一年を通して全国各地で多数開催されているピアノコンクール。
憧れのピアニストの経歴を見て「一体どれほど難しいコンクールを勝ち抜いてきたのだろう?」と疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、コンクールのレベルを決める要素や、国内の子ども向け・大人向けのピアノコンクールの中でも特にハイレベルな大会について、詳しくご紹介します。
ピアノファンの方や、将来お子様にコンクールを受けさせたいと考えているお母さん・お父さん必読です!
案内人
- 古川友理名古屋芸術大学卒業。
4歳よりピアノを始め、伊藤京子、深谷直仁、奥村真の各氏に師事。
地元愛知県三河地方を中心に器楽、声楽、合唱伴奏者として活動する傍ら、島村楽器音楽教室等でピアノ講師として勤める。
目次
コンクールのレベルは何で決まる?
ハイレベルなコンクールの指標としては、以下のような項目が挙げられます。
①課題曲の難易度 |
高度な技術や表現力を要する作品が課題となっている |
②用意すべき曲数 |
予選・本選の曲目が異なる/演奏会形式で複数の曲を用意する必要がある |
③コンクールの規模 |
全国規模・世界規模で予選会が行われる |
④予選通過率 |
決勝大会に進むための倍率が高い |
⑤審査員や過去の入賞者の経歴 |
世界で活躍するピアニストが審査をしている/過去の入賞者の中に現在活躍中のピアニストが含まれている |
⑥入賞者への賞金や特典 |
金銭的な特典のほか、ピアノの貸与や贈与、有名ピアニストによる特別レッスン、音楽大学の学費免除や無償の留学サポート、入賞記念コンサートへの招待など |
レベルの高いコンクールでは、暗譜での演奏は必須。難易度の高い曲をいかに自分のものにできるか、楽譜に忠実に再現しつつ光る個性をアピールできるかが、受賞の鍵となります。
【国内・大人】ピアノコンクールのレベルランキングTop5
ここからは、国内で難易度が高いとされているピアノコンクールをご紹介していきます。
まずは、大人向けの5つのコンクールからご覧ください!
浜松国際ピアノコンクール
1991年に静岡県浜松市の市制80周年を記念して、楽器と音楽のまち浜松を象徴する国際的文化事業としてスタートし、3年ごとに開催されているコンクールです。
1位・2位入賞者には、世界三大国際コンクールのひとつであり世界最高峰のピアノコンクールと称される「フレデリック・ショパン国際ピアノコンクール」の本審査への直接参加が認められることからも、そのレベルの高さが窺えます。
恩田陸氏の長編小説『蜜蜂と遠雷』のモデルとなったコンクールとしても知られています。
主催 |
浜松市 公益財団法人浜松市文化振興財団 |
対象者 |
30歳以下 |
曲目 |
第1次予選:課題曲 第2次予選・第3次予選・本選:課題曲:自由曲(時代等指定あり) |
開催時期 |
開催頻度:3年に一度 予備審査:5月下旬 予選:11月頃 本選:11月頃 入賞者披露演奏会:11月頃 |
申し込み期日 |
2月~3月 ※例年データより |
主な過去入賞者 |
上原彩子(2000年開催第4回・第2位) ラファウ・ブレハッチ(2003年第5回・最高位) 務川慧悟(2018年第10回・第5位) |
公式サイト |
高松国際ピアノコンクール
2006年に四国で地元主導の国際的な音楽コンクールとしてスタートし、以後4年ごとに開催されているコンクールです。
「香川・高松独自の考え方による国際基準に沿ったコンクール」と位置づけられており、優勝者には副賞として日本および海外でのオーケストラとの共演やソロリサイタルの舞台が用意されています。
本コンクールのために作曲された委嘱作品が課題に含まれること、10日間ほどの間にバロックから現代までのピアノソロ作品、室内楽作品、コンチェルトのすべての演奏が求められることから、非常に難易度の高いコンクールといえます。
主催 |
高松国際ピアノコンクール組織委員会 |
対象者 |
年齢15歳以上35歳以下 ※募集要項で定める期間中に出生した者 |
曲目 |
課題曲 |
開催時期 |
開催頻度:4年に一度 第1次審査〜第3次審査:2月 本選:2月 入賞者演奏会:2月 ※2023年第5回スケジュールより |
申し込み期日 |
4月~9月 ※例年データより |
主な過去入賞者 |
パヴェル・ギントフ(2006年第1回・第1位) 石村純(2010年第2回・第2位) 古海行子(2018年第4回・第1位) |
公式サイト |
仙台国際ピアノコンクール
仙台市が開府400年を記念して2001年に創設し、3年ごとに開催している国際コンクールです。
コンチェルト(協奏曲)を課題曲の中心に据えた、世界的にも非常に珍しいスタイルをとっています。
コンクールを通してオーケストラとの共演が複数回できることから、世界中からレベルの高い若手演奏家が集まり、毎回ハイレベルな演奏が繰り広げられています。
浜松国際ピアノコンクール、高松国際ピアノコンクール、仙台国際音楽コンクールは、ともに「国際音楽コンクール世界連盟(WFIMC)」に加盟している信頼性の高い国際コンクールです。
主催 |
仙台国際音楽コンクール組織委員会 仙台市 公益財団法人仙台市市民文化事業団 |
対象者 |
30歳以下 ※2022年第8回では1992年1月1日以降に出生した者が対象 |
曲目 |
課題曲 |
開催時期 |
開催頻度:3年に一度 予選:6月 セミファイナル:6月 ファイナル:6月 入賞者記念ガラコンサート:6月 ※2022年第8回スケジュールより |
申し込み期日 |
年6月~11月 ※※例年データより |
主な過去入賞者 |
ジュゼッペ・アンダローロ(2001年第1回・第1位) 津田裕也(2007年第3回・第1位) 太田糸音(2022年第8回・第3位) |
公式サイト |
日本音楽コンクール
1932年に発足し、戦争の歴史に翻弄されながらも数多くの有望な新人音楽家を世に送り続けてきた、由緒あるコンクールです。
「国内有数のハイレベルなコンクール」「若手音楽家の登竜門」として毎年1回開催され、90年以上もの間注目され続けています。
予選が約10日間の短期間で3回に分けて行われ、第3予選に関してはなんと演奏時間の指定が37~45分!さらに、予選から1ヶ月ほどで開催される本選ではコンチェルトが課題となっており、出場者にはリサイタルを開催できる程度の高い演奏レベルや精神力が求められます。まさに、国内トップレベルのコンクールといえるでしょう。
主催 |
毎日新聞社 NHK |
対象者 |
満17歳以上満29歳以下 ※ピアノ部門 |
曲目 |
課題曲 |
開催時期 |
予選:9月 本選:10月 ※2022年第91回ピアノ部門スケジュールより |
申し込み期日 |
7月 ※※例年データより |
主な過去入賞者 |
外山啓介(2004年第73回・第1位) 反田 恭平(2012年第81回・第1位) 務川 慧悟(2012年第81回・第1位) |
公式サイト |
全日本ピアノコンクール
時代のニーズと変化に合わせて2020年に創設された、日本初となる全国規模の動画審査を採用したコンクールです。
「公平性・透明性の確保」を重要な特長と位置づけており、審査員の選定や採点方法、審査結果の公表方法などにも細やかな配慮が見られます。
ブロック大会への進出には、上位入賞のほか規定の点数をクリアすることが条件として設定されており、創設以降ハイレベルな戦いが繰り広げられています。
主催 |
一般社団法人 日本音楽協会 |
対象者 |
未就学児から ※部門ごとに年齢制限あり |
曲目 |
課題曲/自由曲 ※部門により異なる |
開催時期 |
地区大会:6月~7月(動画)/7月~9月(会場) ブロック大会:9月(動画)/10月~11月(会場) 全国大会:11月~12月(会場のみ) ※2022年第3回スケジュールより |
申し込み期日 |
6月~8月 ※例年データより |
主な過去入賞者 |
松本晴香(2020年第1回・一般第1位) 藤村 瑛亮(2021年第2回・一般第1位) |
公式サイト |
【国内・子供】ピアノコンクールのレベルランキングTop5
比較的難易度の低いものから若手ピアニストの登竜門とされるものまで、日本では年間を通して多くの子供向けコンクールが開催されています。
ここでは、特に知名度が高くハイレベルとされる国内子供向けコンクールを5つ厳選してご紹介します。
全日本学生音楽コンクール
1947年に創設された、高難度の課題曲で知られる伝統あるコンクールです。
通称「毎コン」「学コン」とも呼ばれています。
全国大会の審査結果と講評は毎日新聞の紙面上において公表され、公募により集まった横浜市民が選ぶ横浜市民賞なども設けられています。
課題曲の難易度が高く、本選・全国大会出場者がかなり絞られる点で、国内の学生向けコンクールの最難関と言っても過言ではないでしょう。
主催 |
毎日新聞社 |
対象者 |
小学校の部(4年生以上)~大学の部(2022年4月1日現在24歳未満)※2022年第76回参加規定より |
曲目 |
課題曲/自由曲 ※部門により異なる |
開催時期 |
予選:8月~9月 本選:10月 全国大会:11月 2022年第76回ピアノ部門スケジュールより |
申し込み期日 |
7月 ※例年データより |
主な過去入賞者 |
舘野泉(1948年第2回・小学校の部) 小山実稚恵(1973年第27回・中学校の部) 清塚信也(1990年第50回・中学校の部) |
公式サイト |
ピティナ・ピアノコンペティション
全47都道府県で250箇所以上の地区で予選が開催される、非常に大規模なコンクールです。
課題曲がバランスよく選定されており、四期(バロック・古典・ロマン・近現代)すべての時代の作品に総合的に取り組めます。
予選と本選の日程が近いため、出場者には課題となる4曲を同時にコンクールで演奏できるレベルにまで仕上げる力が求められます。
主催 |
一般社団法人全日本ピアノ指導者協会 |
対象者 |
未就学児から ※部門ごとに年齢制限あり |
曲目 |
課題曲/自由曲 ※部門により異なる |
開催時期 |
地区予選:4月~7月 地区本選:7月~8月 全国大会:8月 ※2022年第46回スケジュールより |
申し込み期日 |
4月~ ※※例年データより。地区により申し込み期間が異なる |
主な過去入賞者 |
田村響(2002年第26回・特級グランプリ) 角野 隼斗(2018年第42回・特級グランプリ) 亀井 聖矢(2019年度第43回・特級グランプリ) |
公式サイト |
ショパン国際コンクール in Asia
ショパンの音楽を通じて国際レベルの優れた演奏家を発掘・育成することを目的として、2000年から開催されているコンクールです。
オールショパンの高難度作品が課題とされている点がハイレベルと言われる理由の一つ。さらに、最終審査ではショパンの祖国ポーランドの著名なピアニストが審査に加わることから、その審査基準の高さが窺えます。
主催 |
ショパン国際ピアノコンクール in ASIA 組織委員会 |
対象者 |
未就学児(2016.4.2 以降に出生した者)~ ※2022年第24回開催要項より・部門ごとに年齢制限あり |
曲目 |
課題曲 |
開催時期 |
地区大会:10月~11月 全国大会:1月3 アジア大会:1月 ※2022年第24回スケジュールより・動画審査による大会は別途指定日あり |
申し込み期日 |
9月 ※例年データより |
主な過去入賞者 |
清塚信也(2000年第1回・派遣部門第1位) 小林愛実(2004年第5回・小学1・2年部門金賞) 角野 隼斗(2017年第18回・大学・一般部門特別優秀賞) |
公式サイト |
ヤマハジュニアピアノコンクール
日本が誇る世界的楽器メーカー「ヤマハ」が主催する、2016年創設のピアノコンクールです。
ジャンルを問わず好きな楽曲を演奏できる「自選曲」、原曲がピアノソロ曲ではない作品をピアノソロ用に編曲して演奏する「課題編曲」がコンクール課題として据えられている点が大きな特徴であり、ハイレベルと言われる所以です。
映像審査(二次選考)を勝ち抜いた者のみがセミファイナルの舞台での演奏を許されることからも、ハードルの高さがわかります。
主催 |
株式会社ヤマハミュージックジャパン |
対象者 |
ジュニア部門:満8歳以下(2014年4月2日以降に出生した者)~満15歳以下(2007年4月2日以降に出生した者) ユース部門:満20歳以下(2023年4月1日時点)※2023年第8回応募要項より |
曲目 |
課題曲/自選曲/課題編曲 ※部門により異なる |
開催時期 |
二次選考(映像審査):特約楽器店ごとに設定 セミファイナル:5月~6月(ジュニア)/6月(ユース) グランドファイナル:7月(ジュニア)/7月(ユース) ※2023年第8回スケジュールより |
申し込み期日 |
特約楽器店ごとに設定(ユース部門は3月28日)※例年データより |
主な過去入賞者 |
岡田季樹(2018年第3回・D部門第1位) 菅原千尋(2021年第6回・ユース部門第1位) 小田愛音(2022年第7回・ユース部門第3位 ※1・2位該当者なし) |
公式サイト |
カワイ音楽コンクール
ヤマハに次いでピアノ販売の世界シェアNo.2を誇るカワイ楽器主催のピアノコンクールです。
1968年に創設され、50年以上もの間優秀な若手ピアニストを輩出してきました。
バロック作品や古典派のソナタ、練習曲等が課題曲となっており、ただ弾きこなすだけでなく、テクニックの正確性や時代に即した演奏法への深い理解が求められます。
主催 |
カワイ音楽コンクール委員会 |
対象者 |
小学校6年生以下(2010年4月2日以降に出生した者)から ※2023年第56回参加要項より・部門ごとに年齢制限あり |
曲目 |
課題曲/自由曲 |
開催時期 |
予選会:11月~2月 地区本選会:4月~5月 全国大会:8月 ※2023年第56回スケジュールより |
申し込み期日 |
2022年10月~ ※例年データより。地区により締切は異なる |
主な過去入賞者 |
泉ゆりの(1993年第26回・金賞) 伊藤千尋(1999年第32回・金賞) |
公式サイト |
海外のピアノコンクールについて
日本だけではなく、世界中でハイレベルなピアノコンクールが開催されています。
下記記事では世界でも特に有名なピアノコンクールを5つ取り上げていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
まとめ
コンクールは、ピアノの上達や演奏による自由な自己表現を目指す者にとって、自身の成長を大きく加速させる貴重な機会です。
今回ご紹介したコンクールのほかにも、さまざまなレベルのコンクールが日本国内のみならず世界各国で開催されています。
近い将来挑戦しようと思われている方や、応援するピアニストが過去に受賞したコンクールが気になる方は、一度聴衆としてコンクール会場へ足を運び、実際に空気感を味わってみるのもおすすめです。