チェロの弦と一言で言っても、芯線・巻線に使われている素材によってさまざまな種類があります。さらに国内外にさまざまなメーカーがあるので、チェロを始めたばかりの方はどれを選べばいいのか悩んでしまいますよね。

本記事では、チェロ弦の種類やそれぞれの特徴、おすすめのブランドまで詳しく紹介します!弦を選ぶ際のチェックポイントもあわせて解説するので、ぜひ参考にしてくださいね。

案内人

  • 阿久津美帆チェロ歴4年。また、これまでに楽器販売店で接客・販売業務を担当。現在はフリーwebライターとして、音楽(特にクラシック音楽)を中心に多ジャンルの記事を執筆している。好きな音楽家はブラームスとラフマニノフ。読書と映画鑑賞が趣味。

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チェロ弦の構造

チェロ弦は、ガット・スチール・ナイロンなどの素材でつくられた芯線に、巻線と呼ばれる糸状の巻線を巻き付けて作られています。巻線に使われている素材は、金(合金含む)・銀・鉄・チタンなどさまざまです。

チェロの弦は音が低い方から順にC線・G線・D線・A線と並んでおり、音の高さによって芯線や巻線に使われている素材を変えている奏者がほとんどです。

チェロ弦の種類

チェロ弦は、芯線・巻線に使われている素材によってさまざまな種類があります。

順に解説していきます。

芯線

チェロ弦の芯線には、ほとんどの場合スチール・ナイロン・ガットのいずれかが使われています。素材によって音色や扱いやすさ、耐久性などが異なるので、特徴をしっかり押さえたうえで選びましょう。

ガット

弦楽器の弦として古くから使われており、羊の腸から取り出された繊維をよじり合わせて作った素材。現在ではよじり合わせた繊維を芯線とし、それに糸状の金属を巻き付けて作ったものをガット弦と呼びます。しなやかな手触りや、優しく温かい音色が魅力です。

注意すべきなのが、温度や湿度の影響を受けやすく、寿命が短いこと。スチール弦やナイロン弦よりもチューニングが難しいうえ、綺麗な音を出すのに技術が必要なので、正しいボウイングやピッチの感覚を身に付けた中上級者向きであると言えるでしょう。

スチール

スチール弦は、ガット弦の代わりとして開発されました。十分な音量を出しやすいのが特徴で、ピッチの安定しやすさや耐久性の高さなどからチェロ初心者から上級者にまで人気です。

音色は明るくクリアですが若干金属的で、ガット弦など他の素材と比べると、やや柔らかさに欠けます。

ベルカントなど人気ブランドのスチール弦は、ロープコアという特殊な構造で作られているケースも。単線を螺旋状により合わせたスパイラル構造をさらに逆方向へねじっており、名前の通りロープ(紐)のような構造になっています。強度が非常に高いので、長持ちしやすい弦を探している人はぜひ検討してみてください。

ナイロン

金属を用いながら、ガット弦のような柔らかい音色を目指して作られた耐久性もある素材です。ナイロン弦に使われている合成繊維や芯線の構造、巻線の素材はメーカー、ブランドによって異なり、各メーカーが新商品の開発に力を入れています。

スチール弦に比べて寿命が短い傾向にある点は注意が必要です。

巻線

チェロの巻線に使われている主な素材は、クロム・タングステン・シルバーです。

同じメーカーのシリーズでも音の高さによって使っている素材が異なる場合があるので、購入前にぜひチェックしてみてください。

クロム

耐熱性・耐食性に優れた金属から作られており、巻線として最も人気がある素材。芯が太く、輪郭のはっきりした音を目指したい人におすすめです。

レスポンス(音の立ち上がり)が速く、明るく華やかな音が出ることからも、多くのチェロ奏者に支持されています。

タングステン

金属のなかで最も融点が高く、熱に強いタングステン。クロムと同じく、レスポンスの速さが魅力で、豊かな響きと音量を目指したい人におすすめです。

クロムが使われている弦よりも価格が高い傾向にありますが、弦が細く押さえやすいため、余計な力が入りにくいというメリットがあります。

シルバー

シルバー(銀)は、ガット弦の巻線に使われることが多い素材です。レスポンスはクロムやタングステンと比べてやや遅いものの、深く温かい音色で世界中の奏者に愛されています。

力強さと柔らかさの両方を兼ねそなえており、低い音の弦(C線・G線)に使われるのがほとんど。タングステンと同じく細くて押さえやすい反面、黒く変色しやすいので指が汚れることもあります。

チェロ弦のおすすめ人気ブランド12選

スチール弦・ナイロン弦・ガットそれぞれの人気製品をピックアップしたので、ぜひ参考にしてください。

スチール弦

ヤーガー

王立デンマークオペラ管弦楽団のチェリストが設立した弦メーカー・ヤーガーの人気ブランド。バイオリン弦からコントラバス弦まで、より良い音色を追求した末に生まれた品質の高い製品が人気です。

チェロ弦は特に「クラシック」シリーズがおすすめ。柔らかく温かい響きが特徴で、特に音が鳴りやすいA線とD線はセットで販売されています。

ラーセン

前述したヤーガー社から分かれたラーセン社のスチール弦もおすすめです。特に「ラーセン」シリーズは深く温かい音色を目指しやすく、チェロらしい落ち着いた響きを求める奏者に愛されています。

金属的な音になりやすいA線・D線をセットで購入するとよいでしょう。プロアマ問わず世界中の奏者が使っている王道の組み合わせです。

スピロコア

ウィーンのバイオリン職人が設立したトマスティーク・インフェルト社の人気ブランド。同社は設立当初から、切れやすくピッチも安定しにくいガット弦に代わって、スチール弦やナイロン弦の開発に力を入れていました。

スピロコアには、従来のスチール弦より柔軟性が高いスパイラル・スチール・コアが使われています。レスポンスが速く明るい音色が魅力なので、現在使っている弦の鳴りが悪いと感じているなら試してみましょう。

エヴァ ピラッツィ

ヨーロッパを代表する弦メーカー・ピラストロ社のなかでも特に支持を集めているブランド。同社の製品は開発段階からプロ演奏者の意見を取り入れており、チェロ奏者に寄り添った素材選びや製造技術で高い評価を得ています。

エヴァ ピラッツィはC線からA線までの4本セットがおすすめ。C線・G線はロープコアをタングステンで巻いて作られており、D線・A線はフィラメントのコアをクロム鋼で巻いて作られています。豊かな響きと音量が欲しい人はぜひ試してみてください。

ヘリコア

アメリカの弦メーカー・ダダリオ(D’Addario)の人気ブランド。ダダリオはクラシック楽器だけでなくギターやベース弦も大量製造しているメーカーで、業界トップクラスのシェアを誇っています。

スチール弦をより合わせたマルチストランデッド・スチールコアが使われており、立ち上がりの速さやピッチの安定性などが魅力です。

ナイロン弦

ドミナント

前述したトマスティーク・インフェルト社が、長持ちしやすく安定性も高いチェロ弦を目指して開発した人気シリーズ。芯線に合成繊維を使用したシンセティック・コアが採用されており、スチール弦よりも頑丈なのが特徴です。

ガット弦の倍音豊かで柔らかい音色が堪能できます。リーズナブルで品質が高いチェロ弦を探している人は、セットのものを検討してみてもよいでしょう。

オブリガート

イタリアの老舗弦メーカー・ピラストロが製造、販売しているスチール弦。ヴァイオリン奏者からも愛されているロングセラーシリーズです。

温かくまろやかな音色が特徴で、ピッチも比較的安定しやすい点が魅力。耐久性が非常に高いので、毎日長時間チェロを練習したい人や、コンサートなどで演奏する機会が多い人におすすめです。

ブリリアント

プロのチェロ奏者からも愛されているワーチャル社の人気ブランド。名前の通りbrilliant=輝くような音色を目指して開発された商品で、華やかな響きを好む奏者から特に高い評価を得ています。

楽器や奏者の癖にも馴染みやすく、他社の弦と混ぜても音が浮きにくいのが特徴。表情豊かな演奏を目指したい人におすすめです。

アンバー

前述したワーチャル社が手がけた人気シリーズ。最大の魅力は、A線にワーチャル社独自の技術が使われている点です。弦を張った際、弦と弓が触れる部分に施されているらせん部分が伸び、音が裏返りにくくなります。

張力は低めに作られていて優しい音色が特徴。チューニングがしやすいのでチェロの演奏に慣れていない初心者でも扱いやすいシリーズです。

ガット弦

ゴールド

「エヴァ ピラッツィ」シリーズも手がける老舗弦メーカー・ピラストロ社の人気製品。ガット弦のなかでは比較的リーズナブルなので、予算面を重視したい人にもおすすめです。

A線とD線はアルミニウム、G線とC線はシルバーが巻線の素材として使われています。豊かな倍音の響きや、チェロ本来の温もりを感じさせる音色が魅力です。

オイドクサ

ゴールドと並んで高い人気を誇るピラストロ社のガット弦。柔らかい音色や押さえ心地が特徴で、ある程度音色の違いを聞き分けられるようになった中上級者におすすめです。

C線・G線にはシルバーの巻線が使われており、チェロの豊かな中低音を存分に響かせることができます。レスポンスは他の素材と比べて若干遅いので、演奏の際は技術を要する点に注意しましょう。

オリーブ

ピラストロ社最高峰のガット弦とも評される高級ブランド。天然のガットだからこそ生み出せる豊かな倍音や優雅な音色が魅力で、世界中の奏者に愛されています。

響きの美しさだけでなく立ち上がりの良さも評価されており、価格の高さに見合うだけのメリットが多い製品です。

チェロ弦はブランドを組み合わせて使うことが多い

チェロ弦は素材やブランドによって音が全く異なるので、複数の製品を組み合わせて使う奏者も多くいます。

ここでは特に人気の組み合わせ方を紹介します。

組み合わせの例

①スピロコアのC線・G線&ヤーガーのD線とA線
→最も人気が高い組み合わせ。スピロコアの安定した中低音域の響きと、ヤーガーの柔らかい高音が絶妙にマッチします。

②スピロコアのC線・G線&ラーセンのD線とA線
→こちらも人気の組み合わせ。固く金属的な音になりがちな高音域が柔らかくなり、スピロコアのC線・D線とも違和感なく混ざり合います。

③A線のみアンバー・C線~D線はブリリアント
→マイルドな音色でチューニングも安定しやすいアンバーのA線と、他のメーカーの弦とも相性が良いブリリアントの組み合わせも人気です。高音域の出し方に悩んでいる人や、前述したセットが好みに合っていないと感じた人はぜひ試してみてください。

自分に合ったチェロ弦を選ぶポイント

チェロ弦の種類や特徴は分かったものの、実際に弦を購入する際、自分に合ったものはどのように探せばよいか迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。

ここでは特に重視すべきポイントを紹介するので、ぜひ参考にしてください。

音色の違いで選ぶ

既に解説したとおり、使う弦によって響きや音色はさまざま。弾きたい曲にマッチするかどうかも変わるので、意識してチェックしてみてください。

自分が目指したい音色が出せると、チェロを練習するうえでのモチベーションにもつながります。さまざまなソリストやオーケストラの演奏を聴き、好みの音を見つけてからチェロ弦を探すのもよいでしょう。

扱いやすさで選ぶ

チェロを弾き始めてから数か月〜1年程度の場合、扱いやすさで選ぶのも重要です。押さえにくい弦や弾きにくい弦を使っていると、余計な力が入ったり、間違った弾き方が身に付いたりするおそれがあるので注意しましょう。

同じ種類の弦でも、使っている金属や巻線の巻き方はメーカーによって異なるので、実際に楽器店などで試奏したり店員さんに相談するのがおすすめです。

価格帯で選ぶ

弦は消耗品なので、数か月や半年単位で買い替えるのが一般的。1本、または1セットごとの価格によって年間の出費が大きく変わるので、自分の環境や求めるレベルに応じた予算を立てましょう。

チェロ弦に関するよくある疑問Q&A

Q.チェロ弦を張り替える時期の目安は?

週にチェロを5〜6時間弾く場合、3か月〜半年を目安に張り替えましょう。

弦は消耗品なので、時間の経過による劣化だけでなく、湿度や気温、指で押さえたり弦で擦ったりする際の摩擦などで消耗していきます。劣化した弦のままだとチェロ本来の綺麗な音が出にくく、ピッチも安定しないので注意が必要です。

3か月に満たなくても弦が錆びていたり、音が明らかに悪くなったと感じたらすぐに張り替えてください。音楽大学の受験、コンクールやオーディションを目指している人など、毎日長時間練習したい人は1か月ごとの張り替えがおすすめです。

Q.チェロ弦を張り替える方法は?

チェロ弦を張り替える際は、ネックに近い側(C線→A線→G線→D線)の順番に行うのが一般的。具体的な手順は下記動画を参考にしてみてくださいね。

まとめ

チェロ弦は国内外のメーカーが毎年新商品を開発・販売しており、耐久性や音色の美しさなど、さまざまなメリットを兼ねそなえた製品が増えています。

今回の記事でチェロ弦の特徴や選び方を理解できたら、ぜひ自分に合ったものを探してみてください。