豊かな音色や奏者の弾き姿が魅力的なチェロに憧れ、自分でも演奏してみたいと思っている方も多いのではないでしょうか?

  • 自分にもできる?
  • チェロを始める前に知っておいたほうがいいことは?
  • なんでチェロの音に惹かれるんだろう…?
  • チェロの種類は?

本記事では、これらの疑問にお答えしながら、チェロの歴史や構造、音楽における役割などを詳しくご紹介します!チェロの基本的な情報を知りたい方や、実際に始めたいと考えている方はぜひ参考にしてみてくださいね。

案内人

  • 阿久津美帆チェロ歴4年。また、これまでに楽器販売店で接客・販売業務を担当。現在はフリーwebライターとして、音楽(特にクラシック音楽)を中心に多ジャンルの記事を執筆している。好きな音楽家はブラームスとラフマニノフ。読書と映画鑑賞が趣味。

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チェロってどんな楽器?特徴や独自の魅力について

チェロが誕生した正確な時期は不明ですが、16世紀はじめには似た役割の楽器が使われ始めたと言われています。

当時は、ヴァイオリンの原型である「ヴィオラ・ダ・ブラッチョ」の低音楽器という分類だったようです。時代の移り変わりとともに改良が進み、19世紀後半には現在の一般的なチェロが完成しました。

現在のチェロは本体に4本の弦が張られており、それぞれC(ド)・G(ソ)・D(レ)・A(ラ)の音でチューニングを行います。

チェロの構造

チェロの構造
画像出典:Wikipedia

チェロの基本的な楽器構造はヴァイオリンやヴィオラとほとんど同じで、弦の素材もナイロンまたはスチールが使われています。大きく違うのは、弾き方です。楽器を肩や顎に挟むのではなく、チェロは本体下部に取り付けられているエンドピンを床に刺して演奏します。

チェロの音楽的な役割

クラシック音楽でのチェロは、低音パートとしてオーケストラ全体の響きを支えるのが主な役割です。

しかし、時には輝かしい音色で主旋律を奏でることも。サン=サーンスの「白鳥」、バッハの「無伴奏チェロ組曲」のような独奏曲や、オーケストラで演奏する曲でもチェロが活躍するものはたくさんあります。

また、クラシック音楽だけではなく、J-POPやロック、ジャズなど幅広いジャンルで活躍できるポテンシャルの高さもチェロの魅力と言えるでしょう。

チェロのサイズと重さ

チェロ

チェロの大きさは約75cmで、重量は約3.5kgです。

約75cmは通常(4/4)サイズの値ですが、分数サイズは1/10・1/8・1/4・1/2L・3/4・7/8・4/4と全部で7種類あります。

初心者はサイズに注目して選ぶ

チェロは椅子に座って身体で支えながら演奏するので、体格や身長に合った大きさの楽器を選ぶことが大切です。

大きすぎたり、反対に小さすぎたりするとバランスがとりにくく、正しい姿勢で演奏できなくなる可能性もあるため注意しましょう。姿勢が乱れると、曲の中で必要とされる音程や音量がしっかり出せなくなってしまいます。

可能なら実際に試奏してサイズを確認

購入前には、楽器店に直接行ってチェロの試奏をさせてもらうのがおすすめです。

まず、背筋を伸ばしてリラックスした状態で椅子に座り、ひざが直角に曲がっているかどうかをチェックします。チェロのボディ上部が胸骨に乗るように構えたら、左手が指板(ギターでいうフレット部分)に無理なく届くかどうか確認しましょう。

エンドピンで高さを調整しても違和感がある場合は、ひと回り大きい、あるいは小さいサイズを試してみてください。

チェロの音域とその音の魅力

チェロの音域はC1(ド)~G4(ソ)であり、ヘ音記号からト音記号までカバーできる幅の広さが特徴です。

低音楽器でありながら、音域は弦楽器群のなかでもヴァイオリンに次いで広いチェロ。豊かで安定感のある低音から、心情に訴えかけてくるような張りのある高音まで奏でることができるのも魅力の一つです。

チェロがもつ音楽表現の可能性

バロック時代のチェロは主に「通奏低音」と呼ばれる伴奏の役割を担っており、現在のクラシック音楽においても、オーケストラ内で低音部分を演奏する曲が多くあります。

一方、音域の広さを活かして主旋律を奏でたり、第2ヴァイオリン・ヴィオラと同じようにハーモニーの内声部を担当することも。

音楽を支える土台のような役割だけでなく、音楽に込められたメッセージを主役として聴き手に届けられるチェロは、音楽的な表現の幅がかなり広い楽器と言えるでしょう。

チェロが多くの人を魅了する理由

チェロは「男性の声に近い楽器」と言われており、優しく語りかけてくるような音色は多くの人を魅了し続けています。中低音域の重厚かつ艶やかな響きはチェロ最大の強みです。

また、前述したとおり弦楽器群のなかでも音域が抜群に広いため、ジャンルや楽曲によっては全く異なる表情を見せてくれるのもチェロの魅力です。

チェロを始める前に考えること

チェロを始める

次に、これからチェロを始めたい人がしておくべきことや、チェロに向いている人の特徴を紹介します。

チェロを始める前の心がまえ

チェロ本体の価格は、初心者用の安いもので10~30万円ほどです。初心者用の楽器でも問題なく音は鳴らせますが、少しでも素材が良く長持ちするものを選びたい人は、本体だけで50万円程度の予算を確保しておくことをおすすめします。

また、チェロはヴァイオリンよりも大きな音が出る楽器なので、レンタルスタジオや音楽教室の練習室、カラオケボックスなどを利用して演奏するのが一般的です。自宅で練習したい人は、練習用に別途サイレントチェロを購入するか、ミュート(消音器)を装着して演奏するなどの工夫をする必要があります。

練習時間やチェロを弾く頻度が必ずしも上達度に比例するとは限りませんが、世界的に活躍しているプロ奏者のなかには、幼少の頃から1日8時間の練習をほぼ毎日続けている人もいます。ただし、学業や仕事をしながら長時間の練習を続けるのは難しいため、最低でも1日30分から1時間、基礎練習をメインに少しずつチェロに触れる習慣を身につけましょう。

チェロが向いている人ってどんな人?

筆者が思う「チェロに向いている人」の特徴は、自分がどんな役割を与えられても柔軟にこなせる人です。

チェロは伴奏だけを行うのではなく、あるフレーズでは主旋律を担当したり、第1ヴァイオリンの主旋律と同じ動きをしながらハーモニーを付け加えたりと、さまざまな役割を任せられます。

仕事でたとえると、特定の業務だけをコツコツやりたい人よりも、企画から制作、事務作業にいたるまで何でも挑戦したい人に向いているかもしれません。

チェロを奏でてみよう!

チェロ

最後に、チェロの音楽が人々に与える感動や、チェロを演奏する楽しさを紹介します。

チェロの音楽がもたらす感動と表現力

チェロは、ヴァイオリンやヴィオラよりも本体が大きいので、楽器全体が共鳴することで生み出される迫力満点の響きは聴き手を圧倒します。

重厚的で艶のある音色は、チェロにしか出せないと言っても過言ではありません。また、ピッチの幅が広く、柔らかい音色をもっているため、ヴァイオリンなどの弦楽器はもちろん、ピアノや木管楽器などさまざまな楽器と相性抜群。まさに自由自在に音楽を表現できる楽器と言えます。

チェロを演奏する楽しさ

オーケストラや少人数のアンサンブルでは豊かな中低音を活かして他のメロディー楽器を支え、時には主旋律を奏でるチェロ。自分(またはチェロパート全体)の演奏一つで音楽の方向性が大きく変わることもあるので、「低音楽器の奏者として音楽全体を支えている」という実感を得やすいのがチェロの魅力です。

ちなみに、チェロで高音を出すのは技術的に難しいのですが、それを乗り越えて綺麗な音を出せるようになったとき、言葉にできないほど感動しますよ。

まとめ

チェロは、さまざまなジャンル・音域で活躍できる楽器であり、一人で弾いても複数人で弾いても楽しむことができます。

まずは、ぜひ一度チェロを弾いてその音色を肌で感じてみてください。

本記事があなたのチェロへの興味を深め、演奏へと背中を押すきっかけになれば幸いです。