「オペラ」って、ちゃんと観たことないし、なんだかとっつきにくい感じが……。こう思っている方も多いでしょう。しかし、オペラは楽器だけの音楽よりもわかりやすく、誰もが楽しめる音楽なのです。

今回は、名作「フィガロの結婚」を取り上げながら、オペラの種類や見どころなどオペラの基本の『キ』をご紹介します!本記事を読み終わる頃には、あなたはオペラ公演に足を運びたくなっているでしょう。

案内人

  • 林和香東京都出身。某楽譜出版社で働く編集者。
    3歳からクラシックピアノ、15歳から声楽を始める。国立音楽大学(歌曲ソリストコース)卒業、二期会オペラ研修所本科修了、桐朋学園大学大学院(歌曲)修了。

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そもそもオペラとは?

オペラとは、音楽、ストーリー、衣装、演技、舞台装置などで構成される芸術です。さまざまな要素が集約されるので総合芸術と言われており、各ジャンルのプロフェッショナルが集まってひとつの舞台が作られます。

オペラの発祥は16世紀末のイタリア・フィレンツェに遡ります。ヨーロッパから世界へ広がりながら発展し、時代や地域ごとに特徴がある作品が誕生しました。

オペラは昔の芸術というイメージもあるかもしれませんが、実は現代でも新たな作品は書かれ続けています。しかし、やはりロマン派前後の作品の人気が高いため、それに比例して上演数も多くなっています。

オペラとミュージカルの違い

舞台で役になって、歌って、演技をするのは、「ミュージカル」と同じじゃないの?と思う方もいるでしょうが、実は違いがあります。

まず、歌の発声法が大きく異なります。オペラでは「ベルカント唱法」という発声法で歌うことが多いです。マイクを通さず生の声で、劇場いっぱいに響かせます。対してミュージカルはマイクを使い、キャラクターの感情を自在に表現しながらストーリーを進めていきます。
ダンスもミュージカルにとっては見どころとなる重要なシーンですが、オペラでは踊りのシーンがあることは稀です。

オペラの種類

オペラは時代や地域によって特徴があります。代表的な3つを見ていきましょう。

オペラ・セリア

オペラ発祥の地イタリアの主要ジャンルのひとつです。日本語では「正歌劇」とも呼ばれ、その名の通りかっちりとした構成が特徴です。ストーリーは神話や伝説ものが多く、宮廷や貴族の間で隆盛します。歌唱が重視され、カストラートという高音の美しい声をもつ男性歌手も活躍しました。

オペラ・ブッファ

オペラ・セリアの少し後の時期に現れた喜劇的なオペラです。構成もストーリーも比較的自由で、登場人物の性格や想いを表す音楽が話の展開を盛り上げていきます。モーツァルトの代表作「フィガロの結婚」「コジ・ファン・トゥッテ」はこのジャンルです。

グランド・オペラ

フランスのパリ・オペラ座を中心に隆盛。イタリアオペラと比べて大規模で、多くの登場人物に豪華な舞台と派手な演出、合唱やバレエのシーンを含むことが特徴です。膨大な制作費のため上演機会は大変限られますが、有名なアリアや重唱を抜粋して演奏されることは多く、人気のあるジャンルと言えます。

オペラの見どころ

ひとつのオペラは多くのプロフェッショナルによって作られています。その役割を知ると、もっと楽しめますよ。

指揮者

音楽を統括する重要なポジションです。練習では演奏を磨きあげ、本番では円滑な進行で感動的な音楽を創りあげます。

作品によっては、舞台袖で演奏する合唱隊や楽器隊担当の指揮者もいます。客席からは見えない場所で音楽をコントロールする、なくてはならない存在です。

歌手

オペラに欠かせないのが様々なキャラクターを演じる歌手達です。花形のソプラノやテノール、ストーリーの進行に欠かせない低音パート、音楽を盛り上げたり見どころを作る重唱や合唱など、オペラには多くの歌手が必要となります。

生の声を響き渡らせるテクニックはもちろんのこと、演技や立ち居振る舞い、語学、コミュニケーションなど、高度なスキルが求められます。

オーケストラ

歌手とともに音楽を奏で、ストーリーを進めたり登場人物の感情を音楽で表すのがオーケストラです。

舞台と客席の間の一段下がった「オーケストラピット」というスペースに入ることが多く、客席からは隠れていますが、オペラの土台と言えます。

合唱

オペラの音楽効果を高めるのが合唱です。本格的にオペラの発声を学んだプロで構成される、オペラ公演専門の合唱団による迫力ある合唱で舞台を彩ります。

演出家

公演の芸術性を左右する重要なポジションです。同じオペラでも演出家によってガラリと印象が変わるのが面白いところ。コンセプトを固め、ストーリーの解釈や演技、美術、照明、音響など多岐に関わる重要な存在です。

プランナー

オペラ公演はプランナーがいなければ始まりません。企画から本番終了後まで携わり、全体をまとめあげていきます。どこの劇場でどの演目をやるか、キャスティングはどうするかといった契約関係を調整し、公演を企画制作していくのがプランナーの仕事です。

舞台監督

その名の通り、すべての部門と密に連携をとりながら練習・本番・本番終了後までのスケジュールをスムーズに進める役割です。姿を見られる機会は少ないですが、公演を裏から支えて成功に導いています。

メイク・衣装

遠い客席にも表情や存在が伝わるような舞台用のメイクを施すのはもちろん、キャラクターのアイコンとなる衣装も準備します。

主役はボリュームのあるドレスというイメージがあるかもしれません。しかし、最近の現代的な演出では日常着や、はたまたファッションショーのようなアバンギャルドな衣装のこともあり、クラシックな音楽とのコラボレーションを楽しませてくれます。

オペラの面白さはどこにある?

オペラと聞いて何を連想しますか?

「クラシック音楽は堅苦しい」
「知識が必要で難しそう」
「チケットが高い」

こういった、ネガティブなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ストーリーがあるぶん楽器だけの音楽よりもわかりやすく、耳で聴いて目で見て、非日常も体験できるのがオペラです。空間そのものを楽しめるエンターテイメントと言えるでしょう。

有名曲「フィガロの結婚」でオペラの全体像を理解しよう

有名なオペラ曲「フィガロの結婚」を例に、オペラの中身を簡単にご紹介していきます。

構成とあらすじ

全4幕のオペラ・ブッファで、演奏時間はだいたい3時間。イタリア語で歌われますが、劇場では字幕付きがほとんどです。

18世紀半ばのスペインのお屋敷が舞台で、アルマヴィーヴァ伯爵、ロジーナ夫人、それぞれに仕えるフィガロとスザンナ夫妻が中心となり、伯爵による古い慣習の復活を阻止するべく頭脳戦を繰り広げるドタバタ劇となっています。

見どころ

オペラ全体を通して美しく生き生きとした曲調で、どこを切り取って聴いても楽しめる作品なので、オペラに慣れていない方にもおすすめです。

夫人のアリア「愛の神よ、照覧あれ」、ケルビーノ(メゾソプラノの男役)のアリア「恋とはどんなものかしら」、二重唱「そよ風によせて」、スザンナのアリア「恋人よ、早くここへ」、フィガロのアリア「もう飛ぶまいぞこの蝶々」など、美しいアリアが次々に登場します。

個性的な登場人物も見どころの一つ。とくに、2幕の重唱は長い時間をかけてそれぞれの想いや声やリズムが重なりあっていき、惹き込まれる音楽が幕終わりまで展開されていきます。ぜひ一度聴いてみてください。
https://youtu.be/55ik-PzAXsQ?t=4746

実際にオペラ鑑賞に行ってみよう!

国内の劇場でもっとも有名なのは東京都の新国立劇場です。一年を通してさまざまな公演
があり、古典から現代まで色とりどりの作品を楽しめます。

また、全国主要都市の音楽ホールでも公演があります。字幕付きや日本語歌詞での上演がほとんどですが、あらかじめストーリーを予習して本番に臨めば、もっと舞台上に集中できて楽しめるでしょう。

フォーマルな服装じゃないとダメ?

国内の劇場では、服装は気にしなくて大丈夫です。演奏時間が長いので、なるべくゆったりとした服装でリラックスしたいですよね。ただ、せっかくの機会ですから、少しドレスアップして非日常感を味わうのがおすすめです。

見た目に気を取られがちですが、それよりも周りに不快感を与えてしまうのが香水やタバコなどの匂い、服の素材の音です。同じ空間を共にするのですから、お互いに気持ちよく過ごせるよう配慮しましょう。

観るだけじゃない!もっと楽しむコツ

オペラをもっと楽しむコツとして、観劇中以外の過ごし方をご紹介します。

まず劇場に入ったらクロークを利用して身軽にしましょう。パンフレットを購入すれば、より期待感を高めることもできます。

休憩中は固まった身体を動かすためにもロビーへ出て、コーヒーを飲んだり会場の雰囲気を楽しむのもいいですね。終演後は食事に行くのもおすすめ。誰かと一緒なら、余韻に浸りながらアフタートークが盛り上がります。

国内の主なオペラ劇場

前述の新国立劇場をはじめ、東京文化会館、東京芸術劇場、日生劇場など本格的なオペラを上演する劇場は東京都内に多くあります。

一方で、全国各地の劇場でも公演が行われていますので、お近くの劇場情報をぜひ調べてみてくださいね。

まとめ

一度は行ってみたいと思っていても、きっかけが少ないオペラ。オペラのとっつきにくいイメージを払拭するため、各公演や劇場ではイベントや取り組みも積極的に行っています。

少しでもオペラに興味を持ったならば、作品は何でもいいのでまずは観に行ってみましょう!五感全てを刺激されること間違いなし。素敵な趣味が増えるかもしれませんよ。