目次
「ジャジャジャジャーン」は借金取りのテーマ? 本当は高額収入だった楽聖
いきなりですが、皆さんは「楽聖」ベートーヴェンの代表作として思い浮かべる曲は何ですか?
人それぞれの思い入れがあるかもしれませんが、強いて挙げるなら、やはり「運命」に落ち着くのではないでしょうか。
その代表作、「運命」と呼ぶのは日本ならでは、あくまで「交響曲第5番ハ短調作品67」が正式名。
ちなみに初演当初は「交響曲第6番」だったそうです。つまり、「田園」(現・交響曲第6番ヘ短調作品68)と番号が入れ替わっているわけですね。
話を戻しますが、曲冒頭部の「ジャジャジャジャーン」は、「運命が戸を叩く」音と言われます。
考えてみると、これほど見事なキャッチコピーはありません。CMライターとしても食べていける才能がありますな。
さて、終始登場するこの「ジャジャジャジャーン」ですが「運命」ではなく「借金取り」のテーマだという珍説があります。
つまり、借金取りがベートーヴェンの家の扉を叩く音を描写しているというのです。
「ベートーヴェンさん、いるんだろ?もう返済期限はとっくに過ぎてるんだ!」と家の扉を叩く借金取り。
鍵を閉めて息をひそめるベートーヴェン。「留守ならしゃあねえなぁ。出直してくるか」と聞こえよがしに舌打ちする借金取り。
ほっとするベートーヴェンですが、借金取りもさるもの、帰ったと見せかけて再びドンドンドン!
「ベートーヴェンさん、本当はいるんだろ?もう半年分たまってんだ!いい加減に返してくれよ!」。
以上は、筆者の勝手な脳内再生によるもので、決して事実に基づくものではありません。
こんなやり取りをドリフのコントで見たような気がしますが、曲に一貫して漂うしつこさは借金取りがテーマなら納得。
この体験をちゃっかり音楽にしていたなら、ベートーヴェンもなかなか食えない人物です。
まあ、実際はパトロンから金銭援助を受け続けていましたし、曲の出版やピアノのレッスン料などの収入をがめつく貯め込んでいたらしいです。脱税もかなりしているのではないでしょうかね?
こんな埒もないことを書いていると、例の名曲も「借金取り立て」にしか聞こえなくなりました。
当分は私の頭の中で「借金取り」のテーマとして響き続けることでしょう。困ったものです。
「不潔」だけど「潔癖症」? 目力で女性を虜にしたベートーヴェン
ベートーヴェンというと、「ボサボサ頭に口はへの字型の頑固そうなオッサン」というイメージが流布しています。
良く言うと「情熱家」、悪く言うと「むさ苦しい」か「不潔」。
弟子に言わせると、「ロビンソン・クルーソーみたいだった」、「モジャモジャした髪の毛が逆立っていた」とむさ苦しさ全開。
コントで出てくるマッドサイエンティストと同じ匂いが感じられますな。
そんなむさ苦しさ全開のオッサンが、実は女性関係は華やかだったらしい。
肝心のルックスこそ、浅黒い肌に天然痘の痕があったと言われるものの、さほど悪くはなかったようです。
今の「イケメン」の定義からは外れてはいるものの、女性を虜にする目力があったんだとか。
「太い眉の下のまなざしが誠実」で、「真っ白い歯がのぞく笑顔がチャーミング」という記述があり、20~30代には女性ファンが多かったとも伝えられています。
彼の目力プラス白い歯がチャームポイントとして女性を引きつけたのでしょう。うーん、うらやましいではないか!
若い頃は人目を気にして着飾っていたこともあって、女性にモテたのでしょうが、年齢を重ねるに従って、「我が道を行く」スタイルに。
髪型がモジャモジャで、服装も無頓着。作曲にのめり込み過ぎて帽子もかぶらず歩いていたため、浮浪者に間違われて逮捕されたというエピソードもあったほどですから、「不潔」という評は的外れではないでしょう。
自宅の部屋は乱雑であったといい、現代の「ゴミ屋敷」の元祖的な存在だったのかも知れません。周囲にとってはいい迷惑。
その反面、風呂と洗濯好きという清潔な面も持ち合わせていますから、彼と互角に張り合えるのは、もはや由美かおるかしずかちゃんくらいですな。
でも、考えてみればそういう矛盾した面を持つ人っていますね。
アバウトなんだけどデリケートな面を持つ人だとか、沈着冷静だけど感情的になりやすい人。
そんな矛盾した面を持つ人には、どこか愛すべきところがあります。我らがベートーヴェンもその分類に属する人物なのかな。
ただ、彼の場合、清潔から度が過ぎた潔癖症の気があり、手を何回もしつこく洗うところがあったようです。
潔癖症の人って、どうしても周囲からドン引きされるところがあるけれど、ベートーヴェンもその例に漏れないのではと勘ぐったりしてしまいます。
「偉人伝」のベートーヴェンは脚色あり?それでも市民から愛される楽聖
考えてみると、筆者の幼少時代はベートーヴェン=「偉人伝」に欠かせない人物、でした。
そりゃもう、難聴というハンディキャップに打ち勝って、これほどの名曲を世に送り出したわけですから。
でも、「実際は金にガメツく、不潔で、こと作曲になると周囲が目に入らなくなる困ったオッサンだった」なんて偉人伝には書けません。
逆に考えると、偉人伝に載っている数々のエピソードは、人々の感動を誘うよう脚色されている可能性が強いわけです。
それでも、生前から人々に愛されていたベートーヴェン。
彼の葬儀当日には、大勢のウィーン市民が一代の楽聖を悼んで集まり、出棺の際には騎馬隊の出動を要請する騒ぎに発展。小学校も休校になったほどです。
一個人として見れば、「ちょっと変わったむさ苦しいオッサン」かも知れませんが、それでも彼は今日まで愛され続けています。
なんだかんだこき下ろしましたが、やはり最後には彼のグレートさを認めねばなりません。