チェロを始めたいけど、楽器が高い!
何を買い揃えたらいいのかいまいちわからない……。

そんな悩める初心者が一度は購入検討するのが初心者セットですよね。しかし、比較的安く楽器を購入できる反面、なかにはおすすめできないケースもあるのです。

そこで今回は、初心者の方がチェロ購入で失敗しないための注意すべきポイントや、部品ごとの選び方などを元楽器店店員が詳しく解説します!ぜひ参考にしてくださいね。

案内人

  • 阿久津美帆チェロ歴4年。また、これまでに楽器販売店で接客・販売業務を担当。現在はフリーwebライターとして、音楽(特にクラシック音楽)を中心に多ジャンルの記事を執筆している。好きな音楽家はブラームスとラフマニノフ。読書と映画鑑賞が趣味。

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チェロの初心者セットをおすすめしない理由

チェロの初心者セットがおすすめできない理由は、素材の質が悪い、強度が不十分であるなど、楽器としての完成度が低い可能性があるからです。

工作精度が低いとチェロ本来の音がしっかり鳴らず、鳴っても音色が曇ってしまうなどの理由で弾きにくさを感じることがあります。音が小さいと「もっと力を入れて弾かなければ」と間違った癖が身についたり、正しい音色・音程を認識できなくなる危険もあるのです。

また、初心者セットはほとんどの場合工場で大量生産を行っているので、木の材質や湿度に合わせた加工がされていない可能性もあります。安価な楽器はすぐに壊れやすいため、結局はコストと手間が余計にかかってしまうパターンもあるので要注意です。

有名楽器メーカー(ヤマハ等)の初心者セットは?

予算などの都合で個別に購入するのが難しい場合は、ヤマハなどの大手楽器メーカーが販売しているセットをおすすめします。

初心者向けのモデルでも20万円以上と比較的高めですが、数万円台のセットに比べると使われている素材の質や、楽器としての完成度は格段に高いです。素材だけでなく塗装や加工まで丁寧に行われているので、チェロ本来の音をしっかり鳴らすことができます。さらに、大手メーカーならではのしっかりとしたサポート体制も嬉しいポイントです。

チェロを貸し出してくれる教室もある!

楽器の貸し出しを行っているチェロ教室もあるので、初心者の方はレンタル楽器から始めるのもひとつの方法です。

まずは教室が用意してくれる楽器に触れることで、楽器の構え方や音の鳴らし方といった基本的なポイントを身に付けられます。料金は教室にもよりますが、だいたい月1万円程度でレンタル可能です。

チェロの演奏に慣れると、メーカーや材質などによる音の違いが少しずつ分かるようになります。「こんな音を出してみたい」「あのメーカーのチェロを弾いてみたい」といった希望が生まれたら、自分に適した楽器を探してみましょう。

部品別チェロの選び方

次に、本体や弓など部品別のチェロの選び方を紹介します。

本体

チェロをはじめとする弦楽器は、弓で弦を擦った際の振動が本体(ボディ)に伝わり、共鳴することで音が鳴る仕組みです。

本体に使われている素材はメーカーや型番によっても異なりますが、ほとんどの場合スプルース材(マツ科)かメイプル材(カエデ科)が取り入れられています。

初心者の方は、ヤマハ・VC20Gや、スズキ・ No.72など、大手楽器メーカーが販売しているモデルがおすすめです。本体の表板と側面・裏板それぞれに異なる素材が使われており、耐久性が高く、音がはっきり響きます。

チェロ本体の相場は30万円~50万円程度ですが、セットなら20万円台で購入できるケースもあります。

弓は、楽器に張りつけた弦を擦って音を鳴らすためのパーツです。特にクラシックは弓を使って演奏する曲がほとんどなので、プロ・アマチュア関係なく必ず用意しなければいけません。

初心者の方は、フェルナンブコ材(マメ科高木)を使っている弓を選ぶとよいでしょう。湿気に強く、耐久性もあり、響きも十分に保ちやすいのが特徴です。

他にも、持ったときに重さで余計な力が入らないかも重要なチェックポイントです。弓の価格は3万円~10万円前後が一般的ですが、なかには50万円以上の高価なものもあります。

チェロの弦は指板や駒によって本体に張りつけられており、低い方からC線・G線・D線・A線の4種類があります。チェロの音を鳴らすために必要なのはもちろんですが、素材によって音色や扱いやすさが異なるので自分に合った弦を選びましょう。

代表的な素材のひとつであるスチール弦は、比較的安価で初心者におすすめのタイプです。音色ははっきりと明るく、響きも十分。相場は2,000円程度のリーズナブルなものから、1万円前後の高級なものまでさまざまです。ドミナント(Dominant)社やダダリオ(D’Addario)社など有名メーカーのものであれば、安価な弦でも品質に問題はありません。

小物・メンテナンス用品

チェロを美しい音で演奏するために必要な小物や、メンテナンス用品はチェロを演奏するうえで必須アイテムとなるので、本体や弓とあわせて購入しましょう。

たとえば、松脂はチェロの音を鳴らすために欠かせないアイテムです。演奏前に弓へ塗ると、弦を擦った際に摩擦が生まれて音が鳴ります。値段は2,000~4,000円程度です。

チューナーは開放弦のチューニングをはじめ、音程を確認するために必要なアイテムです。本体に取り付けて使えるクリップタイプのものから、譜面台や机に置いて使う大きいサイズのものがあります。値段は2,000~6,000円程度です。

チェロの特徴や楽器としての魅力については下記記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

中古のチェロを探す場合

中古のチェロを購入する際は、メリット・デメリットをそれぞれを正しく理解しておきましょう。

【メリット】

楽器の購入費用を大幅に抑えられます。ある程度使い込まれている楽器は新品の状態と比べて音が鳴りやすいケースもあり、弾く際に余計な力を入れる必要がありません。

【デメリット】

本体に傷や汚れがついていたり、ペグなどの部品が固くなって動きにくくなっているものもあります。また、前の持ち主の弾き方に癖があると音色に影響が出てしまうケースもあるので購入前にしっかり確認しましょう。

チェロに慣れていない初心者は、特にデメリット面の影響を受けやすいので注意が必要です。どうしても中古で購入したい場合は、メンテナンスやサポートをしっかり行ってくれる楽器店で購入しましょう。

まとめ

本体や付属品をお得に購入できる初心者セットですが、今回の記事で紹介したように注意すべきポイントも多くあります。

長くチェロの演奏を楽しめるよう、グレードや素材などを慎重に見極めながら楽器を選びましょう。