合唱界において、日本を代表する作曲家である木下牧子。音楽の授業や合唱コンクールの定番曲でもある『春に』がとくに有名ですよね。他にも幅広いジャンルで活躍し、名曲を残しています。

本記事では木下牧子の経歴や作風、代表曲を詳しく紹介していきます。曲作りの背景を知れば、名曲もより味わい深くなるでしょう。

案内人

  • 山吹あや幼少期からピアノ、中学校からサックス、高校から声楽を始め、地方国立大学教育学部音楽専攻へ進学。中学校では合唱部顧問を担当し、県大会を通過し関東大会に多数の出場経験がある。

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木下牧子の生い立ち(経歴)

木下牧子は、1956年生まれの東京出身の作曲家です。東京都立芸術高校ピアノ科を卒業後、東京芸術大学作曲科へ進学。大学を首席で卒業し、同大学院を修了しました。

主な受賞歴は以下の通りです。

  • 第51回日本音楽コンクール作曲部門 管弦楽曲の部 入選
  • 第9回日本交響楽振興財団作曲賞 入選
  • 2003年三菱UFJ信託音楽賞 奨励賞

木下牧子は合唱曲だけでなく、管弦楽曲や吹奏楽曲、オペラなど、幅広い作品を手がけています。これまでに個展(自身の曲の演奏会)を4度開催。楽譜等の出版は100冊を超えるなど、数多くの楽曲を発表しています。

NHK全国学校音楽コンクールの課題曲は、これまでに4度担当しています。

木下牧子の作風・特徴

もともとはオーケストラを中心に器楽曲を多く作曲していましたが、声楽家・指揮者の鈴木成夫との出会いをきっかけに合唱曲や歌曲も精力的に発表するようになりました。

管弦楽伴奏合唱やオペラなどの大作も魅力的ですが、親しみやすい合唱曲やアカペラの合唱曲は幅広い世代に愛され、特に人気があります。

著書の中では「ホールで演奏されたとき最も輝く曲を書き続けたい」と語っており、クラシック系純音楽作品を書き続けたいという信念をもって現在も活動を続けています。

木下牧子公式サイト

木下牧子の代表曲

ここからは、木下牧子の代表的な合唱曲を5曲紹介します。ぜひ聞いてみてくださいね。

春に

合唱曲集『地平線のかなたへ』の中の一曲。教育音楽の編集部から「中学生のための混声3部作品を作曲してほしい」という要望を受けて作られ、1989年に発表されて好評を博しました。中高生を意識して書いたはじめての曲集であると本人が語っており、中高生にふさわしい希望に満ちた内容になっています。

谷川俊太郎の詩集『どきん』に収録された詩は、中学校の国語の教科書にも掲載されています。悩みを抱える中高生に寄り添った共感しやすい歌詞と、流れるような美しい旋律で、中高生はもちろん、ママさんコーラスや一般合唱団などにも幅広く歌われるようになりました。

はじまり

工藤直子の詩による楽曲で、中高生から一般合唱団まで幅広く歌われている合唱曲です。畑から川、森、地平線、雲、星へとスケールアップしていく歌詞は、人間の悩みなど意に介さず悠然と回り続ける地球の自然や宇宙の雄大さが描かれています。

楽曲はアカペラで荘厳な雰囲気から始まり、流麗でドラマチックに展開していきます。短調から長調へと転調し、クライマックスへと盛大に駆け抜けていくような曲調が特徴的です。演奏会のレパートリーとしてもコンクールの自由曲としても人気の高い楽曲です。

二十億光年の孤独

『春に』と同じく、合唱曲集『地平線のかなたへ』の中の一曲。谷川俊太郎の処女詩集「二十億光年の孤独」に所収された同名の詩が歌詞として用いられています。1992年に教育音楽にて混声三部版が発表され、後に女声合唱版と男声合唱版も出版されました。

広い宇宙の中の小さな地球の上で生きている人類の孤独を描いた歌詞が、スピード感あふれる曲調で展開されていくのが特徴的です。頻繁に転調したり、シンコペーションのリズムが印象的だったりと、シンプルでストレートな歌詞が表情を変えながら展開していきます。

小譚詩(しょうたんし)

立原道造の詩による、女声合唱組曲『暁と夕の詩』の中の一曲です。譚詩とは、自由な形式の小叙事詩を指します。叙事詩(じょじし)とは、民族などの社会集団の歴史的事件や、英雄の事跡について客観的に述べた作品のことです。

小譚詩は立原道造によるテキストの響きの美しさを生かしつつ、詩の内面まで触れる表現の深さが魅力の楽曲です。8分の6拍子の流れるような曲調でありながら、力強くドラマティックに展開されていきます。

おんがく

「木下牧子アカペラ・コーラス・セレクション」に収録された楽曲で、混声合唱版と女声合唱版があります。まど・みちおの詩による楽曲で、音楽を愛する心情がシンプルであたたかい言葉で描かれています。

賛美歌を思わせるような美しいアカペラ曲で、清らかなハーモニーの中で感情豊かに展開していくのが魅力です。学生からアマチュアまで幅広い世代に愛されている木下氏の楽曲の中でも、『おんがく』はコンクールや演奏会でもよく歌われる人気曲となっています。

まとめ

今回は、木下牧子の経歴や作風、代表曲を紹介しました。

学校の授業で聴いたことがあった曲や、有名な詩人の歌詞による楽曲など、新たな発見があったのではないでしょうか。

木下牧子の名曲はまだまだたくさんあります。ぜひお気に入りの一曲を見つけてみてくださいね。