いよいよ2023年吹奏楽コンクールがやってきました。
今年度から課題曲は4曲になり、ますます他の団体と課題曲が被る確率が高くなりましたね。そのため、他と差をつけるためには演奏ポイントをしっかり押さえ、曲を自分たちのものにする必要があります。

本記事では、課題曲Ⅰ「行進曲 煌めきの朝」の演奏ポイントについて吹奏楽指導者協会・認定指導員の筆者が詳しく解説します。本番前のチェックポイントとしてもぜひご活用ください。

案内人

  • 川島光将指揮者・作曲家・編曲家 元・中学高等学校音楽教員、吹奏楽顧問 吹奏楽指導者協会・認定指導員 音楽表現学会会員 K MUSIC GROUP代表 現在はオーケストラ、吹奏楽、合唱、声楽など音楽全般の指導にあたる。

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2023年吹奏楽コンクール課題曲Ⅰ【行進曲 「煌めきの朝」】

第32回朝日作曲賞受賞作品。爽やかな課題曲マーチですね。四季の移ろいを感じさせる風景や、朝の太陽に照らされて煌めく水面からこの曲の着想を得たと言われています。

細かなアーティキュレーション指示があり、課題曲としても良い教材と言えるでしょう。

作曲者:牧野圭吾(まきの・けいご)
演奏時間:約4分

作曲家・ 牧野圭吾について

牧野さんはなんと現役の高校生です。3歳よりピアノ・エレクトーンを習い始め、現在に至るまでさまざまな作曲コンクールで賞を受賞しています。

「煌めきの朝」も、若い感性でキラキラとしたサウンドといった印象です。

演奏のポイント

参考音源を聴いていると、綺麗でとても演奏しやすそうなイメージですが、この曲はある意味かなり「難曲」と言えます。

奏者個々のスキルや、パートごとのバランスがかなり重要になってきます。
少子化で部員数が減っている学校は、マーチだからとこの曲を選ぶと、まとめるのに苦労するでしょう。

先ほどアーティキュレーションの話に触れましたが、DTMで作る音楽と、実際に現場で作る音楽はやや指示の出し方が違います。書かれているアーティキュレーションどおりに演奏すれば正解かと言われればそうではありません。それはもちろんダイナミクス(強弱)にも言えることです。

それでは具体的に曲を解説していきます。

出だし〜A

当然のことながら、トリルはしっかり合わせましょう。

複数の楽器のトリルは合わせにくいですが、しっかり回数も決めて耳にきつく聴こえないようにすると良いでしょう。

低音パートのテヌートは重く、アクセントは鋭く、歯切れよく演奏してください。

3小節目や7小節目のトランペットなどの金管のアーティキュレーションは、2拍目のアクセントが重要です。そのために前の音がスタッカートになっています。

打楽器は音の処理(長さ)に気をつけましょう。
全体的に言えることですが、長すぎると音が残ってバンド全体と合わなくなってしまいます。特に残響の多いホールは注意したいですね。

フルートとオーボエ、クラリネットはオクターブの関係になるので、支えとなるオーボエ、クラリネットにフルートが溶け込むようにしましょう。ビブラフォン、グロッケンがある学校は、そことのバランスも大事になってきます。

9小節目のメロディは面白いシンコペーションですね。スラーの最後の音が長くならないようにして、出だしの音をクリアにしましょう。

全体として15小節目に向けてクレシェンドがかかっていますが、このセクションのゴールは16小節目です。なので、ffになってから気持ちとしてはクレシェンドをかけて16小節目の頭に向かうイメージで演奏するのがベストです。

AからC

ダイナミクスがmpとなっています。音の大きさだけでなく音色を変えましょう。柔らかい音色にしてください。メロディは出だし大きなフレーズが8小節単位で作られていますが、その中にあるアーティキュレーションも大切に。スラーはスラー、逆にスラーが外れたところはしっかり切りましょう。

この曲は2/4で書かれていますが、曲の流れは今までの課題曲と同じ4/4に近いものがあります(2小節で1つの区切りのよう)。メロディの流れを大切にするなら、低音の拍ごとの刻みを重くしないほうが良いです。

28小節目からのクラリネット、サックス、トランペットは付点が長くならないように。タイで繋がっている音もそうですが、休符があるくらい短くて良いので次の音の入りをクリアにしましょう。

Bからの中低音の副旋律は豊かに演奏したいですね。
それまで和音を担当していたのに、急にキャラクターが変わるので注意です。ここはユーフォに音型を揃えて、柔らかいサウンドを目指しましょう。

Bからのグロッケンはかなり重要です。
書いてあるダイナミクスではなく、自分たちのバンドに合わせた音量で演奏しましょう。

41小節目からは複数のパートでメロディを担当します。同じ楽譜でもフルートと金管楽器が同じ長さや大きさで演奏するとまとまりのないサウンドになります。

低音や打楽器(バスドラ、シンバル)は2拍目の裏で入っていますね。
ここは前の音が長くなりすぎないように注意です。休符が入っているくらいでいいでしょう。

CからG

いつもの中低音メロディですね。
チューバやコントラバスは、トロンボーンに寄せる形で鋭く短く演奏してください。

全てにアクセントがついていますが、実際はそうではなく特に8分や16分音符が潰れないように注意しましょう。

Dは急に音が薄くなります。mpとなっていますが、バンドの人数によってはもう少しならしてもいいでしょう。

63、64小節目も先ほどと同じでクレシェンドはその前にかかっていますが、音楽が向かっている先はEです。

73小節目は、42小節目と同じように各パートのバランス、長さ、ダイナミクスに注意です。

Fは、82小節目ですでにffですが、85小節目はより大きく演奏するようにしましょう。

GからK

メロディのアーティキュレーションに注意です。
スタッカートが面白い位置にありますね。このオシャレな感じを演奏してみましょう。

ここでもやはり2小節単位で音楽が進んでいます。低音の演奏で音楽を作れると良いですね。

Hからはメロディの担当者が増えます。各パート同士で音色を溶け込ませて、素敵なサウンドにしていきましょう。

Iからフルートソロ!しかもかなりアーティキュレーションが難しいので、ここで諦めてしまったバンドも多いのではないでしょうか。ここはとにかく練習が必要です。

さらにJからはピッコロソロ。音が下がってのトリルはかなりの高難易度です。

Kから最後まで

156小節目のトロンボーンは難しいですね。刻みからいきなりのメロディです。ホルンを目立たせて、トロンボーンはKに備えておいた方がよいでしょう。

ここからまた転調で、フラット系の楽器にとってはやや演奏しにくいかもしれませんね。
Lのrit.は、あっさりで良いでしょう。和音進行はスムーズです。

Lの木管楽器と鍵盤楽器は、合わせるのがかなり難しそうです。焦らずしっかり合わせる練習をしましょう。

ここからは今までの復習のような場面です。これまで出てきた音型やテーマが再び現れます。音は違いますが、演奏の注意点はこれまでどおりです。

最後はユニゾンではなくハーモニーで終わるパターンです。和音のバランスに気をつけて、綺麗に響かせて終わりたいですね。

こんなバンドにおすすめ!

ある程度、演奏経験があり人数が揃っているバンドが良いでしょう。1パートひとりでは、かなりサウンド作りが難しそうです。

ただ、とても聴きやすい曲なので、多くの団体が課題曲として選ぶのではないでしょうか。

まとめ

「煌めきの朝」は、今までの課題曲マーチとは拍や調などが違っていますね。

実際に演奏してみると楽譜や参考音源では気づかなかった部分がたくさん出てくるでしょう。課題曲なので音の変更はできませんが、ダイナミクスなどは各団体の実情に合わせてカスタマイズしていきましょう。

どんな名演が聴けるのか今年も楽しみです!