し、この曲を高らかに歌い上げます。エスカミーリョが彼女を見つけて口説くことで、ストーリーが展開していきます。堂々とした音楽と力強い歌詞が特徴です。
カルメンについて
フランスの作曲家ジョルジュ・ビゼーによる、華やかで生き生きとした音楽が繰り広げられるオペラです。舞台は1820年頃のスペイン・セビリア。自由奔放なカルメンと、婚約者がいながらもカルメンの誘惑に負けて心を掴まれてしまった兵士ドン・ホセの情熱のドラマです。闘牛士エスカミーリョが現れるとカルメンは心を移してしまいますが、それでもホセは彼女を追いかけ、嫉妬に狂い、悲劇を迎えます。
⑥愛らしい乙女よ/プッチーニ『ラ・ボエーム』
詩人ロドルフォとお針子ミミが出会い、恋に落ちるシーンの重唱です。灯りのない部屋で落とした鍵を手探りする二人が、手が触れ合った瞬間に恋に落ちます。お互いの境遇を話すうちに惹かれあい、この重唱では芽生えた愛を確かめ合います。胸の高鳴りを表すような音楽の展開と、二人の声が純潔なハーモニーを織りなす、幸せに満ちあふれた二重唱です。
ラ・ボエームについて
イタリアの作曲家、ジャコモ・プッチーニの作品。1830年代のパリが舞台の、愛と青春のドラマです。貧しくても陽気に暮らしている若き芸術家たちと、お針子のミミと歌手のムゼッタが、理想と現実に葛藤しながらも希望を持って自分の道を選んでいきます。2時間程度でストーリーがわかりやすく、美しく繊細なメロディが詰まった作品です。初めてのオペラ鑑賞におすすめです。
⑦マリー・テレーズ…、私が誓ったことは/R.シュトラウス『ばらの騎士』
物語の最後を飾る印象的なシーンで、「薔薇の騎士の三重唱」として知られています。青年貴族オクタヴィアンは元帥夫人マリー・テレーズとの情熱的な愛を楽しんでいましたが、貴族の娘ゾフィーが現れると一目惚れをして恋に落ちてしまいます。
この音楽は3人それぞれが複雑な想いを歌うところから始まり、やがて元帥夫人は自ら身を引き、若い2人が結ばれて幕となります。観終わったあとに芳香を感じるような、至高の名曲です。
ばらの騎士について
舞台は1740年のウィーン。瑞々しい恋と深い愛情のストーリーが豊潤な音楽で描かれる、リヒャルト・シュトラウスの大傑作です。ドイツロマン派オペラを代表する大規模作品で、多くの重唱や巨大なオーケストラによって音楽が最後まで途切れることなく、絶妙なハーモニーを紡ぎながらストーリーが進んでいきます。
まとめ
今回は各作品から1曲ずつのご紹介でしたが、ひとつの作品には時代を超えて愛され続ける魅力的な曲がたくさん詰まっています。
まさに、オペラは美しい音楽の宝庫。ぜひ皆さんも、さまざまな時代や国のオペラに出会い、感動体験を増やしてくださいね。