【オリヴィエ・メシアン】京都賞の受賞者そして親日家でもあった20世紀の巨匠

2018/06/28
人物

オリヴィエ・メシアンは20世紀のクラシック音楽界を牽引したフランス生まれの作曲家。医学者の山中伸弥や、クラシック音楽家ではニコラウス・アーノンクールも受賞している「京都賞」、彼は日本が誇るこの国際賞の第1回受賞者でもあります。代表作の1つであるオペラ「アッシジの聖フランチェスコ」は日本を代表する指揮者・小澤征爾の指揮によりパリで初演されるなど、日本や日本人との結びつきの深い作曲家の1人です。

 

作曲家でありブーレーズや藤井一興そして加古隆も育てた教育者

メシアンは優れた作曲家でありながら、教育者として後進の指導も行いました。著名な弟子の中にはピエール・ブーレーズ、シュトックハウゼン、建築家でもあったクセナキス、日本人では矢代秋雄や宍戸睦郎、そして現在も活躍しているピアニストの藤井一興や作曲家の加古隆も弟子の一人です。

 

作品の根底にある宗教観そして色彩とリズム

敬虔なカトリック教徒であったメシアン、彼の創作の根底にはイエス・キリストへの信仰心があります。それと同時にインドの音楽やガムランのオリエンタルなリズムや、音符を前後逆に並べても同じになる回文のような「非可逆リズム」など、彼自身の遊び心や均衡の感じられるリズムを多数用いています。そしてメシアンは音と色とを結びつけて感じることが出来る、共感覚者でした。メシアンの「色聴」と呼ばれるこの感覚は、彼の作品達を色彩豊かに彩っています。

 

メシアンにより作曲された唯一無二のユニークな傑作の数々

・鳥の鳴き声をコレクションし忠実に再現した「鳥のカタログ」

自然への敬意そして鳥の鳴き声を曲中で表現した作品はクラシック音楽に数多く存在します。ところがメシアンの「鳥のカタログ」は、それらの作品とは少々違います。鳥の鳴き声を、時にはテープレコーダーも用いて採譜し、そのまま楽譜に書き起こした「鳥の鳴き声そのもの」の作品となっているのです。鳥類学者でもあったメシアンは、鳥を愛し詩的に鳥の鳴き声を作品に取り入れるだけではなく、科学的観点からも鳥を観察していたのでしょう。

Messian: Catalogue d’Oiseaux • Pierre-Laurent Aimard

 

・宮島や軽井沢からインスピレーションを得た「7つの俳諧」

メシアンが後妻イヴォンヌ・ロリオとの新婚旅行を兼ねて初来日した際、奈良公園や宮島、そして軽井沢へ赴きました。畳の上で過ごすこと、それからすき焼きや天麩羅などの日本食もとても気に入っていたそうです。そんな日本での楽しい思い出や、日本で鑑賞した雅楽からインスピレーションを得て作曲されたのが「7つの俳諧」です。この作品はピアニストであったイヴォンヌ・ロリオ他、ブーレーズや小澤征爾、野鳥研究家である星野嘉助らに捧げられています。奈良の仏閣と石灯籠と鹿、海に浮かぶ厳島神社や軽井沢の賑やかに囀る鳥たちが色鮮やかに描かれています。

Olivier Messiaen: Sept haïkaï, esquisses japonaises

 

・数多く残されている宗教音楽の傑作「キリストの昇天」

メシアンは1933年から1992年に亡くなるまでの60年近く、パリ9区にあるサントトリニテ教会のオルガニストを務めていました。即興演奏の大家であった彼のオルガン目当てに、多くの聴衆が集まっていました。

オリヴィエ・メシアン オルガンを語る

 

オルガニスト、そして神学者としても名高いメシアンは、様々なオルガン作品とその自作自演集の録音を残しています。この「キリストの昇天」は元々は管弦楽の作品で、メシアン自身によりオルガン用にも編曲されました。親しみやすく美しいメロディ、オルガンならではの色彩豊かな音色・レジストレーションを味わうことが出来るメシアンの代表作です。

Messiaen – L’Ascension, for solo organ

 

・陽気で楽しい!100人超えのオーケストラで80分間演奏される「トゥランガリラ交響曲」

交響曲は17世紀から近現代まで、様々な作曲家によって作られています。4楽章から5楽章で完結する交響曲が多い中、メシアンの「トゥアンガリラ交響曲」は何と10楽章!80分ほどを要する長大な交響曲です。「トゥアンガリラ」とは、東洋の言語であるサンスクリット語の「Turaṅga」「Līlā」に由来する造語であり、「愛と悦びの歌」、また「生命と死」など、様々な意味を持つと言われています。この曲の楽器編成は通常の管弦楽に加え、ピアノと電子楽器「オンドマルトノ」、チャイニーズドラムやタムタムも加わります。移調の限られた旋法に鳥の声、非可逆リズム、これら全てを含むメシアンの音楽語法の集大成と言っても過言ではありません。南仏やインドの眩しく暑い陽の光を感じ、そして官能的な響きを味わうことの出来る、何ともワクワクする交響曲です。

Olivier Messiaen (1908-92) – Turangalîla-Symphonie

 

西洋と東洋を並置とし独自の音楽を築いたメシアン

メシアンの全ての作品の根底には敬虔なカトリシズム、ステンドグラスのような光と色彩、そして愛と悦びが溢れています。「受け容れ難い」「狂気じみている」という声もありますが、時に賛否両論の的になる唯一無二の独自の世界観こそがメシアンの魅力ともいえるでしょう。特に東洋からの影響が色濃い部分は、東洋人である私達だからこそ、数々の傑作からメシアンからのインスピレーションを受け取ることが出来るかもしれません。

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