【これで解決】演奏家のための緊張・不安対策【ステージでアガらない】

2018/10/30
音楽家の生活

一生懸命に練習して臨んだ、発表会や演奏会。
「舞台に上がったら、突然頭が真っ白になってしまった」
「緊張で体が硬くなって、練習の半分も実力が出せなかった」

という経験はありませんか?

もっとリラックスして本番に臨めたら、どんなに素晴らしいでしょう。
音楽と同様、スポーツの分野でも、強いプレッシャーの下で良い結果を出すための研究が
進んでいます。

今回は、スポーツ心理学からも知恵を借りて、緊張をコントロールし、本番で実力を発揮するための方法をお伝えします。

 

緊張が起こるメカニズム

そもそも、人はなぜ緊張するのでしょうか?
生命に危険が迫った時、私たちの体は “戦闘モード” に入り、すぐに戦ったり逃げたりできるように準備をします。この時、脳内でノルアドレナリンというホルモンが分泌され、交感神経が優位になります。すると、ドキドキしたり、顔が赤くなったり、震えるなどの身体症状が起こります。このような反応が起こるのは、脳が “人前=危険” だと認識し、危険から身を守ろうと防衛本能が働くからなのです。

コンクールを使った実験では、本番はリハーサルに比べ、なんと30%も脈拍が速くなるということがわかっています。その反応はアマチュアもプロの演奏家も同じです。(*1)

*1、Yoshie, M., Kudo, K., Murakoshi, T., & Ohtsuki, T. (2009) Music performance anxiety in skilled pianists: effects of social-evaluative performance situation on subjective, autonomic, and electromyographic reactions. Experimental Brain Research, 199, 117-126.

 

まさか!緊張が演奏の質を高める!?

 

・緊張することのデメリット

過度に緊張をすると、筋肉の活動量が増えるので、余計な力が入りやすくなります。
そのため、柔軟性を伴う繊細な表現ができなくなり、演奏の質を下げてしまうのです。
また、心拍数が早くなると、演奏のスピードも速くなってしまうことがわかっています。
慣れない速さでの演奏は、ミスの確率が上がるので危険です。

 

・緊張することのメリット

一方、適度な緊張は集中力を高め、感情豊かな良い演奏をする助けにもなります。
それにはまず、緊張を敵視せずに受け入れることが大切です。
ハーバード大学の論文では、不安や緊張を感じた時に
「この緊張が自分の能力を高めている!」と思ったり「楽しくなってきた!」と叫ぶことで、実際のパフォーマンスが上がるという事が報告されています。(*2)

不安や緊張を感じるのは、自然な反応です。
ポジティブに意味付けることで、演奏の味方になってもらいましょう。

*2、 Brooks,A.,(2013) Get Excited: Reappraising Pre-Performance Anxiety as Excitement

 

スポーツ心理学に学ぶ緊張対策

では、具体的に緊張のコントロールに効果的な方法を見ていきましょう。

 

・食事

心と体の状態がすぐに結果に影響するスポーツの世界では、食事にも細心の注意を払っています。音楽家もスポーツ選手同様、本番で良い演奏をするために、心身のバランスを整えてくれる食べ物を上手に選びたいものです。魚や大豆などに含まれる良質なタンパク質は、精神を安定させる脳内ホルモン、「セロトニン」の生成を助けてくれます。

チーズ、ヨーグルト、ほうれん草には、イライラを抑えてくれるカルシウムやマグネシウムが多く含まれます。
緊張を抑えるためには、これらの食品を毎日の献立に取り入れることをおすすめします。
本番当日は、胃腸に負担のかかる揚げ物や、興奮を促すカフェインの摂取を控えましょう。

 

・睡眠

質の良い睡眠をとることで、練習で覚えた情報を脳に定着させたり、不安を減らす効果があります。(*3)逆に睡眠不足になると、脳内でノルアドレナリンが分泌されるため、体が緊張しやすくなります。

夜はあれこれ考えすぎず、ゆったりお風呂に入って早めに休みましょう。寝付けない方は、アロマオイルの香りを嗅ぐのもおすすめです。ラベンダーの香りは、不安を和らげ、安眠効果があると期待されています。(*4)

*3、 Walker, M. P., Brakefield, T., Hobson, J. A., & Stickgold, R. (2003) Dissociable stages of human memory consolidation and reconsolidation. Nature, 425, 616-620.
*4、Perry R, Terry R, Watson LK, Ernst E., (2012) Is lavender an anxiolytic drug? A systematic review of randomised clinical trials.

 

・運動

適度な有酸素運動によりセロトニンの分泌が促され、緊張を軽くするということがわかっています。(*5)

1日20~30分間のウォーキングを定期的に行うと、心と体が健康になるだけでなく、気分転換にもなるのでおすすめです。

*5、Harvey,B. (2017) Exercise and the Prevention of Depression: Results of the HUNT Cohort Study
https://ajp.psychiatryonline.org/doi/10.1176/appi.ajp.2017.16111223

 

・瞑想

瞑想には、集中力を高めたり、睡眠の質を高めるなどの良い効果がありますが、最大の恩恵は心をしずめストレスを軽くしてくれることです。(*6)瞑想にも色々な種類があるのですが、次のようなシンプルな方法でも十分に効果がありますので、どうぞ参考にしてください。
静かな落ち着ける場所で、リラックスして座る。
呼吸に意識を向け、鼻から息を吸い、口から吐く。
吸うときに頭の中で1から10まで数える。吐く時も同様に、1から10まで数える。
慣れてきたら数えるのをやめて、無心に。

*6  Fell,A.( 2013) Mindfulness from meditation associated with lower stress hormone
https://www.ucdavis.edu/news/mindfulness-meditation-associated-lower-stress-hormone

 

本番前の練習方法とは?

「準備が十分じゃない。どうしよう。」と思うことが不安を高めてしまうので、「こんなに準備したんだから、もう大丈夫。」と信じられるように、不安な事をつぶしておきましょう。実際的な練習方法をいくつかご紹介します。

 

・ビデオカメラで撮影しながら練習する

本番で実力がうまく発揮できない原因の一つに、自分がどうみられているのかを心配する自己意識があります。普段からスマートフォンなどでビデオ撮影しながら練習すると、見られているという意識が働き本番に近い状況を作ることができます。メルボルン大学の研究により、このようにして擬似的な本番に慣れておくことで、本番に強くなることがわかっています。

 

・止まらずに続ける練習

ミスをして手を止めてしまうと、途中から演奏を再開するのはとても困難です。ですので、練習の時から、ミスをしても止まらずに演奏するクセをつけておきましょう。一方で、万が一手を止めてしまったときに備えて、曲のどこからでも再開できるようにしておくことも重要です。

曲の最初から、フレーズごと、区切りの良い場所からの練習を繰り返すと、体が演奏を覚えていきます。体の記憶に任せてなんとなく演奏する状態は、小脳の運動記憶に依存しています。もし、緊張で体が普段どうりに動かなくなった時、同じ動きを再現することができません。

曲のどこからでもスタートできるようにしておくと、小脳の運動記憶にフックをつけることができます。より強い記憶となるため、ミスをしても立て直せるという安心感に繋がります。

 

・暗譜を120%確かにする、1小節飛ばし暗譜

暗譜で曲のどこからでも演奏ができるようになったという方は、1小節飛ばしの暗譜でさらに上を目指してみましょう。たとえば、奇数の小節数のみを暗譜で演奏する場合には、

1小節目を弾いたら、2小節目は弾かずに頭の中で音を鳴らします。

3小節目を弾いたら、4小節目は弾かない、という具合で練習します。

できるようになったら、偶数のみを暗譜で演奏します。

 

まとめ

先に述べたように、体が流れで覚えてやっていることを敢えて邪魔し、記憶にフックをつけることで、記憶をより強く確かにすることができます。もしあなたがピアノを演奏する場合は、片手ずつの暗譜も効果的ですので、どうぞ試してみてください。

そうは言っても、「やっぱり緊張してしまう」というあなた。それだけ音楽に真摯に取り組んでいる自分を、どうぞ褒めてあげてください!ちょっと冗談みたいですが、「君はよくやっているよ。」と二人称で自分をはげますと、緊張に強くなるといった研究結果もあります。(*7)

緊張で我を失ったとき、もう一人の自分の視点を持つことで心に余裕が生まれるのかもしれませんね。

 

*7、Self-talk as a regulatory mechanism: how you do it matters.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24467424

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