オーケストラは多人数の個性が一丸となって、1つの音楽を作り出す集団です。
バンド以上に奏者が入り乱れ、吹奏楽団以上に多種多様な楽器が必要なこともあり、運営陣には様々な負担が強いられます。
特に問題になるのが、以下の3つです。
当記事では、上記の問題から運営資金に的を絞り、オーケストラで発生しがちな問題や、その対策についてお話ししていきます。
目次
オーケストラ運営では資金が足りなくなることが多い
オーケストラを運営していると、想像以上にお金がかかることが分かります。
会場費用や練習場所に支払う費用は当然のこと、打楽器を運搬する車両代や奏者の交通費、譜面の印刷代などの雑費に至るまで、とにかくお金が必要です。
アマチュアオーケストラの場合、運営資金を確保するために団費を徴収しているところも多いでしょう。
しかし、団員に長く所属してもらうことを考えると、そこまで多くの団費は徴収できませんし、団費を徴収した程度では、年間、複数回の演奏会を行うことは難しいのが現実です。
よって、オーケストラを運営するためには、支出と収入をしっかりと管理しつつ、支出を押さえ、収入の窓口を増やしていかなければなりません。
ここからは、オーケストラ運営をする上での費用の内訳と、資金繰りを上手く行うための方法を解説していきます。
オーケストラの運営にかかる基本的な費用
まず、オーケストラの運営にかかる費用の内訳を細分化してみましょう。
基本的に、1回の演奏会を行う際にかかる費用は、以下のようなものです。
会場代
リハーサル場所代
本番スタッフ謝礼
その他雑費(譜面印刷費、郵送費など)
詳しく見ていきましょう。
会場代
まずは会場代です。
会場代はキャパシティや立地によって大きく金額が変化しますが、フルオーケストラが演奏できる会場を使用する場合、使用料のみで30万円~50万円程度必要になります。
さらに、使用料に付随して附帯設備の使用料や楽屋の使用料も必要なので、一般的には会場だけで40万円~80万円程度かかることが多いです。
会場代だけを見てもオーケストラ運営には大金が必要であることが分かります。
リハーサル場所代
リハーサル場所にかかる費用も、オーケストラ運営にかかる費用において大きな割合を占めます。
オーケストラのリハーサルはバンドのように小さなスタジオで行うことができません。
基本的にはホールの練習室などを使用することになります。
練習室を借りると、使用料として15,000円~2万円程度、付帯設備費を入れると25,000~30,000円程度必要です。
さらに、リハーサルは基本的に複数回行うことになります。
つまり、仮に本番まで5回練習を行った場合、リハーサルの場所代だけで、12万円~15万円程度の費用がかかるのです。
上記のことを考えれば、リハーサル時の奏者の士気が低い時に、運営サイドが憤怒の表情をしてしまうのも分かります。
本番スタッフ謝礼
本番では団員が自ら受付やステマネを行うわけにはいきません。
本番時には、数人のスタッフを確保する必要があります。
会場の規模にもよりますが、円滑に受付を済ませたい場合、スタッフは少なくとも5人、できれば10人以上用意したいところです。
基本的には1日拘束となりますので、時給1,000円で換算したとしても1人1万円程度は支払うことになります。
よって、本番時には人件費だけでも数万円~10万円程度が必要です。
その他雑費
楽譜の印刷代や各団員への郵送費、打楽器の運送費や運送車の駐車代など、オーケストラ運営では様々な雑費がかかります。
1つ1つは少額なので軽視してしまいがちなのですが、まとめて計上するとその金額は馬鹿にならず、数万円程度にも膨れ上がることが多いです。
特に印刷代は、団員の人数が多いと、簡単に万単位になってしまうので注意しましょう。
状況によっては発生する費用
基本的な費用の他、必ずしも必要ではない費用として、以下のようなものが挙げられます。
楽器レンタル代
広告宣伝料
客演謝礼
著作権料
詳しく見ていきましょう。
楽器レンタル代
演目によっては、普段使わないような特殊楽器を用意する必要があります。
有名どころでいえばドヴォルザークの新世界などですね。
第二楽章にイングリッシュホルンが必要となるので、担当奏者が持っていない場合は別途用意する必要があります。
持っている知り合いがいれば話は別ですが、店からレンタルするとなると、数万円単位の金額は覚悟する必要があります。
特に費用がかかるのが打楽器です。
編曲内容などによっては、細かい特殊楽器をいくつかレンタルしなければならないということもあり、費用がかさみやすいです。
団体の費用が潤沢ではないうちは、特殊楽器の有無も含めて演目を考えるのも一つの方法でしょう。
広告宣伝料
広告宣伝料は、やり方によって最も際限のない費用になるでしょう。
オーケストラの広報として基本であるチラシやポスターを制作するにしても、しっかりしたものにしたいのなら、デザイナーへの発注費用、印刷費、各ホールなどへの郵送費などが必要です。
デザイナーへの発注料金を除いても、チラシ1,000部を表フルカラー、裏白黒で印刷すると2,000円程度はかかりますし、ポスターの場合は表フルカラーのものを50部発注するとA2サイズで5,0000円ほどかかります。
また、最近では動画による広報も重要になってきていますが、ある程度しっかりしたものを撮影しようとすると、数万円単位の出費が必要です。
それなりにお金が必要な広報ですが、ひたすら予算を抑えようとするのは悪手であるといえます。
集客ができなければ収入が増えないので、広告費を抑えるのは最後にするのが良いでしょう。
客演謝礼
アマオケではプロの音楽家を招致することも多いでしょう。
特に、指揮者は客演であるというオーケストラは多いのではないでしょうか。
リハーサルの参加も踏まえ、客演の音楽家に支払う謝礼はしっかりと用意しておく必要があります。
著作権料
クラシックを演奏する分には気にしなくてよい著作権料ですが、現代曲を演奏するとなると必ず必要になってきます。
筆者が運営に関わっていたオーケストラでは、吹奏楽曲やゲーム音楽、アニソンなどをアレンジしてオーケストラで演奏する企画も行っていたので、著作権料は支出として大きな割合を占めていました。
演奏に関する著作権料は、以下の基準で算出されます。
曲の長さ
会場の最大収容人数
チケットの金額
上記からも分かるように、著作権料には会場の大きさも関わってきます。
よって、著作権が発生する曲を演奏する場合は、通常以上に会場の大きさやチケット金額を考慮する必要があります。
オーケストラの運営資金を集める方法
先述のようにオーケストラの運営にはかなりの費用が必要です。
よって、チケット収入や団費の徴収以外に、運営資金を集める必要が出てきます。
資金を集める方法として、チケットノルマや団費以外で挙げられるのは、以下のようなものです。
クラウドファンディング
音源・グッズの販売
詳しく見ていきましょう。
クラウドファンディング
まず挙げられるのが、クラウドファンディングです。
クラウドファンディングとは、活動やビジネスモデル、開発品などに賛同する出資者を、ネット上で募る資金調達方法になります。
被災地への寄付に関する活動や、店舗の存続などにも使われることから、募金と類似したものであると認識している人も多いのですが、どちらかというと、企画によって生み出されるものを先払いで購入するという考え方が近いです。
オーケストラで応用する場合であれば、公演のチケットやオリジナルグッズ、出張演奏などを見返り(リターン)として、あらかじめ当日の公演に必要な資金を集めることになります。
投資をしてもらうという側面上、企画自体の面白さや投資の見返り(リターン)の質が特に重要です。
単純にクラシックコンサートを行うだけであれば人は投資したいと思いませんし、リターンが魅力的でないと投資する意味がありません。
また、クラウドファンディングを行う場合、リターンの作成と発送という作業が発生します。
リターンにグッズや当日公演の映像を設定するなら、それなりの原価がかかってきますし、多くに人物から投資があった場合は、リターンの発送作業にそれなりの人員や労力が必要となります。
企画に自信があり、リターン作成のために複雑な収支計算や作業量が増えることを覚悟できるなら、十分検討する価値のある資金調達手段です。
音源・グッズの販売
次に挙げられるのが、音源やグッズを制作し、販売することです。
アマオケの音源やグッズなんて売れないと思う人も少なくないでしょう。
しかし、音楽家には基本的に資格等はありません。極端な話をするとプロと名乗り、音楽活動を行っていればその人はプロということになります。
つまり、アマチュアとプロの明確な定義は存在しません。
アマチュアであってもしっかりと広報を行い、ブランディングを行えば、グッズ販売などを行っても良いわけです。
とはいえ、流石に無名ではグッズや音源を制作しても売れません。
グッズや音源による収入増加を望むのであれば、団体のファンを作る必要があります。ファンを獲得するためにも広報を積極的に行う必要があるでしょう。
近年ではYouTubeなどの動画プラットフォームが普及していることもあり、一般人でも有名になりやすい時代です。
団員の誰かが有名になれば、その人目当てでオーケストラを見に来るという人も増えるでしょう。
上記のようにしてファンが増えていくことで、グッズや音源の販売はようやく収益になります。
長い目で見ることになりますが、少しでも運営資金を増やしたいのであれば、物販を見越した広報に対し、真剣に力を入れてみるのも良いでしょう。
まとめ:まずは収支を明確化しよう
以上、オーケストラの運営資金についてお話ししてきました。
オーケストラの運営には、馬鹿にならない大金が必要となります。
健常な団体運営を続けていきたいのであれば、団費やチケット代以外に、収入源を増やすことが重要です。
すぐにできる資金調達方法としては、団体の収支を綿密に算出することです。
演奏会ごとの収入や支出、キャッシュフローを把握した上で、削れる部分は削り、力を入れるべき部分の支出は増やし、次回公演の予算案を立ててみましょう。
収支計算をしっかり行うことで、意外な支出が見えてくる可能性があります。
資金面の整理を行ったら、如何にして収益を増やすかを考えてみましょう。
現況を明確に把握していない状況では、運営資金問題はいつまでたっても解決しません。
当記事で紹介した方法も参考にして、予算案の中で動かせるお金をしっかりと活用してみてください。