初めてチェロを購入するときや、新しいケースを購入するとき、どのようなポイントを重視して選べばよいのか迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。

  • やっぱり機能性重視?
  • ハードとソフトどっちがいい?
  • 安いものでも大丈夫?

今回は、元楽器店店員の筆者が上記のよくある疑問に答えながら、チェックすべき大切なポイントや、おすすめのチェロケースをご紹介します!ぜひ参考にしてくださいね。

案内人

  • 阿久津美帆チェロ歴4年。また、これまでに楽器販売店で接客・販売業務を担当。現在はフリーwebライターとして、音楽(特にクラシック音楽)を中心に多ジャンルの記事を執筆している。好きな音楽家はブラームスとラフマニノフ。読書と映画鑑賞が趣味。

    詳しくはこちら

チェロケース選びで最も重要なのは「機能性」!

楽器店で働いていた筆者から言わせていただくと、チェロケース選びで重要視すべきは「機能性」です。

ケースはただチェロを保護するだけでなく、持ち運びや小物の収納にも欠かせないアイテム。ケースの使い勝手が良いほうが奏者のストレスは少なくなります。

例えば収納スペースやポケットが多いケースなら、松脂や弓、楽譜などをまとめて収納できるので余分な荷物を減らしやすくなります。両手が空くため、電車での移動時にも便利です。

また、外の留め具やネック留めが使いやすいかどうかも重要です。コンサートやコンクールなどに出る機会が多い人は、場合によっては限られた時間でリハーサルに参加したり、楽器の準備・片付けを進めたりしなければいけません。ワンタッチで操作できるケースであれば、忙しくてもスムーズに楽器を出し入れすることができます。

チェロケース選びでよくある疑問

次に、チェロケース選びで多くの人が迷いやすいポイントを紹介します。ケースのタイプや値段だけでなく、背負う際の注意点なども解説するのでぜひチェックしてみてください。

ハードケースとソフトケース、どっちがいい?

筆者がおすすめしたいのは、ずばりハードケースです。

ハードケースにはグラスファイバー・カーボンなど比較的強度の高い素材が使われており、チェロ本体をしっかり保護してくれます。また、湿気や水分に強いので、雨の日でも運搬に困りません。

チェロは、他の弦楽器に比べてサイズが大きいので、人ごみの中や電車でも安心して運ぶためには強度が重要です。

また、柔らかいソフトケースとは違いケースが自立するので、狭いスペースでも保管しやすいメリットがあります。

他にも、豊富なカラーバリエーションもハードケースの魅力。色彩やデザインにこだわっているメーカーもあるので、見た目にこだわりたい人にもおすすめです。

他にも、豊富なカラーバリエーションもハードケースの魅力。色彩やデザインにこだわっているメーカーもあるので、見た目にこだわりたい人にもおすすめです。

値段が高いケースと安いケース、何がどう違う?

値段が高いケースと安いケースは、主に使われている素材や仕様、生産国が異なります。

カーボン・熱可塑性シェルなど、強度が高い素材を使ったケースは高価なものが多いと覚えておきましょう。特に、頑丈なだけでなく軽量化を目指して作られたモデルは比較的新しい素材が採用されており、なかには30万円以上にのぼるものも。反対に、防水布などで作られたソフトケースは、10,000円前後など手頃な値段のモデルもあります。

また、収納スペースが多いモデルも値段が高めです。ストラップの耐久性がしっかりしている、ほかのメーカーと比べて密閉性が高いなど、製造にコストがかけられているケースは値段も高くなりやすい傾向にあります。

製造国によっても値段が違います。フランスやドイツなどの老舗楽器メーカーで作られたケースは値段が高く、日本や中国など仕入れや運搬のコストがあまりかからない国で作られたケースは手頃な価格のものが多いです。


安価になる傾向

高価になる傾向

タイプ

ソフト

ハード

素材

布(ポリエステル)

カーボン・熱可塑性シェル

収納スペース

少ない

多い・多機能

生産国

日本・中国など

フランス・ドイツなどの老舗

寿命はどのくらい?

素材や保管の仕方によって若干変動しますが、一般的には10年前後が買い替えのタイミングです。中古の場合は使用期間が不明な場合が多いので実際の使用感で確認する必要があります。

もともと白かったケースがクリーム色っぽくなってきたなど、傷や汚れが外見で分かりやすくなってきたら要注意です。また、ケースの留め具がすぐに外れてしまう、サビて開け閉めがしにくいなどの不具合が生じていないかもこまめにチェックしましょう。

持ち方は?

チェロケースを持ち運ぶ際は、ストラップを左右どちらかの肩に通すか、両肩に通してリュックのように背負うのが一般的です。

横の部分についているハンドルを掴んでバッグのように持つ方法もありますが、前後にかなりスペースをとるため、人が多い場所や長距離の持ち運びには適していません。

背負う際の注意点

チェロを背負うと、特に頭上から20cmほど上へ飛び出す形になります。電車の乗り降りや部屋に入るときなど、狭い場所を通る際は要注意です。

また、チェロケースは100~130cm程度と非常に大きいため、自分の左右や背後が見えにくくなります。すれ違う人や椅子、扉などにぶつからないよう気を付けてください。

チェロケースの有名ブランド

新しいチェロケースを選ぶ前に、代表的なブランドをいくつかチェックしておきましょう。以下では、GewaやBamなど世界中のチェロ奏者に愛されている有名ブランドを紹介します。

Gewa(ゲバ)

Gewa(ゲバ)は、1925年にGeorg Walther(ゲオルグ・ワルサー)がドイツで設立した老舗弦楽器メーカーです。当初は弦楽器の製造・販売のみを行っていましたが、その後ケースの製造にも力を入れ始めました。

Gewaのチェロケースはファッショナブルなデザインだけではなく、機能性にも優れているところが大きな魅力です。

価格は販売元の店舗やサイトによって異なりますが、10〜30万円程となっています。

Bam(バム)

Bam(バム)は、1980年にフランスで設立された楽器ケース専門メーカーです。チェロ以外にもギター・管楽器などさまざまな楽器用ケースを製造しており、世界中のプロ奏者や音楽ファンに愛されています。

Bamのチェロケースは、こだわりの技術で生み出された丈夫な造りと、芸術の国フランスならではの洗練されたデザインが特徴的です。

軽量性にこだわったモデルが多く、価格帯は30〜50万円とかなり高め。楽器とあわせてケースもアップグレードしたい人におすすめのブランドです。

カーボンマック

カーボンマックは、日本・愛知県に本社を置くマックコーポレーション株式会社が手がける弦楽器ケースブランドです。1984年に設立され、主に管・弦楽器やケースなどの輸入卸を行っています。

カーボンマックのチェロケースは、頑丈さ・運搬しやすさ・デザイン性の高さがバランス良く揃っているのが特徴です。カラーバリエーションが豊富で、好みや気分に合わせて選びやすいのも嬉しいポイント。

日本国内で生産されているのもあり、価格は7〜16万円程度と比較的安価ですが、安全性は高くチェロ本体をしっかり保護してくれます。

元楽器店店員おすすめのチェロケースはこの5つ!

次に、楽器店スタッフとして勤務した経験がある筆者が、特におすすめしたいチェロケースを5つに絞ってご紹介します!

機能性の高さと頑丈さの2点に重点を置いてピックアップしたので、ぜひ参考にしてみてください。

GEWA Air 3.9

GEWA Air Cello Case – The next generation of Cello Case

Gewaが手がける人気モデル。2018年にはグッドデザイン賞を獲得しており、機能性の高さが多くの奏者に評価されています。

ハードケースの留め具は6つ以上のメーカーが多いのに対して、Air 3.9シリーズは5つと少なめ。開け閉めに手間がかかりにくく、楽器の準備や片付けをスムーズに行えます。

また、ケースの断面が三重構造になっており、強固性が非常に高いのも特徴です。内側の弓留めはスライド式マグネットなので、ワンタッチで手軽に収納可能。マジックテープのように粘着力が落ちる心配もありません。

価格帯は15〜20万円。Amazon・楽天などの通販サイトでは比較的安価に設定されていますが、実際のサイズ感や重量を確認しにくいため注意が必要です。

※品切れ中(2023年12月現在)

カーボンマック CFC-2S

強固性・軽さ・使いやすさの3拍子が揃っており、アマチュアからプロまで幅広い奏者に愛されています。筆者が楽器店で働いていたときは、2代目以降のケースとしてCFC-2Sシリーズを選ぶ人が多い印象でした。

CFC-2Sシリーズの大きな魅力は、ケース内に楽譜を収納できるスペースがある点です。手荷物を減らしてくれるので、移動が楽になります。

外装には新素材・カーボンコンポジットが使われているため、価格は10万円前後と比較的購入しやすくなっています。

Eastman スタンダード・プラス

アメリカの大手楽器メーカー・Eastman(イーストマン)が手がける人気モデルです。

ハイブリッドモデルで使われていた型が採用されており、スタンダードが4.7kgなのに対し、スタンダードプラスは4.1kgと軽量。女性や小柄な人でも持ち運びしやすいモデルです。

2本のショルダーストラップが付属しており、状況に応じて片手で持ったり背負ったりすることができます。小物が収納できるポケットが充実しているのも嬉しいポイントです。

軽量性や機能性が優れているケースには珍しく、価格は6〜8万円程度と比較的求めやすいので、コストを押さえたい人におすすめです!

Bam Hightech Slim 1005XL

デザイン性だけでなく、頑丈さや機能性も備えているのが特徴的なBamの人気モデル。Hightech Slim 1005XLシリーズには、抜群の強度で知られる発泡体・Airex(エアレックス)と樹脂の三層構造が採用されており、外からの衝撃や湿度から楽器を保護してくれます。

ただ強固なだけでなく、重量約2.9〜3.7kgとハードケースとは思えない軽さなのも大きな魅力です。

また、ケースの背面がC字のラインになっているので、ケースを横に寝かせてもぐらつかず安定します。価格帯は30〜40万円と高価なので、上級者向けのモデルと言えるでしょう。

鈴木 CF-8

教則本「スズキ・メソード」で有名な鈴木が製造・販売しているチェロバッグ(ソフトケース)。楽器の扱いに慣れていない初心者でも安心して使える保護性の高さや、求めやすい価格で多くのチェロ奏者に愛されています。

CF-8シリーズは、厚めのナイロン生地とパイル生地の間にウレタンフォームが挟まれているつくりが特徴。ソフトケースでありながら、しっかりとチェロ本体を保護してくれます。

また、外側にはベルトが2本掛けされているため、状況に応じて運び方を選びやすい点も大きな魅力。小物や弓用の収納スペースも充実しています。

価格は2万円前後と非常にリーズナブル。ただし、鈴木のチェロはほかのメーカーよりもやや大きいつくりになっているので、購入を検討している人は店頭などで試しに使ってみることをおすすめします。

気になるケースは楽器店で実際に触れてみよう

サイズ・重量などは各メーカーの公式サイトに記載されていますが、背負った際の歩きやすさや、自分にとって本当に使いやすいかといった点は、やはり実物を直接見てみないと分かりません。

楽器店であれば実際に使用した際の感覚が掴みやすいだけでなく、専門のスタッフに疑問点を相談することも可能です。ただし、メーカーやモデルによっては店頭に在庫がなかったり、入荷に時間がかかったりする場合もあるので、事前に問い合わせておくことをおすすめします。

まとめ

チェロケースは、楽器本体を安全に運搬したり、湿気や衝撃から守ったりするために必要不可欠なアイテムです。高価なものもありますが、約10年も大切な楽器を守ってくれると考えれば決して高くありません。

チェロを楽しみながら長く続けるためには、単に頑丈なだけでなく、自分にとって使いやすい工夫がされているかもチェックして探してみてくださいね。