先日、Zoomで、「楽器のオンラインレッスンのお悩み、皆で話してみようの会」と題された座談会が開催されました。

主催してくれたのは、さいたま市でピアノ教室を主宰する西原侑里さん。

手探りで始めたオンラインレッスンについて悩んだとき、友達や先輩の顔が浮かんだそうです。

こういう時こそ、積極的に人と繋がりたい!そう考えた彼女がFacebookで呼びかけると、ピアノ、ヴァイオリン、歌、と専攻の垣根を越えて、総勢11名の先生たちが参加してくれました。

参加メンバー:西原侑里さん、倉田莉奈さん、白石麻奈美さん、(以下仮名)スズキさん、サトウさん、ヤマダさん、アオキさん、モリタさん、サカタさん、シダさん、うちこ(当記事のライター)

オンラインレッスンで使用するアプリ、なに使ってる?

まずはアンケート結果から。(アンケートは総勢22名の先生から回答をいただきました)

オンラインアンケート1
オンラインレッスンで使用しているアプリを教えてください
オンラインアンケート2
オンラインレッスンで生徒さんにオススメするとしたらどのアプリですか?

Zoomはその認知度の高さと利便性、Skypeは音の良さから人気が高いようです。LINEは普段から使っている人が多く、保護者へのご案内もしやすいところが人気の理由でした。

オンラインレッスンへの移行率はどんな感じ?

続いて、話はオンラインレッスンへの移行率。

オンラインレッスンが出来ない場合、レッスン自体が限りなくゼロになってしまうので、先生たちにとっては大幅な収入減となってしまいます。

全生徒さんのうち1%~30%移行した」と答えた先生が22人中8人、「全生徒さんのうち31%~70%移行した」と答えた先生が、22人中4人、「全生徒さんのうち71%~100%移行した」と答えた先生が22人中10人と、オンラインレッスンへの移行に苦労している教室と、ある程度成功している教室に分かれている結果となりました。

事前に取ったアンケートでは、「最初からオンラインレッスンに興味のない親御さんもいらっしゃり、そのような方たちへの働きかけはどのようにしているのか、気になります」という声もありました。

対策として、

無料のお試しオンラインレッスンを行い、オンラインレッスンへのハードルを下げる
オンラインレッスンへ誘うきっかけになるようなコンテンツを作成する

という意見が出されました。

オンラインレッスンの悩みは「音質とタイムラグ」

オンラインレッスンアンケート4
オンラインレッスンにおける悩みは何ですか?

続いて、何に悩んでいるのか、というアンケート結果です。

群を抜いているのが、音質とタイムラグの問題。オンラインレッスンをする上では、避けられない悩みなのかも知れません。音質に関しては、それぞれがマイクを購入してみたり、設定を変えてみたり、と試行錯誤を重ねています。

これには、リアルタイムでのレッスンの他に、予め作成した動画でのやりとりを併用することにより、少しは解決できるのでは、という案が出されました。

サトウ「レッスンの前に動画を送ってもらうのもいいかも知れない。リアルタイムでのやりとりより音はいいと思います」

また、タイムラグに関して、こんなお悩みも・・・。

スズキさん「一緒に弾くのは難しいですよね。私は歌のレッスンなのですが、普段は伴奏しながらレッスンをしているので、どうしようかと・・・。」

サカタさん「小さい子には必ず伴奏をつけてレッスンをしていたのですが、オンラインだとそれが難しい。お母様に横についていてもらって、拍を叩いてもらっていますが、音楽を分からないお母様の場合はそれも難しいので、、。人によってレッスン内容に差が出てしまっています。」

これには、

先生の方は音のずれを気にせず無心で弾き、生徒側に合わせて弾いてもらう
先生のお手本の演奏に合わせて、膝の上で手を動かしてもらう

という意見が出されました。

ヴァイオリンを教えているヤマダさんは、オンラインレッスンを始めて早々に、リアルタイムでは弓の動きが映像と合わないことで断念。生徒さんに送ってもらった演奏動画を見て、その問題点を指導する動画を作成するというレッスン方式に切り替えたそうです。

ヤマダさん「『一緒に弾いてみてね』『リズムたたきしてみてね』って動画の中で呼びかけたりしているよ。」

また、ソルフェージュを指導している先生にとっては、音質とタイムラグはより深刻な問題です。

倉田莉奈さんはソルフェージュの指導をする際、事前に課題を画像で送って、オンラインレッスン時に実際に歌ってもらっているそうです。

倉田さん「音質・タイムラグのことでストレスがあるので、今はその分量は減らして、知っている曲を譜面に起こす練習をさせています。ずっとこれが続くと、歌の表現などが心配かな。カリキュラムの見直しを考えているところです。」

オンラインでの導入期におけるレッスンの課題

西原さん「年中・年少さんの生徒さんをオンラインでレッスンしようとしたら、レッスンとして成立しなかったんです。対面ではきちんとレッスンできるんですけど、おうちだと甘えちゃったり、戸惑ってしまうみたいで・・・」

ヤマダさん「私は動画を作成しています。小さい子はリアルタイムのオンラインだと無理かなって。歌のお姉さんになったつもりで動画撮影しています。」

などなど、動画のやりとりによる指導を行っているということでした。

動画作成

また、動画の中には、

リズムたたき

手元を見せて映した動画
ゆっくり弾いた動画

これらを盛り込んでいるそうです。

習熟度が上がってくれば、先生と一緒に弾いて通す動画を作成。

2小節ずつ区切って繰り返し練習させるなど細やかな指導を行い、対面のレッスンに近いフォローを実現していました。動画の長さは合計すると、レッスン時間と同じくらいになることも。

また、白石麻奈美さんも、導入期の生徒さんには動画のレッスンは有効と考え、「指くぐりなどの動画を作成しようかと思っています。」ということでした。

他にも、

オンラインレッスンに移行しなかった生徒さんへサービスとして、動画にコメントで返す
オンラインレッスンの前に、事前の資料として、生徒の演奏を送ってもらう

というように、動画をオンラインレッスンに取り入れている先生は多くみられました。

また、サカタさんは動画でのレッスンで「曲集がどんどん進んだり、上達している」と効果を実感していました。

生徒さんに動画を送る際は5分以内ならLINEで、それ以上のものはYouTubeに限定公開でアップするなどの方法がとっているそうです。

動画のメリットは、リアルタイムでのオンラインレッスンに比べて音質がいいことと、何度でも見返せることです。この強みを生かして、リモートで行うレッスンの主軸におくこともできる、という展望が参加者たちの中に広がりました。

オンラインレッスンは生徒の楽譜に書き込みが出来ない

レッスンにおいては、楽譜への書き込みは非常に大きな意味を持ちます。対面のレッスンでは、先生が直接生徒さんの楽譜へ書き込んだり、生徒さん自身に書き込むよう促すこともできました。

オンラインレッスン 楽譜

しかし、それが叶わないオンラインや動画のレッスンでは、レッスンとは別に、楽譜へのフォローが必要となります。これに対して、

楽譜を画像として送ってもらって、書き込んでから返す
動画の中に、楽譜への書き込みを促すような場面を入れ込む
楽典ワークなども画像に取ってもらって提出してもらう

以上のようなフォローを行っているという意見をもらいました。

オンラインレッスンの料金設定はどうしてる?

オンラインレッスンの料金を下げるべきなのかは、悩むところです。

動画作成には、手間と時間がかかり、オンラインレッスンでも楽譜のフォローが求められます。普段のレッスンよりも、大変な面も多いものです。

ですから、皆さんは、それぞれに工夫してレッスン単価を下げないようにしているようです。

普段は、月単位のお月謝だが、オンラインレッスンの実施回数で計算する
動画は今のところ、ボランティアでやっている
動画のレッスンをしているので、やり取りの量によって、1か月単位で金額を決めている

ヤマダさん「最初は、対面のレッスンよりも質が下がっちゃうかもしれないから、料金を下げようかなとも思ったんだけど・・・。工夫すれば、対面のレッスンよりもいい面もあるから、そこをアピールしてる!」

との意見も。

オンラインレッスンは生徒の保護者さんの協力が不可欠

オンラインレッスン 親子

オンラインレッスンでは、保護者のご協力が欠かせません。特に小さい子のレッスンでは、その比重が大きくなってしまいます。

レッスンの時間は横についていてもらう
生徒さん側のデバイス(PCやスマホ)の位置を調整してもらう
動画を撮影してもらう
拍をたたいてもらう

このような協力をお願いしていることが分かりました。

しかし、共働き家庭や、小さいお子さんがいる家庭などでは、保護者がオンラインレッスンに時間を割くことが難しいことも。

その場合、見るだけで完結する動画のレッスンを送るなどのフォローをするのがいいかもしれません。

長期間会えていない、保護者の方とのコミュニケーションも気になるところです。しかし聞こえてきたのは、意外にもコミュニケーションが増えた、という声でした。

シダさん「動画のやり取りのためにLINEを交換してから、親御さんとのやり取りはスムーズになったかも。」

など、オンラインレッスンを機に、LINEを保護者と交換したという先生も多く、気軽なやりとりができるようになったことで、コロナ以前よりもいい関係になったそうです。

また、LINEでは教室専用の公式LINEを作ったり、生徒さんとのグループLINEを作ったりと、積極的に活用している様子が見られました。

西原さん「私は生徒さんに演奏動画を限定公開でYouTubeにアップしています!リクエストに応えてみたり、おすすめしたい曲を弾いてみたり。それに感想をくれることでコミュニケーションが取れて、オンラインに移行してくれる人もいます。リアルで会える機会が減るから、そういうのもありなのかなって。いまのところ、いい感触です。」

生徒さんの学習意欲を刺激するコンテンツ作りをすることで、生徒さんや保護者の方と新たな関わり方を見出しているようです。

オンラインレッスンだからこそ気づけた「生徒の自宅環境」

オンラインレッスンをすることで、生徒さんの練習環境に気づけた、という声が多く聞かれました。中には、購入してから1度も調律していないピアノで練習している生徒さんのケースも…。

生徒さんの弾く姿勢
椅子の高さ
どの程度の電子ピアノで弾いているのか
ピアノの調律の有無

自宅の練習環境に気付くことで、生徒さんへの的確な指導を行うことが出来たという先生が多数いました。

毎週のレッスンで楽器に触る時間はごくわずかです。上達するには、正しい姿勢で日頃の練習を重ねることが大切です。実際のおうちでの練習環境を見てアドバイスできるのは、先生側にとって収穫であったと言えるでしょう。

座談会を終えて

白石さん「あらかじめこちらで動画を作成しておくというやり方は良さそうですよね。それぞれみなさんの熱く、あたたかなレッスンのご様子まで垣間見れて、とても刺激になりました。」

アオキさん「オンラインのレッスンは、世界中の人と繋がれる可能性があると思っていて。皆さんのお話を参考に、広げていきたいです。」

西原さん「本日はご参加頂き、ありがとうございました!リアルタイムのオンラインレッスンと動画でのハイブリッドでやっていけそうな希望が見えてきました。皆さんのお話が聞けて、こちらが元気をもらいました。」

一同「ありがとうございました!」

まとめ

1時間半にも及ぶ座談会。コロナ禍において先生たちは、試行錯誤を重ね、懸命にレッスンを続けています。その熱量、豊富なアイディアには、驚かされるばかりでした。

こうして悩みを共有し励ましあうことで、オンラインレッスンの新たな形、可能性が見えてきたような気がします。

人との接触を避けなければいけない昨今ですが、こうした非常事態においても、助け合い、勇気づけてくれるのは、他でもない人とのつながりです。

こんな時だからこそ、心に届くレッスンを!全国で頑張っている先生たちを応援しています。